<タイ・ローカルフード紀行 VOL.08>濃厚甘辛『タイカレー』!
タイ旅行に行ったなら、一度は食べたい『タイカレー』。どこに行っても見つかる定番メニューで、店によって味つけもバリエーションもさまざまですが、このお店は日本人の味覚によく合うんです。
ひと口すすってみれば、きっと「!」と感じるはず。ココナッツミルクのほの甘さ、それを追いかけてくるスパイスの刺激。巷のタイカレーと、深みがぜんぜん違う。甘さと辛さがスープの中に溶け合って、舌の上で踊っているのがよくわかるんです。
それでいて、スパイスもココナッツも効かせすぎていない。あくまで上品。これはまさに「カレーの女王様」かもしれない……。
家庭的でかわいい【クイーン・オブ・カレー】の店内は、ランチどきには観光客や地元客でいっぱいになる
その名もずばり【クイーン・オブ・カレー】。自信満々の店名ですが、それにふさわしいだけの実力派なんです。
メニューの売りはやっぱりタイ・カレー。ですが本来、タイに「カレー」という料理はないんです。お店の自慢になっているレッドカレーも、タイ語では『ゲーン・ペッ』。直訳すると「辛いスープ」となります。チリやハーブをふんだんに使ったスパイシーなスープという意味です。ゲーンとは、タイのスープ料理全般を指す言葉なんです。
『ゲーン・キアオ・ワーン(グリーンカレー)』170バーツ(約560円)。甘さの中にピリッとした辛さが走り抜ける
このゲーンにはたくさんの種類があって、日本でもよく知られるようになったグリーンカレーは、『ゲーン・キアオ・ワーン』と呼ばれています。イエローカレーは『ゲーン・ガリー』。『ゲーン・ソム』は「酸っぱいスープ」という意味ですが、その色合いから外国人はオレンジカレーと呼んでいます。
そう、外国人がイメージしやすいよう、わかりやすいように、呼び方を変えているんです。そのあたりの柔軟さが、さすが観光立国タイといったところでしょうか。
こちらは『ゲーン・ガリー(イエローカレー)』170バーツ(約560円)。英語のCurryから逆輸入された料理名だ
街角の屋台や食堂では、こうした色とりどりのゲーンが並んでいるのをよく見かけます。とってもカラフルでいかにもおいしそう。
それぞれの色と、味の決め手になっているのが、タイ独特の調味ペースト「ゲーン・クルーン」です。その材料は実にたくさん。唐辛子や、ニンニク、エシャロット、カー(タイ生姜)……。そしてハーブ類は、レモングラス、コリアンダー、コブミカンの葉、パクチー、ウコンなど、こちらも多種多様。これらをすりつぶし、混ぜ合わせてペースト状にしていきます。
この「ゲーン・クルーン」を炒め、具材とココナッツツミルクを加えて煮込んでいくのが、ゲーンの一般的なレシピです。
『ゲーン・ペットヤーン(ローストダックのレッドカレー)』250バーツ(約830円)は、絶対に食べたい人気メニュー
ペーストの配合によって、ゲーンの色も味わいもがらりと変わってくるのがタイ料理の深いところ。日本のカレーよりもずっとさらりとしていて、確かにこれはスープ料理です。だからタイではカノムチン(タイ風そうめん)と一緒に食べたりもします。
「でも、うちではごはんに合う味つけにしているんです」
とは【クイーン・オブ・カレー】スタッフの女性、ラットさん。地域によって、家庭によってゲーンの味つけはさまざまですが、こちらのお店は、ぱらぱらしていて粘り気の少ないタイ米と一緒に食べることを考えた、やや濃い目の味に仕上がっています。カレーライスが大好きな日本人にはぴったりなんです。
テラス席もある。街の風を浴びながら食べるのもいいものだ
最近は「ゲーン・クルーン」も出来合いのものを使うお店が増えていますが【クイーン・オブ・カレー】はあくまで自家製。秘伝のレシピを守っています。
「ペットヤーン(ローストダック)も自家製でおすすめ」というラットさんの言葉通り、皮は香ばしく肉はジューシーに焼かれた鴨は絶品で、レッドカレーライスにもよく合います。
お店の近辺は外国人観光客の泊まるホテルも多いことから、英語メニューや英語での対応もばっちり。赤、黄、緑と並べて、食べ比べてみるのも楽しいでしょう。
【Queen of Curry(クイーン・オブ・カレー)】
電話:0-2234-4321
住所:49 Charoenkrung Rd.,Soi 50, Bangrak, Bangkok
営業:10:00~22:00
定休日:無休
この記事を作った人
取材・文/室橋裕和(フリーライター)
タイに10年在住し、現地日本語情報誌を中心に活動。帰国後は雑誌や書籍、ウェブなどの執筆・編集にあたり「アジアのいま」を発信している。タイ料理ではラープ・ペット(アヒル肉とハーブのサラダ)をカオニャオ(もち米)と一緒に食べるのが大好き。
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