<閉店>中華の巨匠・脇屋友詞氏が渋谷で仕掛ける、“ドット”がコンセプトの町中華【dots】とは?
【Wakiya 一笑美茶樓】、【Wakiya迎賓茶樓】、【トゥーランドット臥龍居】のオーナーシェフ、脇屋友詞氏。そんな巨匠が携わる新店【dots】が渋谷・金王神社近くに誕生しました。コンセプトは“ドット”。模様と中国料理の間に一体どんな関係があるのでしょうか?
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コース仕立ての町中華
中華ならではなワイン&紹興酒のペアリング
【dots】のこれから
派手な門構えとギャップのある落ち着いた店内
金王八幡宮が鎮座する歴史ある場所柄か、渋谷駅の近くでありながら都会の喧騒から解放された地。大鳥居の近くのビルに目を向けると、一際異彩を放つインパクトたっぷりな黄色い壁の中国料理店があります。それこそ2021年4月にオープンしたばかりの【dots】です。
壁面はもちろん、黄色く色づいたガラスをはめるなど一貫した世界観を見せる門構え
その店先に立つと存在感に圧倒されます。黄一色の壁面に、お店のコンセプトであるドットを黒で落とし込んだ門構え。一体どんなお店なのだろう?中まで真っ黄色だったらどうしよう?などいろんな疑問が頭をよぎりました。
外観からは一転、店内は落ち着いた雰囲気
いざ扉を開け中に入るといろいろ身構えていたものが全て杞憂に終わります。壁や天井は無機質で落ち着きのあるインダストリアルな雰囲気。一方でテーブルやイスなどのファニチャーには伝統的な中華料理屋のアットホームな調度が揃えられ、スタイリッシュな空間に仕上がっています。
さて、外観と内観で大きなギャップのあるdotsではどのような料理を食べられるのでしょうか?
コース仕立ての町中華
【dots】のメニューは単一のコース料理のみ。しかも要予約制となっています。日本の中国料理の権威である脇屋友詞氏がプロデュースするお店で、要予約のコース料理を提供する中国料理店。なんて聞くと肩肘張ってしまうところですが、【dots】の目指すところはコース料理のクオリティを持った「町中華」です。ちょっと気取ってるけど、どんな人でもお腹いっぱい美味しい中国料理を食べられる、そんな新しいカタチの町中華を目指しているのです。
脇屋氏が全幅の信頼を置く【dots】の料理長の平賀氏
【dots】の料理長を務めるのは平賀大輔さん。脇屋氏の下で料理人としてのキャリアをスタートさせ、22年の経歴を持つベテランです。そんな平賀さんが脇屋氏と共に考案したメニューやレシピから【dots】の味を創生。さらにその脇を同じくWakiyaグループの若き2人の料理人で固め、盤石の3人体制で【dots】のスタイルを創り出します。
ドットに見立てた9枚の黒い小皿にのる『9皿の前菜』
マットな質感の黒い小皿が料理の彩りを引き立て鮮やかにしてくれる
コース料理の最初の一品となる9枚の小皿に盛られたアラカルト。その料理の詳細は、
右上:蕗味噌のソースを載せた胡麻豆腐
右中:山椒油と塩で味を整え、セリをのせた押し豆腐
右下:山椒油で和えたセロリと黒酢にひたしたクラゲの頭
中上:炊いた油揚げと筍と干し椎茸の湯葉巻き
中中:生の紅芯大根と砂糖醤油に漬けた大根のスライスに、甘酢に漬けた刻み大根をのせたもの
中下:粗くすり潰したそら豆を再び固め、塩漬け卵黄をまぶした豆板層
左上:特製のラー油がかかったよだれ鶏
左中:大豆の醤油煮の上にのった甘くジューシーなチャーシュー
左下:絹どうふに刻んだザーサイと白醤油に漬けた生姜の刻みとピータンの卵白を混ぜ、ピータンの卵黄ソースをのせたもの
以上の9品のラインナップとなっています。
辛いものや甘いもの、定番ものや季節もの、箸休めなど。さまざまな味が集まっていて、口に入れる順番や組み合わせによっていろんな味わいを楽しむことができます。またドットに見立てた9枚の黒い小皿に盛り付けることで、彩りを引き立て目にも楽しい料理に仕上がっています。
凍頂烏龍茶で蒸しあげる『特大蒸籠』
続いて紹介したいのが、テーブルに載せるとスペースのほとんどを占めてしまうほど巨大な蒸籠を使った蒸し料理です。料理の仕上げは各テーブルの上で行われ演出の派手さもさることながら、蒸しあげる蒸気の薫りが食欲をそそります。
鍋の上に置かれた蒸籠とガラスのティーポットに入った台湾烏龍茶
蒸籠に入る食材は鹿児島産の白姫海老を筆頭にいすみの契約農家から直接購入しているという新鮮な11種の野菜(2色のからし菜、空豆の脇芽、カブの葉、水菜、ベビーニンジン、スナップエンドウの蕾、ほうれん草、筍、ルッコラ、新玉ねぎ、黄色ズッキーニ)。見た目も美しく、ボリュームミーながらヘルシーな食材がふんだんに使われています。
中央に鎮座する小壺には特製のタレと合わせた食材が入っている
中央の小壺には木綿豆腐、牡蠣、そしてそれぞれ丁寧に下処理が施されたハチノス、砂肝、大腸のホルモン串が特製の麻辣タレに漬けられています。海鮮をバランスよく取り入れた上海料理をベースとする【dots】らしい食材が使われています。
凍頂烏龍茶を注いだ瞬間に蒸気があがる
蒸籠の下には焼き石が置かれており、台湾烏龍茶を注ぐと瞬時に蒸気を発し始めます。このまま蓋をして2分ほど蒸しあげます。
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凍頂烏龍茶を注ぎ、蓋をしたら2分ほど蒸しあげる
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蓋を開けると同時に溢れ出す蒸気とともに、凍頂烏龍茶の気高くも甘い薫りが辺り一面に広がる
蒸しあがり蒸籠の蓋を開けると中に残った凍頂烏龍茶の蒸気が溢れ出て、柔らかく香ばしい薫りが辺り一面に広がります。海老とズッキーニが鮮やかに色づき、葉物の緑も深みを増し目にも美しい料理に仕上がっています。
多角的に食欲を刺激してくる蒸籠料理
小壺の中身に目を移すと串のホルモンにはタレが染み渡り、牡蠣もまたぷっくり瑞々しく膨れるなど、蓋を上げたその瞬間から視覚も嗅覚も多角的に刺激され食欲が一気に高まります。脇に添えられた醤油漬したニンニクと赤唐辛子の黒酢ソースかネギとニラを山椒で風味付けした薬味と一緒にいただきます。
タレや薬味も含めると20以上の食材が使われた蒸籠料理は、口の中でいろんな味がハジけます。先の前菜同様に食べ合わせやソースを変えるだけで、一口ごとに違う料理を食べているかのような錯覚も。しかし最終的に鼻を抜ける甘みのある凍頂烏龍茶の香りが、ひとつの料理としてのまとまりをしっかりと作ってくれるのです。
平賀さんは店名である【dots】について「ドットの集合ということで“集まる”というのもひとつのキーワードです」と語ります。この蒸籠料理が見せる通り多種多様な食材の足し算こそ【dots】の大きな魅力のひとつなのです。
コース料理の締めとなる腕白な『東坡肉』
前菜と特大蒸籠ですでに満足感でいっぱいですが、この日のコースのメインがまだ控えています。それが『東坡肉(トンポーロー)』。平賀さん曰く「要は豚の角煮です(笑)」とのこと。
肉厚な沖縄県産の皮付き豚バラ肉を使った『東坡肉』
「沖縄県産の皮付き豚バラ肉を使っています。皮付きにすると照りが強くなるのと皮の部分にも味が染み渡るのでより美味しく仕上がります。さっぱりさせたりまろやかにさせたり味の変化を楽しんでもらいたく、あえてタレで煮込んでいない卵と大根を添えています。最終的にはご飯を入れて、タレもお肉も大根も卵も全部混ぜて豪快に食べてもらえたらと思っています」
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提供時はご飯と薬味が添えられる。紹興酒は別オーダー
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白米は一人前ずつ炊き上げられ、そのままの容器で提供される
料理とともにこだわっているというのがこちらのご飯。北海道産の米を使用し、一人前ずつ少し硬めに炊き上げられています。ツヤツヤでもっちりとしたご飯が甘く柔らかい豚肉と好相性。タレともよく絡むので、気が付くとお椀を片手に口の中にご飯を掻き込んでいます。お腹が膨れていてもあっという間に平らげてしまいました。
近年人気の中国料理+ワイン&紹興酒のペアリングもあり
dotsはシェフが自ら厳選したワインと紹興酒が揃っています。ペアリングをお願いするとその日の料理にあったワインを選び提供してくれます。
シェフ厳選のワイン各種
近年人気で徐々に実施店舗も増えている中国料理+ワインのペアリング。【dots】は中国料理ならではの紹興酒も交えてペアリングしてくれます。シェフ厳選のワイン&紹興酒はいずれも絶妙に中国料理の力強い味わいを引き立て、中国料理の新しい一面を知ることができます。
またアルコールが飲めないって方にはなんと中国茶のペアリングもあり。こちらもプロの目と舌で選び抜かれた絶妙な味わい。【dots】ならではの運転の方やノンアル党の方にも嬉しいサービスです。
dotsのこれからについて
壁に飾られたドットを使った【dots】のロゴプレート
まだまだ新型コロナウイルスの勢いが衰えない苦難な時期に開店を迎えたdotsですが、これからどのような動きを見せてくれるのでしょうか?平賀さんに伺いました。
「スタートを切ったばかりのお店なのでいろんな方向性に可能性を感じています。とりあえず現在は予約のお客様が中心ですが、もっといろんなお客様に知っていただき食べていただけたらなとは思っています。具体的に考えているのはドットが点心の点も表現しているので、点心の提供とかを考えています」
まだまだ始まったばかりのdots。これからたくさんのdotsならではの料理が生まれ、そこに人が集まり、点が線となりいろんな可能性に繋がっていくことでしょう。
撮影/烏頭尾拓磨 取材・文/岡本546(フリーライター)
アウトドア雑誌・WEBメディアを中心に、企画立案から撮影や執筆までこなすマルチエディター。四十路に近づき落ち着きある大人の食事に憧れるが、服・キャプギア・クルマの整備に浪費する日々のため憧れのままで終わっている。
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