フランス料理のエスプリ香る大人の洋食【洋食ビストロ TŌYAMA】東京・西麻布|ニュースな新店
ハンバーグにメンチカツ、カレー。おいしい洋食は、たまに食べたくなる日本の文化。おいしい洋食激戦区、京都の人気ビストロや有名店でシェフだった人物が、西麻布にちょっと大人の洋食店をオープン。心も体も温まる、行きつけにしたくなる新店を取材した。
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西麻布の裏通りに誕生した、ありそうでなかった“大人の洋食屋”
下ごしらえに手間をかけて定番料理に差をつける
新鮮な食材を使った黒板メニューも見逃せない
西麻布の裏通りに誕生した、ありそうでなかった“大人の洋食屋”
アクセスしづらいロケーションは、時に人の好奇心を掻き立てる。
東京の都心で言えば、西麻布がそうだ。最寄り駅は六本木、広尾、乃木坂あたりだろうが、どこから歩いても10分程度かかる。にもかかわらず、その街は昔も今も大人たちを惹きつけてやまない。
見せかけでない、確かな実力や個性を持ったレストランやバーも多いからだろう。幹線道路の裏手には、「大人の秘密基地」と呼べるような落ち着いた雰囲気の店が点在している。この11月2日、西麻布交差点の裏手にオープンした【洋食ビストロ TŌYAMA】は、まさにそんな風情の一軒だ。
【洋食ビストロ TŌYAMA】の特等席は、シェフの目の前のカウンター。
隠れ家を彷彿とさせる重い木の扉を開けると、そこには8席のカウンターと3卓のテーブルが用意され、どの席からも見渡せるようにオープンキッチンが設えられている。シェフとゲストが直接コミュニケーションを取れる格好だ。
「うちの店では難しいことは一切抜き。肩肘張らずに食事を楽しみ、明日も頑張ろうと思っていただくのが何よりだと考えているので、お客様のご要望にはできるかぎりお応えするつもりです。どうか気軽に話しかけてください。心持ちは洋食屋のオッチャンですから」
そう言って穏やかな笑みを湛えるのは、エグゼクティブ・シェフの遠山忠芳さん。フレンチで修業を積み、洋食の激戦区である京都で腕を磨いた料理人である。彼がこの【洋食ビストロ TŌYAMA】で提供するのは、自身が今まで培ってきたキャリアの集大成。つまり、洋食にフレンチの技法を取り込んだ“大人の洋食”を提供するのだ。
下ごしらえに手間をかけて定番料理に差をつける
ひとまずグランドメニューを受け取ると、「遠山特選デミグラスハンバーグ」というフレーズが目についた。ハンバーグは洋食メニューの代表格だ。それがいかにして“大人の洋食”になるのか気になり、まずはとリクエストしてみることにした。
ソースの色の濃さが印象的な『遠山特製デミグラスソースハンバーグ』2,200円。
美しく黒光りしたデミグラスソースがいかにも旨そうな湯気をゆらゆらと立たせている。
目の前に差し出されたハンバーグは思わず「おぉっ!」と歓喜の声を上げさせる、完璧なビジュアルを持っていた。付け合わせはマッシュポテトのみ。その潔さに、シェフの自信も窺える。はやる気持ちを抑えきれずにナイフとフォークを動かして、ひと切れ口に運んだ。
旨い……。歯応えがあって、なんともジューシーだ。聞けば、ミンチは自家製。その日の肉の状態をきちんと見極め、水分量に応じた挽き目で遠山さん自身が肉を挽くという。外側をしっかりと焼き上げながら、中心にレア感を残す塩梅も見事。フレンチの真髄である火入れの技術が光っている。
エグゼクティブ・シェフの遠山忠芳さん。「フランス料理の命」とも言えるソースを丁寧に仕込むことにこだわる。
ソースにも興味がわいた。まろやかさの中に、何とも言えない上品な酸味が感じられたのだ。子どもの時分には受け付けられなかったのに、大人になると好きになる味というのがあるが、これはまさにその類い。しかも、食べれば食べるほど、また欲しくなる。まさに食欲をそそる味わいだ。
「デミグラスソースは1週間かけて仕込み、そこにシェリービネガーを利かせています。旨みと酸味をマリアージュさせて、奥行きのある味わいに仕上げたつもりです。フランス料理は足し算の料理。調理工程にひと手間加えた洋食で、お客様の記憶に残る存在になりたいと考えています」と遠山シェフ。その語りを聴きながら、ああ、まさに今がその“術中”に嵌められている瞬間なのだなあと、心地良さを覚えたのだった。
デミグラスソースと味わうメンチカツも試したい一品。ミンチはハンバーグと同様に自家製。牛肉と豚肉の配合を微妙に変え、揚げ物ならではのジューシーな味わいが追求されている。
新鮮な食材を使った黒板メニューも見逃せない
遠山シェフが生まれ育った熊本を中心に、九州の旬の食材にありつけるのも、【洋食ビストロ TŌYAMA】の魅力だ。壁に掲げられた黒板には現地から直送された素材で仕立てる日替わりのメニューが並び、客の心を躍らせる。
毎日直送される熊本県産の魚介はフライ、ムニエル、カルパッチョなど、その素材にあった調理法で料理に仕立てられる。
特に惹きつけられたのは、熊本県産の地鶏「天草大王」を使ったタタキ。
「こんなに美味しい鶏肉にはいまだかつて出会ったことがない。そう思えるほどの衝撃を受けました」と遠山シェフ。実際に口にしてみると、その身はやわらかいながらもしっかりとした歯ごたえがあり、噛むほどに口の中で旨みがじゅわりと広がっていった。
思わず目を細めていると、シェフは嬉しそうに携帯を取り出し、天草大王の鶏舎の写真を見せてくれた。そして、それが海に面した斜面で海風を浴びながら育てられていて、海藻類を混ぜた餌を与えられているからミネラルが豊富であるということを、カウンター越しに教えてくれた。そうした店主の気さくさが、ここでの食事をさらに印象深いものにしていく。そんな実感があった。
天草大王のタタキと冬柿を合わせてサラダ仕立てに(2,000円~)。
アラカルトのほかに6,000円からコースが用意されているので、普段使いもしやすい。常連になりたくなる店とは、きっとこの【洋食ビストロ TŌYAMA】のような店のことを言うのだろうと、帰路につく道すがら思わずにはいられなかった。
この記事を作った人
撮影/佐藤顕子 取材・文/甘利美緒
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