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更新日:2021.01.22食トレンド

鎌倉の人気日本料理店が東京に移転! 東京・虎ノ門【空花】|ニュースな新店

ミシュラン三つ星の日本料理店【かんだ】で修業した女性シェフが作る優しい日本料理が人気だった鎌倉【空花】。都内から通うファンの声もあり、2020年10月、満を時して東京は虎ノ門に移転オープン。以前から使ってる相模湾直送の鮮魚を使い、女性らしいたおやかな日本料理に早くも新たなリピータが増えている。

空花の炊き込みご飯

女性料理人ならではの感性が光る温かな日本料理

    カウンター6席のほか、2名〜6名まで入れる個室もある。季節の花を飾った釣り花瓶がさりげなく壁を飾る。<br />

    カウンター6席のほか、2名〜6名まで入れる個室もある。季節の花を飾った釣り花瓶がさりげなく壁を飾る。

「もっと自然を大切にしたい。」

そんな思いから、名付けた店名が【空花】。宮崎県は都城に生まれ、田んぼや畑に囲まれて育った女性オーナー料理長の脇元かな子さんらしいネーミングだ。昨年10月、鎌倉から神谷町に移転。まだ新しいビルの一階、入り口の白い暖簾をくぐれば、そこは、京壁が落ち着いた趣を醸し出すこじんまりとした空間。タモ材のカウンターの奥にはお茶釜が置かれ、茶室を思わせる静穏な空気に、心もほっと和んでくるようだ。

    手前からノドグロやさより、サザエなど三浦半島・佐島漁港直送の魚介類と天城の本山葵。店の料理の要だ。<br />

    手前からノドグロやさより、サザエなど三浦半島・佐島漁港直送の魚介類と天城の本山葵。店の料理の要だ。

「その時期に、お客様が食べたいと思うであろう食材を取り入れつつ、味付けが重ならないよう気を付けて献立を組み立てています」。穏やかな笑みを浮かべ、そう語る脇元さん。その笑顔に出会うたび、料理は人柄だとつくづく思う。そう、コースに並ぶ一皿一皿には、物腰柔らかな彼女の人となりそのままに、どこかほのぼのとした温かさが漂う。どうだ! と言わんばかりに切り込むシャープな味ではなく、心をほんわりと包み込むかのような慈しみが溢れているのだ。

    『蓮根餅のお椀』。料理は全て15,000円のお任せコースから。蓮根餅は、でんぷん質のつなぎは使わず、通常の蓮根よりも粘り気の強い加賀蓮根を使い、自然なもっちり感を出している。

    『蓮根餅のお椀』。料理は全て15,000円のお任せコースから。蓮根餅は、でんぷん質のつなぎは使わず、通常の蓮根よりも粘り気の強い加賀蓮根を使い、自然なもっちり感を出している。

それでいて、シンプルな美しさがある。

例えば、和食の要と言われる煮物椀。この季節、コースには秋冬が旬の加賀蓮根を使った“蓮根餅のお椀”登場。塗りのお椀の蓋を開ければ、そこにはスクエア状の蓮根餅に、上には炭火で焼いた椎茸とバチコ、そして木の芽のみの潔さ。真昆布と本枯節でとる出汁は、たおやかな香りを漂わせつつ最初は凛とした味わいが舌に広がる。続けて揚げた蓮根の香ばしさやあまみ、バチコの塩味が出汁と交錯しつつ、優しい余韻へと旨味を運んでいく。

脇元さんによれば「今日のお椀は野菜が主役なので、醤油を隠し味程度に入れましたが、蟹真薯など魚貝系の椀種の時は、塩で味付けしています。」とのこと。そうしたさりげない心遣いが、シンプルさの中の真味を引立てているのだろう。そこには、師匠である神田裕行氏の薫陶がある。

鎌倉でみつけた相模湾の恵をスペシャリテに

    店主の脇元かな子さん。鎌倉の【茶房 空花】と、虎ノ門【空花】2店をオーナーシェフとして切り盛りする。

    店主の脇元かな子さん。鎌倉の【茶房 空花】と、虎ノ門【空花】2店をオーナーシェフとして切り盛りする。

そう、脇元さんは、あのミシュランの三つ星を14年にわたり取り続ける元麻布【かんだ】で約7年、研鑽を積んだ経験を持つ。神田さんからは、素材を生かし切ること、おいしさの本質とは何かを真摯に考える姿勢を教わった」そうで、いたずらに食材を重ね合わすのではなく、何を食べさせたいのか、何を食べているか、がはっきり分かる料理が脇元料理のキーワードだ。

さて、その神田氏折紙付きのシグネチャーメニューが、“サザエの揚げ物”だ。

    『サザエの揚げもの』。「三浦半島のサザエは、身が痩せていることがなく、ハズレが少ないことも気に入っています。」とは脇元さん。ともすれば身が硬くなりがちな貝を、上手く揚げている。<br />

    『サザエの揚げもの』。「三浦半島のサザエは、身が痩せていることがなく、ハズレが少ないことも気に入っています。」とは脇元さん。ともすれば身が硬くなりがちな貝を、上手く揚げている。

鎌倉でお店をやっている頃、目の前の海で採れるたくさんのサザエを見て思いついた一品だそうで、大振りのサザエを丸ごと一個用いた豪快さもさることながら、一口食べて目を見張るのは食感の軽快さ!

200°近い高温で、少量づつさっと揚げるタイミングがコツだそうで、さくっと歯が入る柔らかさの中、程よい弾力を残した揚げ加減は絶妙。ビールを加えてサク感を持続させた衣には、更にサザエの肝をほんの少しだけ加え、僅かに風味を纏わせている。こうした緻密な味への心配りこそ、神田氏から学んだ素材を生かし切る姿勢に他ならない。

様々な経験を生かしたゲストを楽しませる趣向

    ある日のコースの締めの、『ホッキ貝と花山葵の炊き込みご飯』

    ある日のコースの締めの、『ホッキ貝と花山葵の炊き込みご飯』

サザエのほか、金目鯛やしらす、ノドグロなど魚介は、佐島など、相模湾から届くものも多く、八寸や焼き物、締めのご飯などコースの料理を彩っている。

ちなみに締めのご飯は、写真のホッキ貝と花山葵の炊き込みご飯のほか、いくらご飯やカラスミとしらすのご飯、金目鯛の煮付けと白ご飯etc.豊富に揃う中から好みを選べるスタイル。

お米は、【アメコヤ厨房】の料理長時代、いろいろ試食した中から、長野県のオリジナル米“風さやか”を使用。旨味はありつつもさっぱりとした食べ口は、いずれの具材にも違和感なくフィットする。冷めてもおいしい米だ。

    デザート4種。手前左から時計回りに、『白玉黄粉小豆栗添え』、『フルーツのゼリー寄せ』、『酒粕のチーズケーキ』、『アイス最中』。アイスは、イチゴミルク、甘酒、ほうじ茶、生姜の中から選べる。

    デザート4種。手前左から時計回りに、『白玉黄粉小豆栗添え』、『フルーツのゼリー寄せ』、『酒粕のチーズケーキ』、『アイス最中』。アイスは、イチゴミルク、甘酒、ほうじ茶、生姜の中から選べる。

食後には、4種類が揃うデザートからお好きなものを2種選べるサービスが掉尾(ちょうび)を飾る。姉妹店、鎌倉の【茶房 空花】で人気のデザートが登場することも。

最後まで女性らしいおもてなしの心が静かに感じられる一軒だろう。この満足度で15000円。予約が取れなくなる前に出かけたい。

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平均予算:ランチコース6,000円、ディナーコース15,000円


※緊急事態宣言により、営業時間が変更されている可能性があります。最新の営業時間はお店に直接お問い合わせください。

この記事を作った人

撮影/岡本 裕介 取材・文/森脇慶子

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