清らかで透明感がある、唯一無二の料理に会いに軽井沢へ【Restaurant TOEDA(レストラン トエダ)】
ミシュランガイドで三つ星を与えられるレストランの定義は「そのためにわざわざ旅行する価値がある」お店ですが、日本各地に素晴らしいレストランが多く存在する今、一人一人にそういったレストランがあると思います。長野県・軽井沢にある【Restaurant TOEDA】は私にとってそんなお店の一つになりました。
2021年9月。同店のシェフ戸枝忠孝さんは、2年に一度開催される「料理界のオリンピック」ともいわれるフランス料理のコンクール「ボキューズ・ドール」において日本代表として参戦したことでも話題になりました。
川沿いに佇む瀟洒な一軒家が【Restaurant TOEDA】
この「シェフのヨコガオ」を見て、私もいつか必ずここに行きたいと思い続け、ようやくその時が訪れました。8月ももうすぐ終わる頃でしたが、東京より気温の低い軽井沢の空気は心地よく、緑の紅葉が涼しげに揺れていました。
たった3テーブルのみの店内。側には小川が流れ、紅葉の色が季節を感じさせる素晴らしい場所です
3テーブルのみのフランス料理店で、料理は仕込みから全て戸枝シェフが一人で行い、サービスはソムリエでもあるマダムが担当されています。洗練されていながらもどこかくつろげる空気感がとても魅力的。今回はその日にいただいたコースをご紹介します。
木の形状を活かしたテーブルも個性的で美しい
『森 軽井沢の森のイメージで』
それだけで気持ちのよい題名がついたスターターがやってきます。手前からシャインマスカット、生ハム、葉っぱの形をしたのはレモンビネガーのチュイル
『カマンベール』
ババロアの形をしたチーズの前菜ですが、華やかなデザートのようです。カマンベールチーズをそのまま食べているかのような濃厚な味わいに反して、食感はババロアそのもの。そのギャップに心を掴まれました。キャビアとアボガドのオイルと一緒にいただきます
『信州サーモン』
その美しさに息を飲む、夢にまで見た同店のスペシャリテ。八ヶ岳の清流で育てられた八千穂漁業のサーモンに、野沢菜でつくったブイヨンを染み込ませたテリーヌで、この一皿に信州の恵みが詰まっています。マーブル模様を描くのはなんと海苔。野沢菜が味わいに厚みを与えていて、一口ごとに強い旨みに包まれます
『トウモロコシ』
この日大変印象に残ったのがこちら、トウモロコシの冷たいポタージュです。最初、旨みがやってきた後に押し寄せるとんでもない甘みの波! 生のトウモロコシを何本も集めて甘みだけを凝縮したのかと思うほどの衝撃。その余韻に恍惚としてしまいます
『信州牛』
信州牛を赤ワイン煮にして、そのコンソメとフォアグラ、くるみを合わせます。上にはきゅうりの原種に近い「古太きゅうり」をピクルスにしたものを添え、ソースはりんご酢と蜂蜜、マスタード。食材だけを聞くと重厚感がありますが、爽やかな酸が全体を調和し軽やかな印象です
『小麦』
小麦と聞いてパスタを思い胸を躍らせていたらラビオリが登場。期待をしっかり上回ってきます。スープはキノコのコンソメで、サーブされる前からいい香りがあたりを満たしていました。ラビオリにはじゃがいもとエビが包まれていて、エビの旨みがふわっと口の中で広がります
『大王イワナ』
魚料理は佐久でとれた川魚の大王イワナ。香ばしい香りのするサワガニの唐揚げはインパクトもあります。ソースもサワガニからつくっていて、ハーブのオイルで仕上げ。ズッキーニに包まれた肉厚でしっとりした身はイワナとは信じられません!
『信州豚』
最後は信州豚。メイン料理に肉のグリルがどんと出るお店が多くそれも魅力的ではありますが、【TOEDA】はメインもアートのように美しいです。タンの薄切りをまとわせて食感に奥行きを感じさせ、ソースはエゴマです。付け合わせにはアスバラガスに自家製のターメリックマヨネーズ。しっかりとした味わいですが、同店の料理はどれも軽やかで不思議です
『木苺』
デザートの1品目。上には木苺のエスプーマ、下にはバニラのブランマンジェを忍ばせています。炭酸のパチパチと木苺の酸味が刺激的なエスプーマとまろやかなブランマンジェを一緒に食べることで口の中で調和し、そこで完成するかのような面白いデザートです
『ビオチョコレート』
タルト生地の上にコーヒー、キャラメル、緑は抹茶のビスキュイが層になったデザート。本当に、最後の最後まで美しいです
揺れる葉っぱや川のせせらぎを見ながら料理を待つひとときも豊かです
「最初に来た時に『空気感がフランスだな』と感じたんです。そして実際に働きだすと、食材の豊富さに感動しました。野菜もジビエも豊富ですし、川魚もあるし、海のものを使わなくても十分、素晴らしい土地だなと思いました」と戸枝さん。どの料理からも信州のテロワールが感じられるうえ、戸枝さんの美意識の生きた緻密で繊細なお皿はどれも清らかで透明感があり、食材がまっすぐ向かってくるような印象を持ちました。戸枝さんが生み出す唯一無二の料理を味わうためにここを訪れる価値は、間違いなくあると思います。
この記事を作った人
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