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2016.09.12食トレンド 連載

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ヒトサラ編集長の編集後記 第5回 【フロリレージュ】~レストランがなくなる日?!

ともすれば、うるさいメッセージかもしれません。でも優れた料理人は、それを美味しさに包んで、わかりやすくわれわれに伝えてくれます(小西克博・ヒトサラ編集長)

 食べながら考える、
あるいは考えながら食べる

 ヒトサラのメインコンテンツである「シェフがオススメするお店」。ここでずっと人気ナンバー1を誇っているのが神宮前にある「フロリレージュ」(川手寛康シェフ)です。4000人以上のシェフの推薦によってナンバー1に選ばれているわけですから、その実力はもちろんのこと、このレストランには今日的テーマが集約しているとも思います。
 
 川手シェフと料理の未来についての話をしたとき、彼はフードロスの問題について触れ、このままではレストランがなくなる日だって来ますよ、と警鐘を鳴らしていました。食料を取り巻く世界的なアンバランスは、料理にかかわる人たちの大きなテーマのようです。

最近のレストランの風景

 さて、そんな川手シェフの率いるフロリレージュですが、ゆったりとしたファッショナブルなビルの地下にあって、中に入ると、広いスペースにコの字型の大きなカウンターで占められています。個室もありますが、基本はこの大きなカウンターで、中に川手シェフ以下スタッフ全員が無駄のない流れで料理をつくっています。

 こういう、いわば舞台のようなつくりは、近ごろのレストランの特徴のひとつで、われわれは、いろんなスタッフの動きを眺めながら食事をとるわけですが、見られているほうは気が抜けなくて大変だろうな、といつも思います。

 今回はディナーで訪れました。黒を基調にしたシックな空間がデザインスタジオかファッション工房かといった趣です。

  • 「継続すべき味」は鰯とへしこのパスタ

  • 「和の風味」アマダイは和風だしで、プイィ・フュイッセと

メニューですが、

・投影 ゴーヤ
・継続すべき味 鰯
・コンフィ すっぽん
・夏の予感 鮎
・サステナビリティ 牛
・ヘテロ 牡蠣
・和の風味 甘鯛
・分かち合う 塊肉
・旬 桃
・異国情緒 マンゴー
・贈り物 アマゾンカカオ

と、11品。
これらにペアリングでお酒が供されます。お酒は、これも最近の傾向なのでしょうが、日本酒が要所に用意されています。

驚きとともに、考える

 すっぽんのコンフィにシェリー酒を合わせ、鮎のリゾットに新政の日本酒古典技法大全をあわせます。そして、牛肉と牡蠣の料理。
 「ヘテロ」と題された牡蠣の料理は、温度差と食感の料理。「エル・ブジ以来の科学的調理法は出尽くした感があります」川手シェフはそういいながらも、これも技の冴える一品で、熱いスープに浸った牡蠣の上には液体窒素に潜らせたレモンメレンゲ。食感も温度差も半端ないメインに、サプライズのピーク。

    「ヘテロ」と題された牡蠣料理

 驚きとともに、食べるということを考えさせられる牛肉。これはサステナビリティと題され、川手シェフの思いがよく表れています。牛肉は、経産牛といって出産を経験した牛。味が劣るとされ廃用牛になったりするものをあえて使います。薄くスライスされスモーク香もあり、そこにキッチンから出たクズ野菜でとったコンソメをかけます。風味のある逸品です。
「あえて、そこまでやるか、とも思うのですが、フードロスの問題に対して自分なりのメッセージを出したかった」という川手シェフ。食料も人間も地球も長持ちさせていくために、料理人ができることは何かといった今日的テーマを、メインディッシュで表現しています。そのあとの分かち合うと題された鶏肉料理にも、塊をともに分け合うメッセージがこめられています。

  • 「サステナビリティ」と題された経産牛

  • 「分かち合う」は鶏肉の塊を分かち合うイメージ

美味しさに包まれたメッセージ

 デザートの最後にはアマゾンのカカオがでてきます。現地に詳しい太田哲雄シェフから取り寄せたもので、紫蘇で包まれています。この美しいデザートにはフェアトレードというメッセージがあります。開発途上国の生産者をサポートし、持続的な生産向上をめざすためには、欠かせないキーワード。それを最後にさりげなく織り込んでいます。

 ともすれば、うるさいメッセージかもしれません。でも優れた料理人は、それを美味しさに包んで、わかりやすくわれわれに伝えてくれます。

    「贈り物」はアマゾンカカオが京都の紫蘇に包まれている

 台北のRAWでコラボしてきたばかりだという川手シェフ。祇園や韓国にも出かけ、料理をつくっています。アジアのベストレストラン50でも、注目のレストランに選ばれたフロリレージュ。今後ますます地球規模での活動が増えていくようですね。

 

この記事を作った人

小西克博(ヒトサラ編集長)