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更新日:2024.11.13食トレンド 連載

大阪【鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ】~ヒトサラ編集長の編集後記 第74回

最近、鮨の進化が止まらないように感じます。手軽な部分と深い部分とを兼ね備えた鮨は、料理のジャンルを超え国境を越え、いろんな人たちによって楽しまれ、進化しています。そんななか、世界で最も有名なシェフの1人であるヤニック・アレノ氏が手掛けるイノベーティブな鮨レストランが大阪にオープンしました。フォーシーズンズホテル大阪最上階の【鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ】です。

鮨ラビス大阪ヤニック・アレノ

ミシュラン三つ星を2つも獲得しているヤニック・アレノ氏がプロデュースする【鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ】は、パリ、モンテカルロ、に続いてここが3店目。初めての日本展開が大阪ということで、ヤニック・アレノ氏始め、ヤニック・アレノグループ総料理長の廻神大地氏らが来日。この店の料理長となる安田至氏も参加してお披露目の食事会が開催されました。

今年8月に開業したフォーシーズンズホテル大阪の最上階は眺めも良く、センス良くまとめられた店内には長いカウンターと4人席があって、その造りがすでにフレンチと日本の鮨店との両方を感じる空間になっています。器以外は基本パリやモンテカルロと同じものを使う方針なのだとか。今回はランチでしたが食事はディナーメニューをいただきました。

さて、料理ですが、前菜をいただき、それからメインとしての握りが入り、デザートへと続く流れです。前菜は『エモーション』と名付けられた、ヤニック・アレノ氏の日本愛が感じられるもので構成され、4品出てきました。それに安田料理長の刺身が付きます。

まずはシャンパーニュで乾杯し、フランスの冬を代表する野菜アンディーブのサラダから。手で持っていただくところが鮨感覚でもあります。マッシュルームや洋梨が挟んであって、野菜の独特の苦みと甘味、酸味などが口の中に広がり、シャンパーニュの華やかさも加わると急にパリの朝に連れて行かれるような気分になります。

2品目はアーティチョークの豆腐で、ピューレを葛で練ったものが使われています。薫香のついたカワカマスの卵が乗せられ、胡麻豆腐のような感覚です。青のりが入った揚げ玉が隠し味で、このカリカリとした食感がまた面白い。

「トロマヨです」とヤニック・アレノ氏が出してくれた3品目は、まさにそれで、トロの上には茹で卵とキャビア。焼いたトーストが添えられています。キャビアとトロの濃厚な深みとソースの酸味がしっかり感じられます。週2回は鮨を食べるというほど鮨好きのヤニック・アレノ氏ですが、相当いろんな名店を食べ歩いてもいるようで、銀座の鮨水谷には2週間に渡って通ったという話も。

次は牡蠣ですが、はんごろしにしたシャリがペーストのように使われ、すだちとカレー風味のあられが添えられます。牡蠣の旨さがいろんな味やフレーバーによって面白く引き出されています。「フランス料理もそうなんですが、こういうのって日本料理と違って足し算の料理だと思うんですよ。つくりながら足らない要素を足していく。そうすることで新しい美味しさを発見したりするんですね」と廻神シェフ。

前菜の最後は刺身です。ブリの塩こうじ漬と中トロですが、トロは炭で炙って青柚子の粉がかかっています。安田料理長が出してくれました。

さて、メインの鮨の時間です。カウンターひとりひとりにカードが配られ、開くとそこに本日のネタが書いてあります。安田料理長が握り始めます。

つけ台のガリはなんとリンゴでつくったもの。これはワインにも合いますね。

ますは、旨味の強いアジから。そしてシンプルな味付けのクエ。カマス、キンメダイ、シマアジと続きます。

緩急つけながら少なめのシャリで鮨が出されます。お酒は日本酒を2種類ほどいただきました。九平次やIWAはやはり人気のようです。

シンガポールの人気寿司店【はし田シンガポール】での経験もある安田料理長は、話術にも長けていて、外国からのお客様にも好かれそうな感じ。

箸休めの豆腐の後に焼き台が出てきて、目の前で海老が焼かれます。「ボタンエビです。フランスの店だとこれが手長エビになるんですが、レアに焼いて炙った海苔で巻いて手渡しします」と安田料理長。シャリ代わりにコメのペーストが塗られています。

安田料理長が鰹節を擦り始めました。いい香りがカウンターまで伝わります。こういうパフォーマンスは海外からのお客様にはとくに人気なようです。この鰹節をシャリにまぶしたヅケが出ます。ヅケは隠し鰹節のためにパンチが効いています。

そして貝はアカガイ。お皿に入ったウニとタチウオ。最後に大トロで締めとなりました。

大トロには揚げたエシャレットと生ショウガが入っていて、これ1貫でなんだかフレンチで着地した感覚になります。ボリュームを感じ、メインディッシュをいただいたような気分になれます。この1貫のためにブルゴーニュの赤ワインをいただきました。

赤だしの代わりに、と出されたスープは、海のエキスのつまったコンソメ。キノコや鶏、牛などもたっぷり使われていて、フレンチ大トロの締めの余韻を見事に引き受けてくれました。

さて、デザートです。3皿用意されています。

まずは苺の砂糖窯焼き。添えられたクリームにつけていただきます。大阪の岩おこしのイメージもありますね。

そして白味噌と麦のアイスクリーム。焦がして風味を出した白味噌が使われていて、蕪のコンフィチュールや柚子のジュレとともにいただきます。これも日本とフランスの要素が詰まっていて、それぞれの文化へのリスペクトが感じられる一皿です。

最後の蕎麦茶のシューアイスは、ちょっとみたらし団子を想像してしまいましたが、ミニャルディーズですね。コーヒーとともにいただきます。

コーヒーは4時間かけて水出ししたもので、特別製のマシンをみんなで飛行機で手荷物として運んで来たのだとか。そこにジャスミンのクリームを乗せた海苔のパイ。

鮨屋はデザートが物足りないと言う人も増えているなか、とくに海外からのお客様への対応を考えたら、これくらいのデザートは必要なのかもしれません。

私もいろんなところで鮨をいただいていますが、日本が誇る最強のコンテンツのひとつだと確信しています。可能性だらけの鮨を素晴らしい才能がどんどん進化させていく。これこそ食の楽しさだと思います。

ちょうど優れた原曲をアーティストたちがカバーしてバリエーションを増やしていくような感じ。この流れはもう止まらないでしょうね。

この記事を作った人

小西克博/ヒトサラ編集長

北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。

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