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その姿、まるで太陽神! サイケなラーメン屋【航海屋 新宿店】| サニーデイ・サービス田中貴 Bグルマン部 #9

“B級グルメ美食家”が集い、愛するお店を熱く語る「ヒトサラ Bグルマン部」。今回から、ラーメンマニアとしても知られるサニーデイ・サービスのベーシスト、田中貴さんが連載陣に加わり、パワーアップしてお届けします! 全国のラーメン店を食べ歩いて20年以上の田中さんが選ぶ、「“男の”インスタ映えラーメン」とは?!

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田中 貴(サニーデイ・サービス)
  • ロックバンド「サニーデイ・サービス」のベーシスト。ツアーの合間、全国の名店を食べ歩くうちに、地域ごとのラーメンの多様性に魅せられる。現在、ラーメン本『Ra:』の出版やグルメ雑誌の連載、ラーメン番組のMC等、グルメの分野でも各メディアで活躍している。

はじめまして。サニーデイ・サービスというバンドでベースを弾いております、田中貴です。「ヒトサラ Bグルマン部」のラーメン担当として、今回から連載に参加することになりました。
本を出しといてなんですが、僕自身はガイド本を見ることはせず、自分で調べたり、現地の人に直接聞き込みをして食べ歩く主義。ラーメン評論家やブロガーさんたちが知らない、行かない店を紹介することもあると思います。彼らが“右へ倣え”で褒める店よりも、自分がウマいと思うものが最高なのです。
ま、なんにせよ、間違いなくイイ店だけを紹介するんでお楽しみに。

Bグルマン部 今回のテーマ
「“男の”インスタ映え」

ラーメンでインスタ映えといわれ真っ先に思いつくのは【ラーメン二郎】でしょうか。二郎は、僕も一年で30~40杯ほど食べるくらい大好きなラーメン屋ですが、今さら紹介するのもナンセンス。かといって、“二郎インスパイア系”と呼ばれる、僕にいわせりゃ“人の褌で相撲を取る系”のラーメン屋には興味がない。
よし、ならば今回はあそこでいきますか……。

【航海屋 新宿店】
都心にだって隠れた名店はある

    デパートが立ち並ぶ新宿三丁目エリア。名店は、その路地裏にひっそりとある

「新宿駅でウマいラーメン屋はどこですか?」
まあ、よく聞かれるが本当に困る質問。そんなもん、ある訳がない。ラーメンは単価の安い料理。家賃が尋常じゃない額のターミナル駅近くはチェーン店ばかりで、個人が手作りでやってるイイ店はほとんど存在しないのである。
あるとしたら、ちょっと路地裏、そして、家賃がまだ安かった頃から営業している店が狙い目だ。それがこちら【航海屋】。

    目にしたことはあっても、気にしたことがないという人が多い外観

「ひと昔、いや、ふた昔前のラーメン屋か」などと思うなかれ。この外見から、創業25年の深みを感じ取れないようじゃあウマいメシには辿り着けない。
雑誌やネットでは、流行をわかりやすく取り入れ、今風にコンサルティングされた新店が絶賛されているが、実際の味はどうだろうか。いたるところで連日のようにオープンするラーメン店だが、3年で7割が閉店し、10年後は1割しか残らないといわれている。
これはつまり、5年、10年、ましてや25年も続いている、こういう店こそが“本当にウマい店”だということ。

貼り紙の多い店には名店、迷店が多い

    空間を埋めつくす大量の貼り紙。後客がいないことを確認して、じっくりチェックしよう

券売機の前に立つと、多すぎるメニューにいきなり混乱させられる。よくラーメン評論家は「初めての場合は券売機の左上を──」など馬鹿げたことをいうが、そんなこたーない。自分が食べたいものを食べればいいのです。
あまりメニューが多いと、店のウリが絞りきれてないのかと思ってしまうが、この店の場合、長年研究を重ねた結果、新メニューが次々に開発され、自ら混乱しているような雰囲気さえ感じられ、なんとなく好感が持てる。

    ここが新宿伊勢丹のすぐそばと忘れてしまうような内観。ようやくインスタ映えの要素が出てきた

ラーメンが出てくるまで、壁のサインを眺め、お気に入りの芸能人の写真をSNSにアップして待とう。三谷昇のピエロのイラスト入りサインなど個人的にそそられるものもあるが、インスタ映えならば、車だん吉、安部譲二あたりがおすすめだ。

このお店、定番の鶏ガラ&魚介のラーメンはもちろん、豚骨がプラスされたコッテリ系の『とんそば』、さらに時代の波に乗った『濃厚煮干し』、夏には東京での冷やしラーメンの先駆け的存在である『清流めん』など、どれを食べても間違いがない。さすが創業25年の実力。ポッと出の新店とは訳が違う。

その数多いメニューの中でも、今回のお題、「“男の”インスタ映え」となるとコレしかない。【航海屋】のフラッグシップメニューでもある『ダブルチャーシューメン』だ。

サイケデリックな盛り付けに“合法トリップ”

    【航海屋】のフラッグシップメニュー『ダブルチャーシューメン』1,050円(税込)。ちょいとお高いが、絶品チャーシューの数をみるとこの値段も納得できる

サイケデリック。
ラーメンにはルールがない。店主の個性を表現できる料理。最近のラーメンは、どこも似たり寄ったりのルックスばかりだが、このオリジナリティーを見よ。豪華なのか、寂しいのかよくわからない唯一無二の盛り付けだ。

試しに、ほかの店と比較してみよう。全国には、丼から溢れるようにチャーシューを盛り付けるラーメン店がいくつかある。

  • 山口県下松市【中華そば 紅蘭】の『チャーシュー麺(並)』

  • 新潟県柏崎市【そばよし】の『チャーシューメン』

食欲をそそる、いい盛り付けだ。花びらチャーシューなどと呼ばれ、それぞれ人気メニューで、確かにウマいのだが、【航海屋】の『ダブルチャーシューメン』の個性には敵わない。

今度は真俯瞰から。

    いろんな意味で頭がクラクラする。長時間、真俯瞰で見つめるのは危険だ

太陽神。
丼から発せられる宇宙のファンタジー。

チャーシューをよく見てほしい。微妙に部位が違うのがわかるだろう。【航海屋】の最大のウリであるチャーシューは、豚バラ肉をタレでじっくり煮込み、一晩寝かせて味をしっかりなじませた逸品。その名物チャーシューは、大トロ、中トロ、赤身と好みで選べるのだ。

    何も言わなければ中トロで提供。大トロ、赤身は、貼り紙に気づいた者のみが選べる

そして、もう一箇所の貼り紙をチェック。

    壁にはもう紙を貼るスペースが残されておらず、天井から吊ってある。「この熱い魂を伝えたいんや」という店主の気持ちが胸に刺さる

こちらには、ミックスが選べると小さく書いてある。このお店、いたるところに貼り紙があり、座った場所によって見えないものもある。何度も通って、あらゆる場所に座って初めて店の全貌を知るのである。

『ダブルチャーシューメン』を頼むからには、ぜひ「通の味 脂身トロトロ」と書かれている大トロを味わってほしい。

    薄くスライスしてあるので思ったより脂っこくなく、独特の食感が楽しい

全て脂身。プルプルとした食感がたまらん。でも、全部コレだとちょっと重いので、全ての味が楽しめるミックスがベストチョイス。

それにしても、いいスープだ。鶏と魚介の澄んだスープは旨味がたっぷり。“淡麗系”と呼ばれる、あっさりでバランス重視のラーメンが人気の今、この味を新しい店構えで、今風の丼と盛り付けで出したらラーメン評論家はきっとこぞって評価するだろう。
上辺に惑わされず、正しく味を見極められる人は少ない。

さて、最後にとどめの一撃。僕が【航海屋】を好きなもう一つの理由、『チャーシューおこわ』を見てほしい。

男の子の夢、日本昔ばなしの世界が現実に

    この注文方法も、ちゃんと貼り紙をチェックしないとわからない。ボケーっとしていたら、この夢の世界には辿り着けないのだ

まんが盛。
美しい。これぞ「“男の”インスタ映え」。ちなみに、iPhoneのポートレート機能を初めて使った一枚である。

この『チャーシューおこわ』を注文すると、盛り付け時に店員さんがチラッとこちらを見る。そのタイミングに「まんがで」とひとこと伝える。ちょっと恥ずかしい。これで150円。ランチタイムは、100円で普通盛が3杯まで食べられる。素敵じゃないか。ちなみに、おこわといっても餅米ではなく、チャーシューの煮汁の炊き込みごはんである。チャーシューの切れ端も入ってお得感満載。
男というものは、炊き込みごはんやチャーハンなどの、色のついたご飯を腹一杯かっ込みたくなる時がある。そんな時にはもってこいのサイドメニューだ。

    夢のツーショット。この連載に関係なく、趣味としてこれらの写真を撮っていた自分に我ながら呆れる

ダブルチャーシューとまんが。
最高の組み合わせ。
この店には、長年通う僕でも、まだまだ食べてない裏メニューが存在する。というのも、「ウラメニュー」と書かれた貼り紙を最近みつけたのだ。表記した時点で裏でもなんでもないと思うのだが、なんとなく憎めないのがこの【航海屋】の良さである。
これからもお世話になります。

【航海屋 新宿店】

  • 電話:03-3355-2010
    住所:東京都新宿区新宿3-12-4
    アクセス:東京メトロ「新宿三丁目」駅から徒歩3分

  • 営業時間:[月~土・祝] 11:00~翌1:00、[日]11:00~21:00
    定休日:無休

「ヒトサラ Bグルマン部」
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CDリリース情報

    ~古今東西のラーメンと音楽を知り尽くした男たちが奏でる“舌の記憶”と“音楽的記憶”の甘美なる響宴~
    TVアニメーション「ラーメン大好き小泉さん」オリジナルサウンドトラック『ラーメン大好き田中さんと細野さん』
    音楽:田中 貴 & 細野しんいち
    VTCL-60464/¥2,900+税 発売中

    [Musicians]
    田中 貴(サニーデイ・サービス):bass
    細野しんいち:keyboards & programming
    オータコージ:drums & percussion
    マツキタイジロウ(スクービードゥー):guitars
    良原リエ:accordion, toy piano, slide whitsle & 鍵盤ハーモニカ
    金原千恵子ストリングス:strings
    藤村鼓乃美:vocal
    野戸久嗣:vocal

    [All Tracks Composed & Arrangement]
    田中貴 & 細野しんいち
    http://ramen-koizumi.com/

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この記事を作った人

田中 貴(サニーデイ・サービス)

ロックバンド「サニーデイ・サービス」のベーシスト。ツアーの合間、全国の名店を食べ歩くうちに、地域ごとのラーメンの多様性に魅せられる。現在、ラーメン本『Ra:』の出版やグルメ雑誌の連載、ラーメン番組のMC等、グルメの分野でも各メディアで活躍している。

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