ハートウォーミングなシェフの人柄に魅了される都心の隠れ家イタリアン|虎ノ門【Attivo(アッティーボ)】
再開発が進み、高層ビルが立ち並ぶクールなオフィス街へと変貌している虎ノ門ヒルズ界隈。行きつけを見つけるにはちょっと難しそうなエリアですが、2022年10月にオープンしたここは、明るく元気なシェフの人柄も魅力。料理、ワインだけでなく、レストランで食事をする時間を愛しているシェフだからこその心を込めたもてなしが明日の活力を養ってくれます。その愛に触れるべく、お店に伺ってきました。
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店名、内装に込められているシェフの思い
厳選素材による洗練の東京イタリアン
営業後半はアラカルト対応で深夜3時まで
「生き生きとした」という意味の店名【Attivo】に潜むストーリーが坂川さんの原点
「もう30年前の話ですが、実は僕が子どもの頃、家族で月に一度くらい食事に行っていたイタリアンの店名が【Attivo】だったんです」と話し始めたオーナーシェフの坂川光平さん。【サヴァティーニ】出身のシェフが家族と営んでいる住宅街にあるイタリアンで、いまはもう存在していないそうだ。
「家族とそこで食事をした時間がとても楽しくて、親しみやすいおいしさで幸せにしてくれるイタリア料理の魅力にハマっただけでなく、レストランという空間で親しい人たちと食事をする特別な時間の愛おしさのようなものを感じていたのだと思います」。
カウンター越しにお客様と話すのも大好きという坂川さん。バータイムには一緒にグラスを傾けることも
「店の名前を考えていた時「シェフの料理を食べると嫌な気持ちが吹き飛ぶ」というお客様からの嬉しい言葉を思い出して、“活”に繋がる単語を辞書で調べてみたんです。そうしたら“Attivo”という単語が出てきて……」。偶然にも子どもの頃通っていたお店と辞書の中で出会うことになった坂川さん。運命を感じ、Attivoを店名にしたそうです。
ロゴのデザインはデザイナーであるお姉さんが。太陽のようなオブジェはお父さんのオフィスに飾ってあったもの
店内のインテリアにも深いストーリーがあります。坂川さんのお父さんは本の装丁家として活躍していたデザイナーで、坂川さんがお店をオープンする時には内装のデザインをしてあげると約束してきれていたそうです。しかしながら、独立準備中直後に急逝されてしまいました。
奥に深い店内。入口を入ってテーブル席、奥にカウンター席が
ブルーグレーにペイントした壁と木目を活かしたオイルステインのフローリングに、ちょっと使い古されたようなこなれ感のあるテーブルや椅子を配したシックな雰囲気の店内。「もし父がデザインしてくれていたらこんな風にしてくれたのでは?と、父と同じ道を進んだ姉が考えてくれました。壁に掛けている写真は、父が撮影したものなんです」と坂川さん。思い出や家族愛がたくさん詰めこまれた空間で働くというのは坂川さんにとっても活力になるに違いありません。
カウンターまではシックな色調だが、カウンター内は差し色として明るい黄色にペイント
厳選素材による洗練の東京イタリアン
坂川さんが最初に入社したのは、東京イタリアンの代表格でもある【アロマクラシコ】。「イタリアで修業はしていない生粋の東京イタリアン育ち(笑)。要になる食材は、生産者さんはもちろん、間に入る業者さん、先輩をはじめシェフ仲間など信頼できる人たちが“これはいいよ”と愛を持って勧めてくれるものをいろいろ試して自分の料理に合うものを選んでいます」と、イタリアの郷土料理ではなく、いろいろな情報、食材が集まる東京で、自分のセンスを頼りにイタリア料理を表現しているのです。
例えば前菜で用意されている『百合根のパンナコッタ』。北海道産の甘い百合根を極上の生クリームと牛乳と合わせてパンナコッタ仕立てにしたものを、香ばしく焼いた芽キャベツの甘味と芳ばしい香り、パリパリのカダイフの食感、そして、青いオリーブオイルのピリッとした辛みをアクセントにして表情豊かに楽しませてくれます。
『百合根のパンナコッタ』1,100円(ハーフサイズ)
メインでイチ押しなのが、星付きレストランでも使われている『あいち鴨』のローストです。一羽一羽丁寧に飼育されているだけでなく、精肉処理施設も併設した農場なので、鴨に移動などのストレスをかけることなく精肉に。また、〆た翌日には届くので鮮度も抜群。
「すべての工程において手作業。命をいただくという思いを持って仕事されているところに感動したんです。最近飼育数が増えたとのことで分けてもらえることになりました」。
皮目をしっかり焼いてカリカリにしたら、肉汁が暴れないようオーブンに出したり入れたりしながらゆっくり火を入れる
「力強い旨みがありますが、味わいは綺麗でしょう?」と熱弁の続く坂川さん。惚れ込んだ食材だからこそ、おいしくしようという工夫、手間を重ねている、その溢れる料理愛に心が温まります。
入念な火入で美しいロゼ色に。きめ細かい身質から溢れ出すジューシーな肉汁。旨みとコクはパワフルながら透明感のある余韻……。『あいち鴨』5,600円
パスタは、アラカルトタイムなら素材さえあればなんでもリクエストに応えてくれそうなノリの坂川さんですが、トマトとグアンチャーレ(豚頬肉の塩漬け)、ブラッターチーズのインパクトが病みつきになる『アマトリチャーナ』と『パスタ マルゲリータ』は是非に、のスペシャリテ。
フルーツトマト、ブッラータチーズ、バジルの味でパスタなのに、頭の中にピッツァが浮かぶ。会話も弾む楽しい一皿。『パスタ マルゲリータ』2,400円
『パスタ マルゲリータ』は、ピッツァの名品をパスタで表現。遊び心がある坂川さんの人柄が伝わる一皿であり、イタリア料理の普遍的なおいしさが詰まったパスタでもあります。
前半はおまかせコース、21時頃からの深夜タイムはアラカルトで対応
営業は、18時〜21時頃まではおまかせのコースで対応し、以降はアラカルトに。ラストオーダーが深夜1時で、3時に閉店となっています。深夜帯は前菜とワイン、パスタとワインはもちろん「ワインだけ飲みに来ていただいても」と坂川さん。ちゃんとした食事会でも、デートでも、1人でもとどんなシチュエーションでも対応してくれる懐の深さもいいですね。
好みを伝えつつ、坂川さんのエピソード付きのわかりやすい解説を聞きつつ、ワインを楽しく選ぶことができる
ワインも食材同様に、ただおいしいだけでなく、生産者、あるいは口にした時の印象にストーリーがあるもの、坂川さんの料理に合うものがセレクトの基準。
「初めてレストランでボトルで頼んだワインとか、働いていたお店で一番好きだったワインとか、ブルネロ縛りの試飲会で一番感動した1本など、僕の思い入れワインも多数あります」。
食後酒も充実。お父さんが残してくれたウイスキーも並ぶ
丁寧に作られた食材、洗練された味わいの中に潜む懐かしい味わい、温かなホスピタリティなど、人とのつながりを大切にしながら、愛着のある店作りを自然体でしているように見える坂川さん。まだ新しいお店だけれど、生産者、業者、お客、そして坂川さんとその家族のストーリーを積み重ねて、味わいを深めていくに違いありません。
いつか、坂川さんが子どもの頃に通っていた【Attivo】のシェフが、ドアを開けて入ってくる、そんなドラマティックなお話が聞ける日を楽しみに通いたくなる素敵なお店です。
おいしい料理と上質のワインを用意して、深夜まで明かりを灯している
撮影/佐藤顕子 取材・文/藤田実子
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