インバウンドに向けて海外富裕層にチャネルを持つ有識者を集めた実証実験ツアーを開催
日本の世界遺産や国宝に登録されている神社仏閣の、普段は入ることのできない“特別な空間”を貸し切り、日本独自の文化を体験、さらにその空間でトップシェフの料理を楽しむプロジェクトを運営している株式会社ELternal。今回は、インバウンド向けの開催を目指し、2023年2月10日に行われた実証実験ツアーにヒトサラも参加。その模様をレポートします。
いま、訪日外国人旅行者が日本に求めるもの、それは「日本食を食べること」。ミシュランガイド 世界の美食都市トップ5のうち、3つは東京・京都・大阪の日本が占めており、訪日外国人旅行者に人気の観光スポットランキングでは、京都の「伏見稲荷大社」や奈良の「東大寺」など、神社仏閣が上位を占めています。
そこにいち早く注目したのが、日本が誇る食や文化を、世界遺産や国宝級の神社仏閣で体験できるプロジェクトを運営する株式会社ELternal。2022年5月に開催された第1回目の「THE LEGENDARY JAPAN」プロジェクトでは、京都にある世界遺産「仁和寺(にんなじ)」内の、普段は立ち入ることのできない「宸殿(しんでん)」を貸し切り、東京・亀戸にある予約の取れない超人気イタリアン【メゼババ】のオーナーシェフ・髙山大さんを招いて、イタリアンのフルコースが振舞われました。
会場となった「宸殿(しんでん)」。将棋の最強棋士を決定する最高位のタイトル戦「竜王戦」が開催された場所としても知られています
今回は、インバウンド向けの開催を目指し、実証実験ツアーを開催。ヒトサラをはじめとする海外富裕層にチャネルを持つ有識者がモニターとして招かれました。
では、さっそく京都「仁和寺」での金堂法要や護摩祈願、【祇園 にしかわ】での食事体験の模様をお届けします。
世界遺産「仁和寺」での体験
京都にある「仁和寺」。この一帯は仁和寺御所跡として国の史跡に指定されており、平成6年には世界遺産に登録
今回の舞台となる「仁和寺」は、仁和4年(888)に創建された寺院であり、現在は真言宗御室派の総本山とされています。境内には五重塔や二王門など、江戸時代に建立された歴史的な建造物が立ち並び、本尊の阿弥陀三尊像をはじめ、仏画や工芸品など、多くの宝物を所蔵。遅咲きで有名な御室桜は国の名勝に指定されています。
「関白の儀」(金堂法要)
普段は非公開で、特別拝観の場合のみ公開される「金堂(こんどう)」
まずは国宝の「金堂」へ。ここはかつて京都御所内に存在した「宸殿(しんでん)」を移築したもの。「宸殿」とは、天皇陛下が即位の儀式を行う際の建物で、今の場所に移築し、お堂として使用するため改築されたそうです。日本に現存している宸殿遺構の中でも仁和寺のそれは最古のもので、国宝に指定されています。今回はその中で、開会の意を込めた法要「開白の儀」が執り行われました。
「除災招福の儀」(護摩祈願)
仏様に対し、壇の爐中に供物を投じて燃え盛る浄火によって煩悩を焼き払い、供物の香りを諸尊に供えることで福をもたらします
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お堂の中に入り、祈願します
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護摩木は12種
続いて、御影堂にて「除災招福の儀」として護摩(ごま)祈願が行われました。護摩祈願とは、僧侶が護摩木に書かれた氏名と願意を懇ろに御祈願すること。2000年以上の歴史を持つ仏の力を込めた聖なる炎を使った祈願方法で、古来より天皇や時の権力者たちは天下泰平・五穀豊穣といった願いを叶えるため、この護摩の力を頼りにしてきたそうです。
「結縁の儀」(御手綱参拝)
修行僧が修業する場所として使用されている「観音堂」。普段、扉は閉ざされているのですが、今回は特別に扉が開かれました
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千手ひもを手に「御手綱参拝」を行いました
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ひもの持ち方は自由で、私は両手で挟んで合掌
護摩体験を終えて向かったのは、重要文化財「観音堂」。その中に安置されている「千手千眼観世音菩薩」は、千の手と千の眼を持ち、観音様の中で最も人々を救う力が強いことから、観音の王=蓮華王と言われています。本尊の中に千手観音菩薩の写真があり、お堂の中から外へ「千手ひも」が2本出ています。このひもを持ってお祈りする=観音様の御手から伸びた五色線に触れることで、より深く縁を結び、その利益を頂戴するという意味があるそうです。
「和敬静寂の儀」(お抹茶体験)
一般参拝客は立ち入ることのできない「食堂-Jikido」にて開催
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378年ぶりの「観音堂」改修工事の際に出た端材を使ったテーブル
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この日のお菓子は「北野の春」
「仁和寺」は歴史上の偉人達が茶会を開催し、茶を愉しんだことでも知られています。そのため、仁和寺御殿の宸殿の奥には重要文化財に指定されている「遼廓亭」「飛濤亭」という二つの茶室があります。今回の茶会は、初心者向けの体験会ということで、「食堂-Jikido」にて初心者でもわかりやすいようにと、抹茶の点て方、飲み方がレクチャーされました。
そして茶会も終わり、「仁和寺」での文化体験はここで終了。
【祇園 にしかわ】での食体験
風情漂う石畳の街並みが残る下河原通にある【祇園 にしかわ】
場所を移動し、【祇園 にしかわ】へ。こちらの店主、西川正芳さんは、【祇園さゝ木】で研鑽を積み、2009年1月に【祇園 にしかわ】を開店。独立わずか一年でミシュラン二つ星を獲得した京懐石の精鋭です。
7.5メートルの檜の一枚板を用いた圧巻のカウンター
お料理の素晴らしさはさる事ながら、【祇園にしかわ】の魅力はなんといっても西川さんのお人柄。日本料理の名店の店主でありながら、ざっくばらんな姿に、みな笑顔で食事をいただくことができました。
『八寸』
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油物『河豚唐揚げ』
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御飯物『百合根御飯』
焼物『鰆柚庵焼』
コース全品でてきたところで会はお開き。
今回、こちらの実証実験ツアーに参加し、世界遺産である「仁和寺」の一般客が入ることのできない場所に足を踏み入れたり、予約が取りにくい星つき店の料理を堪能したりと、とても貴重な体験ができ、日本が誇る「和食」と「文化」を通して、多くの訪日外国人旅行者が訪れるきっかけになりうる価値あるプロジェクトだと感じました。
今後の開催予定に関しては「株式会社ELternal」公式サイトにて発表されますので、ぜひ公式サイトをご確認ください。
今回の料理人:【祇園 にしかわ】西川 正芳氏
1975年、京都・室町生まれ。おいしいものや美しいものに触れて育つ中で京料理人に憧れ、高校卒業後、料理人の道へ。名店【祇園さヽ木】などで修業し、【わらびの里】料理長などを経て、2008年、【祇園にしかわ】を開店。“間口は広く出口は高く”をモットーに、親しみやすい笑顔と気さくな語り口で客人をもてなす。
世界遺産 真言宗御室派総本山「仁和寺」
住所:京都府京都市右京区御室大内33
電話:075-461-1155
参拝時間:9:00~17:00(受付終了16:30)
撮影/前田 博史 取材・文/嶋 亜希子(ヒトサラ編集部)
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