観たらきっと、日本酒が好きになる|ドキュメンタリー映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』が公開
日本酒の世界で活躍する女性たちを追ったドキュメンタリー映画、『カンパイ!日本酒に恋した女たち』が2019年4月27日(土)に公開されます。これまで閉鎖的なイメージを持たれていた日本酒業界で、杜氏、日本酒ソムリエ、日本酒コンサルタントという様々な形で携わり、新たな旋風を巻き起こしている女性3人のお話。閉鎖的と思われていた日本酒業界はいま、とても面白いことになっています。
『カンパイ!世界が恋する日本酒』の小西未来監督が贈る、日本酒ドキュメンタリー映画第二弾。男性社会の日本酒業界で、かつては酒蔵に入ることすら禁じられていた女性たちが、それぞれの立場で日本酒の未来を切り開いていく作品です。
©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
出演するのは、広島に100年以上続く酒蔵を酒造りごと継いだ「今田酒造本店」の女性杜氏・今田美穂さん。まだ女人禁制と言われていた1994年に女性醸造家になった先駆者です。2人目は、ニュージーランド出身の日本酒コンサルタント・レベッカさん。英語教師として来日、歓迎会で飲んだ一杯の日本酒に魅了され、人生が一転。
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今田美穂さん ©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
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レベッカさん ©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
3人目は、システムエンジニアから転身、多彩なフードペアリングで日本酒の世界に新たな旋風を巻き起こしている日本酒ソムリエ・千葉麻里絵さん。今回は、千葉さんに映画についてと日本酒への想いを伺いました。
閉鎖的だった日本酒業界において、女性の“柔らかな発想”が風穴を開ける
「私だけ、キャスティングミスじゃない?って思いました。一緒に出演している杜氏の今田美穂さんは造り手としてとても素晴らしく描かれていて、日本酒コンサルタントのレベッカさんも日本酒への想いを語る言葉がキラキラ輝いていた。私が撮影されていたのは、あくまで“自分にとっての日常”だったので、観ている人は面白いのかな?と不安になりました(笑)」
【GEM by moto】店主、日本酒ソムリエの千葉麻里絵さん ©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
千葉さんはアルバイト先で日本酒の面白さにハマり、大学卒業後はシステムエンジニアの道に進むも、飲食業への想いが消えず、転身。酒造りを学ぶため酒蔵へ足を運び、日本酒と料理のペアリングが珍しかった頃からフードペアリングを行うなど、圧倒的な知識と独自の提供法で料理人や日本酒愛飲家から一目置かれる存在になります。
──千葉さんのいう“自分にとっての日常”とは、「酒蔵修行」や「日本酒ペアリング」のことですよね? 観客にとっては新鮮で「今すぐ千葉さんが勧める日本酒が飲みたい」と思うはずです!
千葉:それなら良かったです。私はあくまでサービスマン。目の前のお客様にどう楽しんでもらうか。そのための酒蔵訪問や勉強なんです。仕事をするなら自分自身も楽しくないと、という気持ちもわかるのですが、“楽(ラク)”と“楽しい”は違っていて、プロなら一緒に楽しむのではなく、知識を蓄えてお客様の要望にきちんと答えられなければならない。そのための“学び”なのです。
©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
──そもそも、映画に出演するきっかけは?
千葉:この前の作品、『カンパイ! 世界が恋する日本酒』(2015年公開)にちょっとだけ出てるんです。新宿の【日本酒スタンド 酛】でアルバイトとして働いていた時に監督とお会いし、私のことを面白がってくれて、「2作目をやるなら出演して欲しい」というお話はいただいていました。
──その時からラブコールを受けていたんですね。監督は千葉さんに何を求めていたと思いますか?
千葉:何を求めていたかはわかりませんが、私がこの作品に出ることによって、“男性だから”、“女性だから”というネガティブな意味ではなく、いま活躍している女性に勇気を与えられるかもしれない、と思ったんです。飲食の世界はまだまだ男性社会。その中で、女性が「おいしい」と発する言葉の力って大きいと感じていて、それが閉鎖的だった日本酒の世界ではなおさら。それを壊せるのかな、と思ったので出演を決めました。
造り手と消費者を“相思相愛の関係”でつなぐため、日々、日本酒と真摯に向かい続ける千葉麻里絵さん
──劇中では、千葉さんが酒蔵で酒造りを学ぶ様子が描かれていました。かつて、酒蔵に女性は入れなかった時代を考えると変わりましたよね。
千葉:そうですね。私が酒蔵に通い始めた9年前は、連絡をしても門前払い。普通の女子だったらとっくにやめていると思います(笑)。それが今では、様々な蔵元へ頻繁に通えるようになり、一緒に日本酒を造るまでに至ったんです。
──それは千葉さんの真面目で熱心、打たれ強いキャラクターがあったからこそ。それと、開放的になりつつあった日本酒業界の時代の流れとも合致していたのかもしれませんね。
千葉:女性の柔らかい意見を取り入れた時の「成功例」が、実績として生まれたことが大きかったと思います。そもそも、“女性だから”とかどうでもいいんです。ただ、“女性だからできた”という事実は大事だと思っています。
“提供のプロ”として進化し続けるための「ペアリングイベント」と「毎朝の利き酒」
──劇中にも出てくる【すし㐂邑】の木村さんとのペアリングも見物ですね。
千葉:あれ、やばいんです(笑)。通常、料理人とペアリングイベントを行う際、事前に打ち合わせをするのですが、事前にどんな料理を出すのか聞かず、お客様に出す1分前に食べて瞬発的にどの酒にするか決める“荒技”を自ら提案してしまったんです。それが本当に大変で……(笑)。
木村さんとのコラボはすでに8回目。「映画と絡めてロスでもペアリングをやりたいねと話しています」。©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
千葉:お鮨を食べてその味をインプットする作業が重要なんですが、とにかく難しい。お店に持っていける日本酒の数も限られているので、その場で混ぜて提供したり、試行錯誤でした。トータルで8回コラボしたんですが、3回目の時に、軽くノイローゼみたいになっちゃいました(笑)。
──それは危険ですね(笑)。もうひとつ興味深かったのが、出勤してすぐに行う「毎朝の利き酒」。お酒の状態を見るのではなく、“日本酒と会話する”というチェック方法が独特だなと。
千葉:お酒と自身の体調チェックのために欠かさず行っています。彼ら(日本酒)も生き物ですから。彼らと話してみて、「今日むちゃくちゃイケてんじゃん」ってなったらその日は全力で推しますね。
冷蔵庫内の並びにも最新の注意を払います。「いきなり新人(新銘柄)は入れませんし、県別ではなく、蔵元同士の仲の良さなどを考慮した“相性”で並べています」
──日本酒を擬人化してしまうあたりも、千葉さんらしいですね(笑)。
千葉:年1程度ですが、彼らも調子が悪い時があるんですよ。なんで調子が悪いんだろう?と思って蔵元に問い合わせてみると、偶然新酒の切り替えの時だったり、新しい機械にしたばかりだったり。蔵元の人に「なんでわかったの?!」って驚かれたりします。そういうのも、毎朝の利き酒でわかるようになるんです。
従来にない驚きや楽しさを提案する、“千葉流・日本酒ペアリング”
──以前、「日本酒の好き嫌いは、その人が初めて飲んだ日本酒によって分かれる」とおっしゃっていましたね。
千葉:はい。お店で日本酒を飲むタイミングってとても重要なんです。その時の出会いによって、日本酒を好きになるかもしれないし、もう飲まなくなるかもしれない。今田美穂さんのような蔵元の方たちの役割は日本酒を造るまで。そこから先は提供する人間によって、100点の酒がマイナスになってしまうかもしれないし、200点になるかもしれない。そしたら私は、絶対にプラスにしたいんです。
©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE
──それが千葉さんのペアリングに表れているんですね。
千葉:現場に行って造る工程を見ていますし、作品自体をリスペクトしているので。出来上がったものを舞台(店)でどう輝かせるか、めちゃくちゃ気を遣います。お客様一人一人の求めるものを瞬時で察し、従来にない驚きや楽しさを“フードペアリング”という形で提供します。それが私の役目ですから。
『ブルーチーズハムカツ』×『とおののどぶろく(水もと)』
【GEM by moto】の名を世に知らしめた、『ブルーチーズハムカツ』とどぶろくのペアリング。料理を口に含んだ状態で酒を飲み、料理の味を完成させる“千葉流・日本酒ペアリング”の中でも代表的な一つです
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庶民的な肉じゃがをエレガントに仕上げるペアリング。ペースト状にした肉じゃがに、バーボンオーク樽熟成の栃木・せんきんのジェムオリジナルを合わせます
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いちごと春菊の味の余韻を伸ばすため、オーク樽貯蔵のピーチのような果実感が特徴の新政を合わせています
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日々、全力で日本酒と向き合っている千葉さんをはじめとする3人の女性が出演する映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』。
この作品を観て感じたことは、男性とか女性とか性別は関係なく、心から楽しんでいる人はどんな環境でも輝けるということ。劇中の誰もが生き生きとした表情で、これだけ熱中できるものがあれば、「人生はより彩られるのだろうな」と羨ましくなるほど、すがすがしい作品に仕上がっています。
公開は2019年4月27日(土)、「YEBISU GARDEN CINEMA」ほか公開。ぜひ、劇場に足を運んでみてください。
『カンパイ!日本酒に恋した女たち』作品情報
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2019年4月27日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
キャスト:千葉麻里絵、今田美穂、レベッカ・ウィルソンライ、久慈浩介、ジョン・ゴントナー、神吉佳奈子、木村康司、生江史伸、リッチー・ホウティン
監督・編集:小西未来
『カンパイ!日本酒に恋した女たち』予告
-INFORMATIN-
『最先端の日本酒ペアリング』-
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2,500円+税
千葉麻里絵、宇都宮仁著
旭屋出版刊/2019年4月27日(土)発売
http://asahiya-jp.com/book/9784751113639/
千葉麻里絵プロフィール
岩手県出身。新宿の【日本酒スタンド 酛】に入社後、利酒師の資格を取得。2015年恵比寿に【GEM by moto】をオープン。熱心に蔵見学を行うことで造り手の思いをお客さんに伝える代弁者となるだけでなく、食と日本酒との新たなマリアージュを日々追求。店長として店に立つ傍ら、幅広いジャンルの飲食店とのコラボレーションを通して活躍の場を広げている。
【GEM by moto】(ジェムバイモト)
住所:東京都渋谷区恵比寿1-30-9
※このお店は閉店しました。
取材・文/嶋亜希子(ヒトサラ編集部)
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