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更新日:2022.08.08連載

横浜【SMOKE DOOR(スモーク・ドア)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第42回

熾火料理の新しいお店【SMOKE DOOR(スモーク・ドア)】が横浜にオープンしたので出かけてきました。それもシェフがこのジャンルでミシュラン三つ星を獲得しているサンフランシスコ【Saison(セゾン)】のタイラー・バージズさんとなれば、行かない手はありません。

スモークドアの料理

シンプルだが奥深い熾火料理

【SMOKE DOOR】は「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」の1階にあって風通しのよいカフェ風のお店です。入口のカウンターでアペリティフをいただいてから席につきました。目の前には大きな焼き台があって、薪が積まれています。いい感じのライブ感があります。

  • スモークドアの内観

  • スモークドアの内観

シェフがあえて薪火にこだわるのは、食材ひとつひとつ丁寧に細かく火を調整し、そこから最大限のおいしさを引きだせるからだと。シンプルな調理法ゆえ、深く高度な技術が要求されるのもこの料理の魅力でしょう。そのなかでもとくにシェフは「熾火」にこだわります。

熾火とは薪の芯の部分が真っ赤になっている状態のことで、この遠赤外線の力を巧みに利用して食材の脂や水分を落とし、それが火に落ちることで上がる煙で薫香を付けるのです。原始的な方法ではありましょうが、だからこそ、それを街の真ん中で味わわせてくれるお店は貴重なのです。

    スモークドアの料理

今回はディナーで提供される代表的なメニューを数種類いただきました。

ケールの葉っぱを焼いたチップスから始まり、アボカドのトーストが登場。とても美しいトーストで、自家製のカンパーニュをたまり醤油、焦がしバターにつけカリっと焼いたものの上にスモークしたアボカドが乗せられ、ミントがあしらわれています。冷えたシャンパーニュなどでいただくといいですね。

夏の涼しげな料理にも熾火の技が

    スモークドアのカルパッチョ

夏っぽくさっぱりとスタートしたいと思っていたら、ソイのカルパッチョが出てきました。ここにもスモークの技は潜んでいて、カルパッチョのソースは梅干しと紫蘇なのですが、梅干しの種がバーベキューされたのちにソースに漬け込まれているそうで、独特の風味があります。

    スモークドアの料理

そして焼いたカニの身のたっぷり入ったガスパチョ。合わせてもらったきゅうりのジントニックが爽やかななかにも味わい深い後味を残し、夏の贅沢を感じます。

    スモークドアのパンケーキ

パンの代わりにいただいたのは、ジャガイモとガレットのパンケーキ。シェフの秘伝ソースで48時間マリネしたとんぶりの登場です。下に敷かれているのが熾火で焼いたわかめ。磯の香りにつつまれたキャビアのような食感のとんぶりを、サワークリームとともにガレットやパンケーキに乗せていただきます。

旨みの凝縮、クレイジーなビーツ

  • スモークドアの豚肉

  • スモークドアの海老

ほどなく運ばれてきたのは豚バラのグリル。皮付きの豚バラの表面はクリスピーに、中はジューシーに柔らかく火入れされたもので、三杯酢のソースがまた爽やかな深みを出してくれます。

それからエビのグリル。これは熾火の中に瞬間火入れされたもので、旨みがギュッと凝縮されて出てきます。

    スモークドアのメイン

メインをすでにいただいた感じもしましたが、最後に、牛肉の添え物としてマイタケ、カリフラワー、ビーツをいただきました。どれも、熾火料理の真骨頂でしたが、なかでも特筆すべきはビーツでしょうか。

ビーツを加圧して果肉とジュースを分け、ジュースはスモークします。果肉は3日間遠火で火入れしたあとジュースを吸わせ、それを熾火で焼き上げるのだとか。凝縮した旨みと甘みとがビーツであることを忘れさせます。

「けっこうクレイジーでしょ」と紹介されましたが、さもありなん。

    スモークドアのデザート

デザートのアイスにはスモークしたマシュマロが練りこまれ、スモークナッツにスモークしたキャラメルソース。アイスクリームが薫香をまとうと、貴婦人の出で立ちになります。

原始的な手法を使いながら、洗練されたおいしさと味わい深さがすばらしい。

    スモークドアの外観

【SMOKE DOOR】。日本の熾火料理の魅力をさらにもう一歩前に進めてくれる、そんなお店になってくれることは間違いないと思いました。

この記事を作った人

小西克博/ヒトサラ編集長

北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。

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