今年の冬は軽井沢で名建築と美食の旅を「ししいわハウス軽井沢」
続々と新しいホテルが登場している軽井沢。ホテルレストラン巡りも新たな旅の目的として楽しみにしている人も多くなりました。坂茂が設計したユニークな建築で話題の「ししいわハウス」に2022年7月に待望の「ザ・レストラン」がグランドオープン。この冬訪れたいホテル&レストランを取材しました。
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軽井沢の名建築ホテルにレストランがオープン
坂茂の建築と呼応するような、ナチュラルな料理
フランス直送のお宝ワインも楽しみの一つ
軽井沢の名建築ホテルにレストランがオープン
坂茂建築の「ししいわハウス No.2」
軽井沢駅からクルマで30分。千ヶ滝の森の中に溶け込むように建てられているのが建築、アート、美食を楽しめる「ししいわハウス」です。
2019年に坂茂氏が手掛けた「ししいわハウスNo.1」が開業後、2022年7月に「ししいわハウスNo.2」と「ザ・レストラン」がオープン。2023年春には西沢立衞氏による「ししいわハウスNo.3」も加わる予定。今年真っ先に訪ねたい注目のホテルとなりました。
「ししいわハウスNo.1の共有ラウンジスペース
いずれの棟も自然を間近に感じる名建築。一つずつご紹介していきましょう。
2019年に建てられた、坂氏による「ししいわハウスNo.1」は、森や周辺環境を壊さぬよう、既存の木を極力も伐採せずに作られています。坂氏はまず、木を切らないために、敷地内に生えている木をスケッチ。そこから設計図を起こし、木々の間を縫うように、足場を一切組まないパネル工法で建てました。生き物のように波打つ外壁の曲線は、周りの美しく森と見事に調和し、独特の風景を作っています。
そして共有のリビングは、この有機的な曲線が自然とつながり、土地と一体化してくつろげる空間に。誰かの別荘に招かれたような心地よさに、一度訪れたら時間を忘れて滞在してしまいます。
「ししいわハウスNo.2」の客室
No.2は、木をふんだんに使い、20㎡とコンパクトながら計算された動線が使いやすい部屋。ヒノキのバスタブをあえて見せ、使用する時のみカーテンで仕切るなど坂氏の斬新なデザインには、細部まで考えられた機能性があることを、滞在を通じてまざまざと実感できるでしょう。
No.1もNo.2も自然環境保全の条例により守られてきた美しい森に面しており、部屋にいると、土と緑の香りに包まれながら、鳥のさえずりを聞くことができます。
「ザ・レストラン」のテラス
「ししいわハウス」のメインダイニング「ザ・レストラン」があるNo.2もまた、坂氏により設計されたもの。ランドスケープと建築が一体化するよう、柱を使わないトランス構造で作られているため、開放感が抜群です。
屋内からテラスは、大きなガラス窓で仕切られていますが、天気がいい日はここを開放することで、森の中につくられた大きなツリーハウスにいるような雰囲気に。
坂茂氏のシグニチャーでもあるペーパーチューブのテーブルや椅子が配されているのも、建築好きにはたまりません。
坂茂の建築と呼応するような、ナチュラルな料理
そんな開放的な空間にあるのが「ザ・レストラン」です。ここでは、周辺の自然の風景を写したようなナチュラルな料理が登場します。
シェフを務めるのは、岡本将士氏。「TRUNK HOTEL」のメインレストラン、神楽坂の「TRUNK HOUSE」のシェフだった人物です。
シェフの岡本将士氏
シェフ就任が決まった時、どんなレストランにしようと思ったのか? そう尋ねると、このホテルを訪ねた瞬間に、料理の方向性は自然と決まったと岡本さんは話します。
「初めてこの場所に来たときに鮮烈に感じた、坂茂さんの建築、空間、風、光……。すべてを体感して、自分の料理の方向性が自然と湧き出てきました。言葉にせずとも、この空間に同期するような、軽井沢の大地が育む恵みに敬意を表し、ヴィヴィットな四季の彩りを写していけばいいのだと素直に感じたのです」。
アミューズ2種
“軽井沢“を料理で表現したい。そう強く考えた岡本さん、オープン前から知り合いのツテを辿ったり、自ら調べたりしながら生産者や食材を丹念に探し、足を頻繁に運びました。一番最初に登場するDuka Farmのハーブを使ったアミューズは、そんな岡本さんの思いが詰まった一品です。
「毎朝訪れる無農薬の畑で取れるハーブは、その日その日で香りも味わいも微妙に違います。毎日通うことで感じた自分の発見を料理にしたい。そう考え、毎朝取れた20種類近いハーブを集めて、土に見立てたローストアーモンドとライスクラッカーを合わせることで、その日の畑そのものを表現しました」
一口サイズのクラッカーを口にいれると、鼻腔を駆け抜けるハーブの力強い香りにハッとさせられます。それは、まるで軽井沢の大地そのものを食べているかのような印象。
ちなみに、左側のスナックは蛍豆腐店の揚げ豆腐、ラルド、エゴマで作ったもの。地場の名産をジャンルにこだわらず組み合わせていくのも岡本流です。
『24ヶ月熟成コンテチーズのアニョロッティ Duka Farmのブロッコリーのピュレ 軽井沢デリカテッセンのベーコンの泡』
コースで登場する手打ちパスタにも、軽井沢の名産をさりげなく忍ばせています。
手打ちのアニョロッティは、ブロッコリーと24ヶ月熟成のコンテチーズのソースでシンプルに仕上げていますが、ポイントは最後にふわりとのせた泡。
これは、軽井沢でも人気の「軽井沢デリカテッセン」のベーコンから香りを抽出したもの。スモーキーでコクのある香りが、シンプルなパスタのアクセントとなっているのです。
ココットで焼き上げる『藁で燻した銀の鴨のロースト旬野菜』
中盤は長野県産の岩魚や信州サーモンなどの川魚の料理が登場。それに続き、メインで登場するのは、シェフが以前から使って惚れ込んだ青森県産の銀の鴨です。メインを牛肉や豚肉にしない理由を聞くと、「脂が乗り、香りも味もいいこの鴨は、森の中のこの環境でこそ、クライマックスに食べて欲しい食材だと思ったから」と答えてくれました。
脂がおいしい銀の鴨には、野生の桑の実のソースを合わせて
なるほど、ココットに入れて、ヒノキの小枝で燻しながら焼き上げた鴨は、滋味深く、脂の味が濃くてしっかりとしたボルドーのワインとよく合います。藁と一緒にいれたヒノキのいい香りと、野趣溢れる桑の実のソースが周りの森と同調し、森の中に包まれながら食事をしている感覚になるのです。
軽井沢の土地に溶け込むような料理と建築―。その世界観に浸る時間は、自分もまた自然の一部になったような気になります。
フランス直送のお宝ワインも楽しみの一つ
「ししいわハウス」のハウスワイン。グラス1,500円~
最後に、こちらのレストランで忘れてはならないワインのコレクションについてご紹介しましょう。
ワインはオーナーでもあり、ディレクターのフェイ・ホアン氏がボルドーやブルゴーニュに行って直接買い付けてきたものが並びます。
今年のハウスワインとしては、シャトー・ペトリュスの隣の畑で育つ「ミシェル・ラファルジュ」のワイン、2021年最優秀ネゴシアン受賞者の次世代スター、ジェーン・エアのピノ・ノワールなどをセレクト。
同じフロアにある「ザ・ワイン&ウイスキー・バー」では、フェイさんが直接オークションで落とした、アメリカの博物館の壁の裏に隠されていたという1850年代のマデラ酒なども登場。
ここだけでしかいただけない銘酒は、軽井沢の夜にさらなる彩りを与えてくれます。
「ザ・レストラン」は、宿泊して食事をするのがおすすめですが、食事だけの利用も可能。ランチには、銀の鴨のガラでとったスープが絶品の「鴨そば」もおすすめです。この冬は静かに、軽井沢の自然に溶け込む建築と美食と美酒に浸るー。東京から1時間で叶う贅沢な旅へ出かけてみてはいかがでしょうか。
ししいわハウス「ザ・レストラン」
住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-768
電話:0267-31-6658
レストラン予約(メールにて受け付け)/therestaurant@shishiiwahouse.com
営業時間:「ザ・レストラン」ランチ 12:00~15:00(13:30LO)、ディナー 18:00~、20:00の二部制(ディナーは要予約)、「ザ・ワイン&ウイスキー・バー」18:00〜23:00(22:00LO)
※それぞれの営業時間は変更となる場合があります。
宿泊などそのほか詳細は下記HPから
https://www.shishiiwahouse.jp
取材・文/山路美佐(B.EAT)
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