江戸から続く老舗「駒形どぜう」の新業態|浅草【sen】新鮮な食材を炭焼きで楽しむ
多くの飲食店が建ち並ぶ、都内随一のグルメスポットでもある浅草。昨年末、この地のランドマーク的存在・雷門のほど近くに登場した【sen】は、創業200年を越える老舗【駒形どぜう】が手がけた新店として注目を集めています。
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江戸から続く老舗が、浅草に新業態【sen】をオープン
新鮮な食材の美味しさを最大限に引き出す「炭火焼き」
ほっと寛げるような日常の食事処
江戸から続く老舗が新業態をオープン【sen】/浅草
ガラス戸がオープンな雰囲気をもたらすエントランス。昼飲みが楽しめるよう、土日祝は12:30からオープン
下町ならではの風情をたたえる老舗が数多ありつつ、ホテルの建設ラッシュが続き、新たな飲食店が続々とオープンしている浅草。古いものと新しいものが鮮やかなコントラストを見せる街は、今の浅草をおいて他にないかもしれません。そんな新旧が交差する地を象徴するレストランが、2018年12月20日にオープンしました。【駒形どぜう】の新業態となる【sen】です。
【駒形どぜう】といえば、1801年に創業、江戸の庶民に親しまれた味を現在の七代目当主に引き継ぐ、どじょう料理専門店。【sen】の料理にはどじょうは登場せず、佇まいもシンプルモダンですが、要所要所にしっかりと【駒形どぜう】という老舗の矜持が息づいています。
表面を香ばしく焼き付けてから、20分ほどかけて中までじっくりと火を入れる鴨肉。嚙み締めると、じゅわっと旨みがあふれるよう
店名【sen】には、新鮮の〝鮮〟という意味が込められています。食材の鮮度を大切にして、新鮮ゆえの美味しさを最大限に引き出したい、と取り入れた調理法が炭火焼き。肉や魚介、季節野菜それぞれの火入れ加減を見極め、丹念に焼き上げたら、味付けは驚くほどシンプル。
鴨肉は炭火焼きメニューの定番。塩と粒マスタードのみで、素材本来の味わいを楽しんで。『鴨の塩焼き』2,200円(税抜)
例えば鴨肉は、塩と粒マスタードを添えただけという潔すぎる一皿となって登場します。口に入れると、炭火ならではの香ばしさがふわっと広がり、噛めば肉汁とともにやってくる強い旨み。茄子はふっくら瑞々しく、ジャンボしいたけは風味がぎゅっと凝縮したかのよう。どれも素材そのものの味わいがストレートに伝わり、はっとするほどの美味しさ!
炭火焼きを支えている炭は【駒形どぜう】と同じ紀州備長を使っています。これにより、安定した火力を保ち、ムラなく焼き上げることが可能に。そして、上質な食材へのこだわりも本店譲り。選りすぐりの素材が揃うのも、【駒形どぜう】と仕入先の長年にわたる信頼関係があってこそなのです。
グリルした新じゃがや紅芯大根、瑞々しいフルーツトマトなど季節野菜をふんだんに。リピーター多数の人気メニュー、『senの特盛サラダ』1,200円(税抜)
炭火焼き以外にも、たっぷりの野菜に爽やかな自家製ゆずドレッシングを合わせた『sen特盛サラダ』や豊洲仕入れの鮮魚の刺身など、素材自慢のメニューばかり。『ハムエッグポテトサラダ』『出汁巻き卵』といった親しみやすい一品や、『焼きおにぎり』『本日の味噌汁』などの〆まで揃い、居酒屋さんのようにリラックスして楽しめるはず。
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炭火焼きにすることで、甘さや香り、食感が際立ちます。『ジャンボしいたけ』600円、『まこもだけ』600円、『焼きなす』500円(すべて税抜)
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『刺身3点盛り』1,800円(税抜)。この日は、イワシ、シマアジ、鯛を盛り合わせに
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もちろん、お酒のラインナップも魅力的。日本酒は、通も喉を鳴らすような日本各地の地酒を常時10種類以上も取り揃えています。メニューリストでは『隠し酒』として明記されていないものがあるので、スタッフに相談して好みに合う銘柄を選んでもらうのもオススメ。
小林酒造『鳳凰美田』、中島醸造『バリ酸』、金の井酒造『綿屋倶楽部』など飲み比べしたくなる各地の銘酒。一合900円~
他には、自然派ワインやクラフトビールなど、料理に寄り添うお酒をセレクト。ソフトドリンクも、無添加ジュースや水出し緑茶といった優しい味わいのものがあるので、ノンアル派もご安心を。
どんなシーンにも応えてくれる、下町情緒が散りばめられた〝寛ぎの空間〟
1階は、オープンキッチンの光景も楽しいカウンターと気軽に飲めるスタンディングスペース
【sen】があるのは浅草駅の地上出口からすぐ、通りを渡れば雷門が目に入る抜群のロケーション。からりと戸を引くと、1階はオープンキッチンを目の当たりにするカウンター7席。炭火の焼き台を設えた一角はスタンディングスペースになっていて、香ばしく焼き上がる素材を目で耳で鼻で楽しみながらグラスを傾けることができる、ちょっとした特等席です。
【駒形どぜう】で供されている日本酒、『ふり袖』の仕込み樽がオブジェのように飾られています
2階へ上がる階段の壁面には、大きな酒樽があしらわれています。これは、京都伏見の蔵元『北川本家』で使われていた『ふり袖』の仕込み樽。『ふり袖』は、【駒形どぜう】の五代目がどじょう料理に合うものを全国の蔵元から探し求め、出会った日本酒なのです。もちろん、まろやかな味わいがどんな料理も引き立てると、【sen】にも置かれています。
大きな窓が開放的な2階。通りを臨むカウンターとゆったりとしたテーブル席
2階はゆったりとした空間に、テーブルがメインの全45席。ナチュラルな木と白い壁を基調にしたインテリアはすっきりと明るく、シンプルながら温かみを感じます。ひとりのちょい飲みから寛いだデート、家族や友人と食事に……シーンに合わせて、使い分けできるのが嬉しい2フロアです。
新酒が出来たサインとして、酒蔵で吊るされる杉玉。こちらも『北川本家』から譲り受けたものです
店中に空気のように満ちたもてなしの心。観光地である浅草で食事をしようと思うと、【駒形どぜう】をはじめ、鮨や天ぷら、すき焼きに鰻などの専門店に目が留まります。観光気分を満喫するには、ちょっぴり特別な料理を心ゆくまで堪能したいものですが、普段使いには難しいことも。だからこそ、浅草グルメを一通り経験した人でもほっと寛げるような、日常の食事処として訪れてほしいという思いが【sen】には込められているそうです。そんな思いが伝わってか、カウンターで隣り合わせた外国人ゲストとご近所住まいの常連さんがお酒を酌み交わすこともあるのだとか。
下町らしい居心地の良さで迎えてくれるのは、きっと、200年以上の年月で培われた浅草との結び付きが受け継がれているから。今晩は、肩ひじ張らずに楽しめる、レストラン【sen】でいつものごはんをどうぞ。
取材・文/首藤奈穂(フリーライター) 撮影/岡本裕介
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