ヒトサラマガジンとは RSS

更新日:2021.04.11食トレンド

絶景を楽しみ、珠玉のカクテルを味わう、二つの顔をもつ話題のバー|【K36 The Bar & Rooftop】京都

2020年3月に誕生した【ザ・ホテル青龍 京都清水】の最上階に作られたバーが、いま京都で最も美しい景色が見られるバーとして注目を集めています。ロマンチックな夜景を楽しめる屋上テラスのバー【K36 Rooftop】と京都の伝説的バーテンダー西田さんがつくる最高の一杯を味わえるメインバー【K36 The Bar】。京都に来たならば必ず訪れたくなる、最高の時間を演出してくれる2つの顔をもつバーを紹介します。

K36

360度京景色が見渡せるルーフトップバー

清水寺や法観寺、八坂の塔のほど近くにある、今から80余年ほど前に建てられた清水小学校の校舎。その校舎をコンバージョンして誕生したホテルが、2020年3月に開業した【ザ・ホテル青龍 京都清水】です。

アプローチを抜けると、レトロモダンな雰囲気が漂い、廊下からはどことなく懐かしい小学校の香りが漂ってきます。少しノスタルジック気分に浸りながら4階でエレベーターを降りて歩を進めると、思わず「あっ」と息をのむほど美しい光景が広がる屋上テラスに。

    K36 Rooftop内観

    夜景も美しいですが、景色を見渡したいときは明るい時間帯がおすすめ

まず目に入るのは、すぐそばにある法観寺の五重の塔、通称・八坂の塔です。下から見上げるのとは違い、真横から見るその美しい姿は本当に見とれるばかり。その奥には京都の美しい街並みが広がり、それを取り囲むように山々が連なります。その中には左大文字山の「大」の字も。

さらに見渡していくと左手には京都タワーがそびえ、振り返ると清水寺と東山の峰々までも見渡すことができます。まさに360度の大絶景。京都といえども、ここまで京都らしい京都の風景を一望できるところはそうはありません。

    K36 Rooftop内観

    テラス中央にあるカウンターのほか、ゆったりとしたソファ席や眺めのいいハイチェアのテーブル席もあります

その美しい景色ともう一つ、このバーには欠かせないもことがあります。それはなんと京都の伝説的バーテンダーと言われる、西田 稔さんをバトラーとして招いたことです。どのカクテルもこのバーでしか飲めないオリジナルレシピ。その日の気分で飲みたいものを頼むのももちろんいいですが、まずは西田さんの代名詞とも言われるジントニックを味わってみてください。

    西田稔氏

    バー文化が根付く京都で【K6】や【カーヴ・ド・ケイ】、【バー ケラー】などの名バーを作ってきた京都を代表するバーテンダー・西田 稔さん。そのカクテルを飲むために京都を訪れる方もいるほど、全国にファンを持つ

様々なバーを作ってきた西田さんですが、ルーフトップバーは今回が初めて。メインバーでは感じることができない季節感を思う存分に出したかったと言います。

「春から初夏にかけては夕日がとてもきれいに見えるんです。その夕日に合わせてロゼワインやロゼシャンパンのフェアを行ったり、太陽の光に照らされたカクテルは夜のバーとは全然色も雰囲気も異なってくる。これからは、そんな太陽や夕日を感じられる飲み物も作っていきたいです」。

    K36ジン トニック

    ルーフトップスタイルの【K36ジントニック】(1,320円・税込)。爽やかな風が吹き抜けるテラスにぴったりなカクテルです

「東山の中腹に建つホテルなので、この屋上は建物の4階にあたるのですが、街中では15階から18階ぐらいの高さになります。遮るものもなく360度見渡せるのですごくいい風が吹くんです。それに、京都では西日を嫌うので、西側に窓がない建物が多い。でも、ここなら夕日の沈む西側をゆっくりと眺めることができます。京都でも数少ない珍しい場所なので、京都人も見たいと思う京都の景色が広がるんです」と西田さんがいうように、ルーフトップで最も楽しいのが、刻々と時間によって変わるその色や景色です。そんな時間をゆったりとお酒と共に味わってほしいという想いから、お酒だけでなく、料理も充実しているのがこのバーのうれしいところです。

軽いおつまみとお酒を楽しむもよし、しっかりとした肉料理でディナーを楽しむもよし、さまざまな使い方で思い思いの時間を過ごすことできます。

    K36 「京もち豚のローストポーク 新玉葱ロースト」

    『京もち豚のローストポーク 新玉葱ロースト』(1,980円・税込)。低温で4時間ローストすることで柔らかくモチモチの食感に

    K36「生ウニとカンパーニュ」

    『生ウニとカンパーニュ』(1,650円・税込)。ホテルの敷地内にある、アラン・デュカスがプロデュースするレストラン【ブノワ 京都】で焼いたカンパーニュに、生ウニとバターをたっぷりとのせて

カクテルの学びの場でもあってほしい、そんな想いが込められたメインバー

これまではルーフトップバー【K36 Rooftop】を見てきましたが、このバーのもう一つの面白い顔が、華やかなルーフトップバーとは趣も全く異なる、オーセンティックなメインバー【K36 The Bar】が存在しているということです。そこは、39年間バーテンダーとして活躍してきた西田さんの想いが詰まった、まさに集大成とでもいうべきバーです。

    k36

    元教室だった場所を改装して作られたメインバー。正面にはバーの顔であるカウンター、壁には教室ならではの大きな窓があり、カウンターに座って振り向いたときに見える京都の景色が印象的

「ここは元々、清水小学校という学びの場。この小学校ができて150年、この鉄筋の校舎が建ってからは80余年なんです。それはカクテルの歴史とほぼ同じ。カクテルは150年ちょっと前に誕生して、アメリカで1920年に施行された禁酒令のときに急激に進化したんです。トマトジュースのふりをしてブラッディーマリーを飲んだり、オレンジジュースのふりをしてスクリュードライバーを飲んだりという風に。だからこそ、カクテルが学べる場所にしたかった」と西田さん。

今回バーを作るにあたって、オリジナルカクテルはほぼ出さないようにしています。どのカクテルもオーセンティックなスタンダードカクテルと言われるものばかりですが、そのほとんどすべてのカクテルがこのホテルのバーのためだけに作られたオリジナルのレシピです。

「昔の人が編み出したレシピを踏まえつつ、今この時点でどうすれば一番おいしくなるかを考えたここだけでしか飲むことができない一杯です」。

    k36 西田稔氏

    【K36 The Bar】は、【K36 Rooftop】とは雰囲気を変え、同じカクテルであってもそのレシピは異なるこだわり

西田さんの作り出すカクテルを眺めていて感じるのが、ひとつひとつの所作の美しさ。丁寧に作られたそのカクテルがなんとも凛々しいこと。そして穏やかな語り口。バーテンダー・西田さんが作り出すその空間がなんとも居心地がいいんです。

「元小学校ですので、カクテルに馴染みのない、カクテル小学生の方も気負いすることなく来ていただきたいです。そのためにここの教科書とでもいうべき持ち帰ることのできるメニュー表も用意しています。カクテル初心者の方から上級者の方まで、また一つのカクテルを追い続けている人達までもが学びの場と思っていただけるような、そんなバーにしたいです」と朗らかな笑顔を見せる西田さんがなんとも印象的でした。

    k36「春の訪れ」「レオナルド」「K36 ジン トニック」

    右:桜餅の風味を感じさせるズブロッカを使った桜色のカクテル『春の訪れ』(1,650円・税込)、中央:バーの顔ともいうべき『K36 ジントニック』(1,650円・税込)、左:旬のイチゴとシャンパンなどで作られる『レオナルド』(3,300円・税込)

    K36 メニュー

    メインバーに用意された持ち帰ることのできるメニュー表。カクテルひとつずつに材料や世界共通のカクテル言葉も記されています。「ここにメモをしたり、カクテル言葉と今の気分を合併せたカクテルを頼んだり、思い思いの使い方で楽しんでください」と西田さん

伝説的バーテンダーが作り出す、珠玉のジントニック

“バーテンダー・西田 稔と言えば、ジントニック”と言われるほど、それは西田さんにとって欠かすことのできないカクテル。ジンとトニックを合わせただけの誰にでも簡単に作れてしまう単純なカクテルではありますが、西田さんが作り出すそれは全く別の味わい、香りが漂います。

ジントニックは、そのバーやバーテンダーのお酒に対する想いがいちばん現れるカクテルだと西田さんは言います。家で作るとなれば気を付ける項目はせいぜい10個程度、それがバーテンダーとしてつくるとなるとチェック項目は100個ほどにもなるそう。家で簡単に作ることもできるけど、バーにわざわざ来て飲む価値のあるカクテルがジントニック。だからこそ、そのバーでしか飲むことができない味わいになると言います。

    K36「ジントニック」

    氷の大きさや使うグラス、大きさや重さまでも考えつくされたオリジナル『K36 ジントニック』(1,650円・税込)

美しいカットグラスの中には大き目の氷が一つとその下にライムが一枚。きめ細やかな炭酸の泡が清々しい一杯です。「ジントニックで大切なのが清涼感。ここに今回一番重点を置きました。氷とライムで炭酸が逃げるのを極力カットし、最後の一滴まで香りと清々しさを楽しんでいただきたい」。最後の一滴までという西田さんの言葉通り、隅々にまで神経が行き届いています。

グラスは旅や仕事で疲れた人でも心地よく飲める重さに、厚みも口につけた時に自然とフィットするようにオリジナルで作成。そして、そのグラスの径に合わせてカットされた、ジントニック専用の氷を使用。ジンもこのカクテルのためだけに3種類をブレンド。「季の美」と「六」という日本のジンをベースにそこにロンドンドライジンを加えることで、日本のジンのボタニカルがより豊かに華開いたと言います。

    k36ドリンク

    「季の美」のK、「No.3ロンドン ドライジン」の3、「六」の6、3種のジンを合わせると店名の【K36】となる

ジンの豊かなボタニカルを弾けさせる炭酸を、最後の一滴まで残すために考案されたのが氷とライムで蓋をするスタイル。見た目に派手さはありませんが、バーテンダーの想いが隅々までつまっています。「3年後、5年後、いうならば20年後に再びこのバーを訪れてジントニックを飲んだ時、“あー帰ってきたな”と思ってもらえるような心に残る一杯を作りたい」と西田さん。

ジントニックを飲みながら、ふとカウンターを振り返った時に目に飛び込んでくる京都の美しい景色は、決して忘れることのできない思い出になるはずです。そんな豊かな時の流れをこのバーは与えてくれる、そんな気がしました。

この記事を作った人

取材・文/楠井祐介(フリーライター) 撮影/吉田祥平

この記事に関連するエリア・タグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(12/1~12/7)

エリアから探す