絶景ワイナリーレストランでシードルを楽しむ! from おいしいニッポン物語
「おいしいニッポン物語」の記事から紹介する英国りんごが楽しめる秋の旅。第二回は絶景の中でシードルを楽しめるワイナリーレストランのご紹介です。
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日本のふじりんごだけでは出せない本場の味
ここにしかない風景と料理とシードルと
見よ、この絶景! 飯綱町を見下ろす丘の上に建つ【ワイナリーレストラン サンクゼール】。その佇まいはヨーロッパのレストランのよう
英国りんごが魅力的な飲み物になっているのをご存知だろうか?その答えは「シードル」。
長野県飯綱町にはシードルを美味なる料理とともに楽しめる絶景レストランがある。飯綱町のフラッグシップというべく【ワイナリーレストラン サンクゼール】。地産の英国りんごから作られるシードルを味わいに訪れたいとっておきの場所だ。
サンクゼールでのシードルの醸造は2002年より始められ、その歴史は15年ほどだ。
毎年実りの秋、りんごの収穫が終わると仕込みが始まる。
ワイナリーに届けられたりんごを、ある程度の大きさにクラッシュさせ、搾る。そのジュースを冷却し、寝かせたところでゴミやオリを取り除いたあとに1~3週間ほど発酵。その後瓶詰してゆっくりと二次発酵をさせ、りんごの花が咲き始める5月にリリースされるのだ。
サンクゼールではもちろん、ぶどうを使ったワインも生産している。しかし、年間約25万本販売されるうち、約4万本をシードルが占める。シードル以外にも高品質なシャルドネを作っているが、飯綱町の個性を活かしたサンクゼールならではのものとなると、シードルが群を抜く存在なのだ。
瓶熟しながら、リリースされる5月を待つシードル
日本のふじりんごだけでは出せない本場の味
ソムリエの三浦秀一氏はこう話す。「うちのシードルの味の決め手は酸味や渋みにあると思います。日本のふじりんごだけではシンプルな味になりますが、そこに英国りんごのブラムリーや江戸時代から伝わる和りんごの高坂林檎を使うことによって、より味わいが複雑に、かつぎゅっと引き締まり、飯綱町ならではのテロワールが楽しめるのではと思っています。評判ですか? それはもう大好評です!」三浦氏の話は続く。「とはいえ、一番大事なことは日々そのりんごを作って下さっている地元の生産者の方々の努力です。」
原料となるりんごはすべて飯綱産のものにこだわっている。ブラムリーを使ったシードルは2010年から生産されており、現在は地元の約30人のりんご農家より届けられているという。
ワイナリーを案内しながら説明してくれる、サンクチュアリマネージャーの三浦秀一氏
こちらでぜひ味わってほしいのは、 “いいづなシードル” と名づけられたより地域の味を味わえる2種類のシードル。
先の三浦氏の言葉にあるように、シードルの味の決め手は、酸味と甘味のバランスだ。日本のりんごが持つ甘みだけでは味わいが引き締まらないため、味のバランスを保つのが難しい。
特に英国原産のりんごは加熱調理用もしくは醸造用に向く味わいを持ち、発酵させると爽やかな酸味が感じられるシードルに生まれ変わる。そこに在来品種である国産のふじの甘さやコクを加えることにより、穏やかな甘みの中に締まった酸味とわずかな渋味を表現するバランスのとれたシードルを造ることに成功。それが “ブラムリー×ふじ” だ。
もうひとつは、この地独特の天然記念物に指定されている和りんご “高坂林檎” の独特の酸味・渋みを生かした “高坂林檎×ふじ” 。この2種類ともいわば飯綱町の土地が育んだ、ここでしか味わえない “いいづなシードル” といえるだろう。
左から、「いいづなシードル・ブラムリー×ふじ」天然記念物のりんご “高坂林檎” と “ふじ” で作られた「いいづなシードル 高坂林檎xふじ」、山下フルーツ農園さんの減農薬ふじ100%で作る「シードル 田窪恭治作 “飯綱町りんご” ラベル」、信州りんごでつくるスタンダードな「シードル」
サンクゼールで作られているシードルは、 “いいづなシードル” 2種を含む全4種類。英国りんごのブラムリーからは酸味、ふじからは甘み、そして幻の和林檎、高坂林檎からはほのかな苦味が届けられる。品種ごとに複数の種類があり、その味わいの違いを飲み比べるのも楽しい。これらのシードルはワイナリーのショップで試飲することができるので、自分の好みの味を見つけてお土産にするのもいい。
また、これからは英国りんごや和りんごの特性を生かし、フランスのカルヴァドスのようなブランデー、いわゆる蒸留酒にも挑戦するという。ファーストリリースは2020年のオリンピックイヤーを予定とのこと。こちらも楽しみだ。
2017年に入れたシードルブランデーの蒸留機械。ファーストリリースが待ち遠しい
ここにしかない風景と料理とシードルと
ワイナリーを見学したら、お待ちかねの食事の時間。ワイナリーのある棟から徒歩で数分歩いた場所にある、絶景レストランへ―。
丘の上に建つレストランは、まるでヨーロッパのオーベルジュのよう。建物の中に一歩入れば、目の前の絶景に感動するはずだ。そこからは視界の中に入るものが幾重にも連なるパノラマのような風景が広がる。目の前をなだらかに下るぶどう畑、その先に浮かぶ田んぼやそば畑。そして遠くに並ぶ長野市の街並みと山々。訪れるすべての人を惹きつけてやまないその風景はりんごと共に飯綱町の宝物かもしれない。
こちらでいただけるのは、地産の食材を生かした欧風田舎料理。気になる料理をアラカルトで注文できるのがうれしい。目の前に広がる美しい景色を眺めながら、テロワールを感じる料理とシードルをゆっくりと楽しめば、これ以上ない贅沢な時間を過ごすことができる。
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左/信州ポークの自家製テリーヌ。バルサミコソースがシードルのほのかな甘みや酸味と重なり、幾重の味わいの変化が楽しめる
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右/飯綱町産ブラムリーを漬けたフロマージュブランのムース、メイポールのソースを添えて。メイポールのすっきりと酸っぱいソースがフロマージュブランを引き立てる
電話:026-253-8070
住所:長野県上水内郡飯綱町芋川1260
アクセス:牟礼駅から車で5分
営業時間:11:30~14:30(L.O.13:30)
定休日:月曜日(1〜3月)(祝日の場合は営業)
写真/小西康夫 取材・文/嶋 啓祐
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