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更新日:2019.12.15食トレンド

あの予約困難店の中にレストラン in レストランがオープン!【薫 HIROO】ってどんな店?

二年先まで予約が埋まり、もはやそこで食事をするのはオリンピックのプラチナシート並みの広尾にある隠れ家【長谷川稔】。その二階席に、2019年10月、ひそかにレストラン in レストランがオープンした。20時30分から開店するその名は【薫 HIROO】。"シェフが探し出した国産のピンの食材の旨みを最大限に引き出す"、というコンセプトは【長谷川稔】と同じ。違うのは品数とお値段。綺羅星のごとく上質なワインをおしげもなくグラスであわせ、【長谷川稔】の半額強で食べられると聞いて、どんなお店なのかさっそく取材した。

薫 HIROO

予約困難店だから生まれた、レストランin レストラン

 昨年(2018年)、彗星のごとく現れ、食通羨望の的となった【長谷川稔】。有名店での修業経験を持たず、まったくの独学でダイニングシーンの頂上へ上り詰めたということでも話題になった。出身地の北海道・江別で営んでいた、自身曰く“イケてない”カフェを辞め、人生に一度、死ぬ気で取り組んでみようと、料理書を読み漁り、試行錯誤を繰り返し、独自の世界観を持つ料理で、遠路はるばる来る客をもてなした。【リストランテ薫】と名付けたその店は、口コミで評判になり、念願のミシュランの星を獲得。縁あって広尾へ進出した後の活躍はよく知られるところだ。【薫HIROO】は長谷川氏の原点というべき、思い出の店へのオマージュ。“江別の薫”から、さらなる進化を遂げた“広尾の薫”である。

    ゴールドを基調にした、華やかさとスタイリッシュさを併せ持つテーブルコーディネイト。<br />
オリジナルデザインの木のスマホを立てかけるオブジェがなんとも今どきだ<br />

    ゴールドを基調にした、華やかさとスタイリッシュさを併せ持つテーブルコーディネイト。
    オリジナルデザインの木のスマホを立てかけるオブジェがなんとも今どきだ

素材を生かした独創的な料理は、本家と変わらないクォリティ

 長谷川稔の料理はどの一皿をとっても、素材の良さが際立つ。それは、極上の素材を選び取っているからだけでなく、素材の佳い部分だけをピュアに引き出すことに成功しているからだ。生きている状態の素材のパワーが100だとしたら、いかにその力を減ずることなく料理として一皿に仕上げられるか。そこに心を砕いた結果です、と長谷川氏は言う。魚であれ、肉であれ、野菜であれ、命の断ち方、厨房に届くまでのケア、切り方、火入れ、すべての工程において、素材のダメージを最小限にとどめることに真摯に向き合っている料理なのである。

    前菜の1品。2週間熟成させ、藁焼きにして表面を炙った三浦半島の白かじきと、燻製後に54.5℃で30分火入れた鹿のロース肉の盛り合わせ、タプナードをのせたナスのオーブン焼きと、100℃で1時間ローストしたトマトを添えた

    前菜の1品。2週間熟成させ、藁焼きにして表面を炙った三浦半島の白かじきと、燻製後に54.5℃で30分火入れた鹿のロース肉の盛り合わせ、タプナードをのせたナスのオーブン焼きと、100℃で1時間ローストしたトマトを添えた

しかし、そうしたピンの素材に驚くべき手間をかけた皿が12~13も並んでくると、会計も天井知らずとなる。結果、限られた人だけに門戸の開かれた店になってしまうことに、長谷川氏自身も胸を痛め、その解決策として考えられたのが【薫HIROO】なのだという。料理のクオリティはそのままに、皿数を8~9皿に減らし(うち、一皿はデザート)、起承転結のあるコースに組み立て直し、¥13,000~¥15,000で提供する。

    長谷川稔のスペシャリテの一皿。シンプルににんにくとはまぐりでとっただしであえた冷製パスタ。上に添えた白子は根室産で、59.5℃に熱したかつおだしと醤油の中で15分加熱し、急冷したもの。口中で旨みが爆発する

    長谷川稔のスペシャリテの一皿。シンプルににんにくとはまぐりでとっただしであえた冷製パスタ。上に添えた白子は根室産で、59.5℃に熱したかつおだしと醤油の中で15分加熱し、急冷したもの。口中で旨みが爆発する

お宝ワインに出会える!? 秀逸なペアリング

 ドリンクのペアリングも、これまでのフランスのグランヴァン中心のペアリングだけでなく、さまざまな人に楽しめる3種類を用意。一種類目はイタリアワインも3割ほど、時に南アフリカのワインなども織り交ぜた、ややカジュアルな12,000円のペアリング。2つ目はサロンなどのシャンパーニュで始まり、コルトン・シャルルマーニュなどに続く、グランヴァンを中心に楽しめる30,000円のペアリングを。3つ目は、お酒の飲めない人用に用意した12,000円のティーペアリングだ。これまでの【長谷川稔】のワインペアリングのファンにも、カジュアルに楽しみたい向きにも嬉しい配慮だ。

    群馬の増田牛のヒレ肉のカツレツ。じゃがいもと北海道産のチーズのオーブン焼き添え。牛肉は一度燻製にしたのち、230℃のオーブンに入れては出しを繰り返してゆっくり火入れ。自家製のトンカツソースとタルタルソースで

    群馬の増田牛のヒレ肉のカツレツ。じゃがいもと北海道産のチーズのオーブン焼き添え。牛肉は一度燻製にしたのち、230℃のオーブンに入れては出しを繰り返してゆっくり火入れ。自家製のトンカツソースとタルタルソースで

このワインとのペアリングがまた【薫 HIROO】の楽しみのひとつ。

 白かじきに合わせた「ボルゴ・デル・ティリオ」は、フリウリを代表するフリウラーノ種100%。爽やかさの中にミネラル感が感じられ、軽やかさから複雑さまでのニュアンスが感じられる。「五味を表現した皿なので、ワインにも五味が感じられるものを選びました」

 南フランス・ローヌのコンドリューは、『白子のパスタ』に合わせて。年間2000本と生産量が少なく、白子のトロリとしたテクスチャーにヴィオニエの乳酸系のふくよかな酸味がよく合う。わずかに柚子こしょうを効かせた柑橘系の香りとも相性よし。

 メインディッシュには、しっかりといいワインを合わせる“長谷川稔スタイル”を貫き、牛フィレ肉にはシャンベルタン クロ・ド・ベーズ グランクリュを。香り高く、馥郁たる味わいと、シルキーでなめらかなテクスチャーは柔らかな牛フィレと絶妙の相性だ。

    ある日のペアリングに登場したワインの数々。合わせるグラスは8杯程度。お宝ワインが登場することも

    ある日のペアリングに登場したワインの数々。合わせるグラスは8杯程度。お宝ワインが登場することも

「あくまで主役は料理ですから、いずれのペアリングも、料理に寄りそう流れを大切にしています」というのは、チーフ・ソムリエの花田敬大さん。今後の展開が一層楽しみだ。当面は、知り合いを通して予約をする、会員制レストランのように楽しんでほしいそうだ。

    ソムリエであり、マネージャーとしても店を切り盛りする保木本研太さん(右)「客層の広がりとともに、新たな可能性を楽しみにしています」。ワインのセレクトをメインで担当するチーフ・ソムリエの花田敬大さんをサポート

    ソムリエであり、マネージャーとしても店を切り盛りする保木本研太さん(右)「客層の広がりとともに、新たな可能性を楽しみにしています」。ワインのセレクトをメインで担当するチーフ・ソムリエの花田敬大さんをサポート

【薫 HIROO】

  • 住所:東京都港区南麻布4-5-66 2F
    電話:03-6712-7762
       *予約受付時間11:00~17:00のみ
    営業時間:20:30~(【長谷川稔】の営業時間とは異なります)     
    定休日:火曜・水曜(不定休)
    予約方法:一度【長谷川稔】の予約を取り、来店後シェフに相談を

この記事を作った人

撮影/佐藤顕子 取材・文/小松宏子

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