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更新日:2020.02.24食トレンド

“タレ焼肉”への原点回帰! 部位ごとにタレを変える焼肉界のレジェンド|【誇味山(こみやま)】乃木坂

焼肉好きの間で知らない人はいないといわれるほどの名店【誇味山(こみやま)】。焼肉界のレジェンドともいわれる込山秀規さんが、西麻布にオープンした“タレ焼肉”を追求するお店です。その魅力を、「肉を糧に生きている」と本人が言い切るほどの肉好きフードライター、小寺慶子さんに紹介してもらいました!

誇味山のタレ焼肉

はじめまして! 肉を糧に生きる肉食系ライターの小寺慶子と申します。趣味はひとり焼肉、強靭な胃袋とフットワークの軽さを武器に日々、肉行脚に励んでおります。

肉を焼いて食べるという調理法は極めてシンプルですが、この十数年で焼肉業界は著しい進歩を遂げました。BSE問題や生肉提供の禁止などさまざまな逆境を乗り越えて、成熟期を迎えた“日本の焼肉”。熟成、赤身、塊etc…。今回は肉食ブームとともに進化し続ける“焼肉の最前線”をご紹介したいと思います。

いい肉こそ“タレ”で食べる時代へ──

「肉の旨みを堪能していただくために、当店では“塩”をおすすめしております」

という内容の文言を、焼肉店で見ることもめずらしくなくなりました。「いい肉は塩で食べる」という考えが広まった背景には赤身肉ブームや世の中のヘルシー志向が高まったことが一因として考えられますが、果たして、「塩で食べる=肉の旨みを最大限に堪能できる」ということに直結するかといえば、一概にそうだとは言いきれません。

焼肉店のタレは鰻屋や焼鳥屋のそれと同様に、店の個性やセンスを表すもの。

余談ではありますが、家庭用の焼肉タレが一般家庭に普及したのは高度成長期(昭和29年~ ←ニク!!)頃といわれており、日本人の焼肉の歴史は、タレとともにあったといっても過言ではありません。塩で食べる焼肉もひとつの形ではあるけれど、もう一度タレの魅力を広めたいと一念発起したのが、焼肉好きのあいだでは知らなければもぐりといわれるほどのレジェンド、込山秀規さんです。

焼肉のトレンドメーカーが“タレ焼肉”に行き着いた理由

    数々の名店を世に生み出してきた焼肉界のレジェンド、込山秀規さん

    数々の名店を世に生み出してきた焼肉界のレジェンド、込山秀規さん

込山さんといえば、用賀の焼肉店【ら、ぼうふ(La Bouef)】を一躍人気店にした立役者。込山さんの行く道に焼肉のネクストトレンドあり、といわれるほどの先見の明の持ち主です。いまから10年以上前に1頭買いの牛肉を厚切りカットで提供、タンだけで7種の部位を切り分けるなど、卓越した技術と知識で新しい焼肉の価値観を生み出し続けてきました。

その後に立ち上げた【コソット(Cossott'e)】では、当時の焼肉店にしてはめずらしいカウンターを導入。肉に精通した職人の仕事を間近に感じられる店はたちまち人気を集め、麻布十番にも店舗【コソット エスピー(Cossott'e sp)】を構えました。

その込山さんが充電期間を経てタレに注力した焼肉店を始めるという噂がささやかれたのは2018年の暮れのこと。込山さんの新店を心待ちにしていた焼肉好きにとって、これは青天の霹靂ともいうべき大ニュースでした。その新店がオープンと同時に瞬く間に予約困難店となった理由は、込山さんの宣言通り、タレを追求した焼肉の新しさ、おいしさにありました。

“タレ焼肉”の可能性を追求する【誇味山(こみやま)】/西麻布

    誇味山のカウンター席

    2019年1月にオープンし、焼肉好きの話題をさらった込山さんの新店舗【誇味山】

「肉の部位を多く揃える焼肉店が増えた今、タレにはもっと可能性があるに違いない」と直観的に思ったのは、やはり和牛を熟知する込山さんだからこそ。かくして西麻布にオープンした【誇味山(こみやま)】は、メニューがないセミオーダー感覚の焼肉店。ゲストの要望を聞きつつ、ベストな状態の肉だけをその場でカットし提供するというスタイルは、込山さんの「一番おいしい肉だけを食べてもらいたい」という思いのあらわれです。

    誇味山のタン元とタレタン

    左から、厚みのある『タン元』、タンをタレで食べる『タレタン』

「部位はもちろんカットによっても合うタレは変わってくる」とベースのタレの味も少しずつチェンジ。塩レモンで食べるイメージが定着している『タン』も込山レシピのタレで食べるとミルキーな脂との相乗効果で未体験の美味しさに。サクッと軽快な食感のあとに口中に弾けるような旨みが一気に広がり、それをタレがコーティングすることで風味の余韻がより長く続きます。宝石のようなタレの輝きをまとった肉を込山さんやスタッフが丁寧に焼いてくれるというのも贅沢。

    肉を焼く込山さん

    肉をベストな状態で食べられるよう、込山さんやスタッフさんが焼いてくれる

淡い甘みが特徴的な『カイノミ』には胡椒をきかせたタレを、旨み濃厚な『ハラミ』は甘さを抑えて七味を加えタレを合わせるなど、そのバリエーションの豊かさ、肉との相性のよさに驚くばかりです。

    誇味山のハラミと肩ロースとヒレミミ

    左から、『ハラミ』、『肩ロース』、『ヒレミミ』。肉の部位によってタレの味付けを変えている

銘柄は特定せず、全幅の信頼を置く吉澤畜産から仕入れるとびきりの和牛を確かな手仕事でおいしさの極致へ。おまかせコースの合間に登場する極厚の『シャトーブリアンサンド』や『黒毛和牛肉茶漬け』にも込山さんのレジェンドたる所以を感じることができます。

    誇味山のカツサンド

    シャトーブリアンを贅沢にもカツサンドに仕上げた『シャトーブリアンサンド』

ひと口サイズの『シャトーブリアンサンド』は厚切りながら歯ですっとかみ切れる柔らかさ。熱々の出汁をかけていただく『肉茶漬け』はサーロインの上品な脂が出汁にとけだした至福の味わいを堪能することができます。

それぞれの部位の風味の特性を見極め、個性をより引きたてるタレを合わせることこそが、込山さんの仕事の真骨頂。白米との相性も言わずもがなですが、豊富に揃える日本酒とともに焼肉を堪能するのもおすすめです。ふくよかな旨みを持つ日本酒と繊細な味わいのタレを纏った焼肉の相性のよさに陶然とすること間違いなし。

焼肉の新たな楽しみ、おいしさを求めて【誇味山】でタレに原点回帰をしてみてはいかがでしょうか。

この記事を作った人

小寺 慶子(フードライター)

ファッション誌、レストラン誌などの編集を経て、フリーのライターに。フットワークの軽さと強靭な胃袋を武器に、国内外の“肉旅”に奔走する日々。肉を糧に生きるライターとして、さまざまな雑誌やwebで執筆中。

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