札幌【L'ORABGE(ロランジュ)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第46回
今年の「シェフ№1決定戦!CHEF-1グランプリ2022」で優勝したのは札幌すすきのにあるカウンターフレンチ【L’ORANGE(ロランジュ)】のシェフ大原正雄さん。TV放映があった7月末から予約の電話が鳴りやまなかったと語ります。優勝賞金はなんと1000万円。さてシェフはそれをどう使うのでしょう。
進化する北海道フレンチ
【L’ORANGE(ロランジュ)】は札幌の歓楽街すすきのの雑居ビルの中にあります。シェフの大原さんは、ボキューズ・ドールに出場したり、【ラ・フェット ひらまつ】の料理長を務めたりしてきた方で、2018年に故郷である札幌に戻り、ここで北海道産の食材にこだわったフレンチを提供しています。
正統派フレンチの技をベースに遊び心のある素敵な料理を出してくれます。そんなシェフの技をカウンター越しに眺めながら、まずはシャンパーニュでシェフの優勝に乾杯。
「いやあ半年かけて準備して、最後は店閉めて、合計で7回戦ったんです。でもお陰様で優勝できました」と喜びを隠せない様子。
今宵はアイヌ料理のカムイチェプからのスタートです。
コーンの中に鮭の塩漬けをバターでリエットしたものが入っています。食感のアクセントに使われているのは、いぶりがっこ。この料理は漫画「ゴールデンカムイ」でも取り上げられていました。それをフレンチ風にアレンジしたシェフの、北海道の大地へリスペクトが感じられる小品です。そしてもうひとつは、ほうずきあめですね。
ソアヴェ・クラシコとともに出されたのが、一見シューマイのようなお皿。
「函館のイカシューマイかと(笑)。檜山の真イカをソーメン状にして半分は生、半分は炙ってます。それをカリフラワーのピクルス、からすみと道明寺粉を練り上げたもので、パルメジャーノと豆鼓を乗せました」。
酢漬、発酵食品、塩蔵食品がナチュラルなイカにさまざまな風味と味わいを与えています。店内には北海道の地図が書かれ、今日使われている食材の生産地が示されています。
「ポール・スミス?」も登場
ちょっと試作的なんですが、と出てきたのは鶏の料理。赤平火をどり、というイベントにかけた料理か、まだ商品化されて鶏のようですが、その鶏を全部使ってとっただしに栗と味噌を加えたブイヨン。
「まだ鶏が硬いのですが、ようやく北海道でもいい鶏が出来てきていると思います」とシェフ。かなり旨みが凝縮され、栗の甘さが口に優しいブイヨンです。カベルネフランとシラーのワインを合わせます。
なんか見たことのあうような色合い、と思いきや「ポール・スミスを食べてください」とシェフ。加茂茄子田楽ですね。パプリカ、柚子胡椒、ズッキーニ、黒ニンニク、玉ねぎ、セロリなどを使った味噌で、味付け、色付けされています。綺麗でお洒落な一品です。ドメーヌ・ラフラン・ヴェロル バンドール・ロゼを合わせます。アタックの柔らかいフレッシュなロゼです。
次は毛ガニです。昆布だしベースに蟹味噌と松茸のアメリケーヌ・ソース。確実に万人受けする旨さ。
「これ蟹がいいときは蟹オンリーでやったりしますが、そうじゃないときは季節のものを入れてつくります。甘えびつかったり、蕗を入れてみたり」。松茸の香りが後を引きます。冷えたリースリングにもよく合います。
メークインの新じゃがですと出てきたのが不思議な形。「芋を30層重ねました(笑)」とのことです。
芋のテリーヌですね。利尻のバフンウニがサバイヨン・ソースになっています。たしかにテリーヌの食感です。「これ15層だとまだポテチの味なんですよ」とシェフは笑います。手間がかかりそうだけど、おもしろい一皿です。
合わせてくれたのはヒノデダンケ・ルージュ。ツヴァイゲルトはこういった芋料理に最適ですね。
シェフは、話をしながら手を休めることなく、スピーディに料理を進めます。でもやはり大会では時間に追われ、時間内に調理を収めることの苦労は並大抵じゃなかったと語ります。
「1時間で合計21人前つくるんですからね、大変です。パテ・アン・クルートなんかヘルシオで焼きましたから(笑)」。この話にはこちらも大笑いです。
口休めのグラニテをはさんで、マナガツオのポアレ。ソースはヴァンジョーヌ。合わせたのはイタリアの名門、ミケランジェロが所有していたというファットリア・ニッタルディの白。
塩釜で焼く江別マイアーレ
そしておもしろい、ツブ貝のエスカルゴ風。
「襟裳のツブ貝をスライスして、ブルギニオン・バターです。僕はエスカルゴよりこちらのほうが好きですね」。
レモンでマリネされたとんぶりも入っていて、食感にアクセントが加わります。ブルゴーニュの樽香がきいた白でいただきます。貝自体がおいしいし、ブルギニオン・バターによく合います。昔からあった北海道フレンチって感じがします。
そしてさっきから気になっていた塩釜が開けられ、メインの豚の塊が登場です。
「江別マイアーレという島豚です。バークシャー種と交雑させて美味しくなったといいます。僕はこの肩ロースが好きで、メインに持ってきました」。
5時間低温でじっくり調理したという肩ロースは柔らかく薫り高くスパイシーなディアブルソースをからませると実に美味。焼きたてのフォカッチャにソースを吸わせいただきます。ワインはイタリアの赤、カンティーナ・ディオメーデ カナーチェ ネロ・ディ・トロイア。
デザートはシンプルに無花果とヨーグルトのソルベ。落ち着きます。
さて、肝心の賞金の1,000万円の使い道はと訊くと、新しいお店を近くに出す資金として使うとのこと。デセールにも力を入れているので、それもつくれるくらいの広さでいま探してる最中とのことでした。
席数が増えたら、もう少し予約が取りやすくなるかもしれません。私としてはそちらを期待したいと思います。
この記事を作った人
小西克博/ヒトサラ編集長
北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。
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