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更新日:2017.06.19グルメラボ 連載

スパニッシュバルめぐり from「ヒトサラspecial」

楽しくて、美味しくて、懐にも優しいバルホッピング、東京のそんなスパニッシュバルをご紹介。カジュアルな雰囲気で楽しく、そして本格的なスペインの味をご堪能ください。

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【Amets】

スペイン仕込みの技をシンプルな一皿に凝縮

 白磁の皿に鎮座する肉塊、木皿にざっくり盛られたポルチーニ。オムレツもチーズもおよそ飾り気とは無縁、潔いまでにシンプルだ。しかし引き立て役がなくとも、料理はどれも抜群の存在感を放つ。奇をてらうことのない直球勝負。それも本場仕込みの豪速球だ。

    情熱的なスパニッシュレッドと木の温もりに包まれる店は、美食の宝庫・浅草にあって異彩を放つ佇まい。バルのように気軽に、レストランのような本格料理が味わえるという絶妙なバランスも、店の大きな魅力となっている

 服部公一シェフは若くして渡西し、5年半に亘り数々の名店で腕を磨いた人物。最終的に伝統的な郷土料理に魅せられるまでに、洗練されたモダンスパニッシュから力強いジビエ料理まで、幅広く学んできた。ゆえに一言でシンプルといっても、氏の料理には確かな技術とスペイン料理への深い理解が内包されている。たとえば豚の血を使った腸詰・モルシージャ、あるいは殻ごとオイルで煮込む海老のアヒージョ。その“完成されたシンプル”ともいうべき料理は、奥深い旨みを伴いゲストに鮮烈な印象を残すのだ。

  • 『エゾ鹿のソテー』。旭川から届く鹿は、牛肉と間違えるほどクセのないおいしさ。塩コショウでシンプルに

  • 『ヤギチーズのサラダ』。反面を焦がしたチーズの香ばしさとフルーツソースの爽やかな酸味が調和する

  • 数ある素材のなかでも、とくにシェフのこだわりが強いチーズ。牛、羊、ヤギなど多彩な種類が揃っている

  • 良質なジビエのために猟銃免許を取得してしまうほど行動派の服部公一シェフ。そのこだわりはどの料理でも実感できる

 合わせるワインはスペイン各地から厳選。種類こそ多くはないが、どれも料理と見事に調和する逸品ばかりだ。ここにもまた、シェフの信念が垣間見える。気取らず、気負わず、しっかり旨い。まるで下町・浅草を象徴するかのような、至高の一軒である。

【アロセリア サル イ アモール】

アロセリアから発信する共同オーナーが愛する郷土の味

 「やるからには嘘っぱちの料理は絶対出したくない」 そうヴィクトル・ガルシアさんが力を込めれば、「今はバルが人気だけど、スペイン料理をブームで終わらせたくない。本当の郷土の味を知ってもらいたいんです」とシェフの宮崎健太さんが同調する。ふたりが出会ったのは、マドリッドでの修業時代のこと。スペイン料理の奥深さに惹かれたふたりは、2012年9月に共同オーナーとして【サル イ アモール】を開店。選んだのはアロセリアという米料理の専門店だった。

    代官山の八幡通沿いにあるビルの地下。オープンして2年ながら、店内には焼き物や陶器、ポスターなど現地で買い付けた調度品が飾られ、ずっと昔からここにあったかのような温かな雰囲気が漂っている

 スペインの米料理といえば、パエリアが真っ先に頭に思い浮かぶ。だが、一口にパエリアといってもバレンシアでは鶏肉と兎が使われる一方で、カスティージャ・イ・レオンでは豚耳、豚足、チョリソーが盛り込まれ、カタルーニャではイカスミが加えられるなど、その特徴は地方ごとに実に多彩だ。そして、郷土料理の多様性をまざまざと見せつけられるのが、この店のスペシャリテでもある『小エビのカルデロ』。パエリアとは異なり、鉄壷のような容器で米を炊くムルシア地方の料理だが、これがシンプルなのに実に味わい深いのである。米は魚貝の旨みをたっぷりと吸い込み、鼻孔を擽るのは体験したことのない香気。これは魚貝スープに加えるニョラスという乾燥ピーマンが醸し出されるものだとか。

  • ムルシア料理『小海老のカルデロ』の決め手はニョラスの入ったスープの旨み。アリオリソースと一緒に味わう

  • エンサラダ・カンペラというラマンチャ地方の家庭料理『田舎サラダ』は、いわざスペイン版ポテトサラダ

  • イベリコ豚とセラーノの2種類が揃う生ハム。各テーブルへと運び、ゲストの目の前で切り分けてくれる

  • マドリッドのアロセリアで修業を積んだシェフの宮崎健太さん。延べ6年の滞在で郷土料理への愛を深めた

カルデロだけじゃない。この店の料理のひと皿ひと皿には、奥深きスペイン料理の誘惑がそこかしこに潜んでいる。

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ヒトサラ編集部

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