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更新日:2024.03.25食トレンド

薪で焼く焼鳥でフーディを虜にした、超予約困難店【薪鳥 新神戸】が移転オープン|赤坂見附

前人未到の薪焼鳥で、一躍フーディらの胃袋を鷲掴みにした【薪鳥 新神戸】。再開発のため惜しまれつつも2023年6月20日、麻布十番の店は一旦畳んだものの、同年11月に見事復活。赤坂見附のすぐそばにリニューアルオープンした。

薪で焼く焼鳥でフーディを虜にした、超予約困難店【薪鳥 新神戸】が移転オープン|赤坂見附

駅から徒歩3分ほどの近さながら、前店と同様隠れ家感は満載! コインパーキングの奥というシチュエーションだけでも充分わかりにくいのに、その先で見つけた扉には“火災受信盤”の文字。これにすっかり惑わされ、付近を彷徨うゲストも少なくないようだ。まぁ、鍵までかかっているのだからそれも宜なるかな、ではある。

    駐車場の奥にある倉庫の扉のような入り口に、迷うゲストも多い。扉横のインターホンを押せば、鍵を開けてくれる

    駐車場の奥にある倉庫の扉のような入り口に、迷うゲストも多い。扉横のインターホンを押せば、鍵を開けてくれる

扉の隣のインターホンを押せば、鍵は解錠。地下へと続く階段の向こうのドアを開ければ、広々とした空間が目の前に現れる。ここが、新生【薪鳥 新神戸】。前店のゆうに2倍はあろうかというゆったりとした店内には、コの字型のカウンターが12席。その奥には、メラメラと炎をあげる炉窯が、2台設えられている。今回の店では、その薪火をどの席からも見ることができるように設計してもらったそうだ。

    以前の麻布十番の店に比べ倍以上の広さとなった店内。コの字型のカウンター席は12席。天井も高めで開放感がある

    以前の麻布十番の店に比べ倍以上の広さとなった店内。コの字型のカウンター席は12席。天井も高めで開放感がある

「炉窯が二つになったことで、火の調整がやりやすくなり、焼きの精度が格段に上がりました。」とは大将の疋田豊樹さん。火加減の異なる野菜や肉を一つの炉窯でこなさなくてはならなかった前店に比べ、こちらは片方を肉専用にすることで肉と野菜の同時進行が可能になった由。

    「焼鳥職人は天職です。」と疋田豊樹さん。プライベートでも鶏は大好物とか

    「焼鳥職人は天職です。」と疋田豊樹さん。プライベートでも鶏は大好物とか

「熱源に余裕ができたので、一方を熾火にして野菜を焼いてみるとか、薪焼きの可能性をより高めていきたいですね。」と意欲を燃やす疋田さん。だが、コース内容は以前とはそれほど変えていないそうで、それも、コースそれぞれの料理に対し「これを食べたかったんだよね。」という客が多いゆえ。ヘタに変えると「ガッカリする方もいらっしゃるんですよ。」と疋田さん。

    コースの最初に供される秋田「高原比内地鶏」のもも肉『高原比内地鶏のもも肉の薪焼き』。薪の薫香とほとばしる肉汁とが拮抗するうまさは格別だ

    コースの最初に供される秋田「高原比内地鶏」のもも肉『高原比内地鶏のもも肉の薪焼き』。薪の薫香とほとばしる肉汁とが拮抗するうまさは格別だ

コースの幕開けは、従来通り秋田「高原比内地鶏」の「もも肉」。
見るからに香ばしさが伝わってくる皮は、黄金色に輝き、皿に滴る肉汁も惜しいほど。すかさずアツアツに齧りつけば、薪で焼けばこその薫香が鼻腔を抜ける。そう、この一瞬で、皆、薪焼鳥の虜となるのだ。薫香と共に溢れ出る肉汁で舌を潤わせつつ味わえば、旨みの余韻が後を引く。一串とはいえ、インパクトのある味わいはまさに名刺がわりと呼ぶにふさわしい、相変わらずのおいしさだ。が、心なしか以前に比べ、やや焼きがしっかりとして、より焼鳥感が増したように感じる。

    兵庫『高坂鶏のとりわさ』。高坂鶏の胸肉と白レバーを交互に重ね、自家製のとりわさ醤油をかけている

    兵庫『高坂鶏のとりわさ』。高坂鶏の胸肉と白レバーを交互に重ね、自家製のとりわさ醤油をかけている

続く2皿目は「鶏刺し」。
こちらは兵庫の高坂鶏の胸肉とレバーをミルフィーユのように重ね、自家製のとりわさ醤油をかけた新作だ。以前も松風地鶏をお刺身にして提供していたが、今回はよりブラッシュアップ。何より高坂鶏の白レバーが素晴らしい。白レバーらしい妖艶な濃厚さを持ちながらも、後味は実にすっきり。綺麗な旨みが印象的だ。柔らかく淡麗な高坂鶏の胸肉で巻くようにしていただけば、おいしさは更に倍増。至福の味が心を満たす。それも、無菌の状態での出荷を可能にした高坂鶏を使えばこそ。飼料の配合や育て方によって鶏を健康的な状態に保ち、屠殺後の処理にも気を使うなど独自の飼育ノウハウが唯一無二の高坂鶏を生み出している。

    『高原比内地鶏のふりそで・ハリッサ乗せ』。胸肉のようなさっぱりした肉質を持ちつつ、ジューシーさも併せ持つふりそで。自然な甘みを含んだハリッサの辛味とよく合う

    『高原比内地鶏のふりそで・ハリッサ乗せ』。胸肉のようなさっぱりした肉質を持ちつつ、ジューシーさも併せ持つふりそで。自然な甘みを含んだハリッサの辛味とよく合う

さて、コースはこの後、山口県産『長州鶏のレバーにマッシュルーム』、『鶏焼売のお椀』に『ハツ』と続いた後、ハリッサをトッピングした『高原比内地鶏のふりそで』が登場。

ふりそでとは、鶏の手羽元と胸の中間に当たる稀少部位。人間でいえば肩の部分になるそうで、「程よく脂がのっていながらさっぱりした味わいの部位ですね。」と疋田さん。ハリッサは、チュニジア発祥の辛味調味料だが、ここでは和風にアレンジ。カンズリと赤ピーマンをベースにつくっている。

    『高原比内地鶏のソリと九条ネギ』。写真の料理はすべて20,000円(税込み・サ別)のおまかせコースから

    『高原比内地鶏のソリと九条ネギ』。写真の料理はすべて20,000円(税込み・サ別)のおまかせコースから

『赤茄子の煮物のチーズ掛け』や薪で焼いた食パンに鶏のリエットを塗った『鳥パン』、『高坂鶏のもも一枚焼き』に『鶏だしの茶碗蒸し』、『蓮根餅』等々でお腹も満たされてきた頃、再び串物が出て〆へと突入。

このタイミングで出される串は、日によって変わるそうだが、この日は『九条ネギとそり』と『手羽のネギ巻き』の2串。ソリとは、腿肉の付け根にあたるピンポン玉ぐらいの部位のことで、いわば筋肉の塊。腿肉よりも歯応えがありジューシーな味わいが人気の一品だ。こちらにはカンズリをあしらい、よりアタックの強い一串となっている。また、手羽の骨を一本だけ抜き、そこにネギを詰めて焼く『手羽のネギ巻き』も秀逸。鶏の脂や肉汁を吸った長ネギが、鶏に負けず劣らずのいい味を出している。

疋田さんによれば「高原比内地鶏は肉付きも良く、地鶏にしては肉質が柔らか。それでいてしっかりとした噛み応えもあり、やはり薪火に合いますね。」とのこと。一方、高坂鶏は皮がうまいそうで、双方を組み合わせたハイブリッド串も新メニューとして時折登場するとか。もちろん、“熟成”させて旨みの濃度を引き上げるひと手間も以前と変わらない。

    鶏挽肉を炎にかざし、ダイナミックに炙る疋田さん。薫香が店内に立ち込める

    鶏挽肉を炎にかざし、ダイナミックに炙る疋田さん。薫香が店内に立ち込める

〆は、これを目当てに訪れるリピーターも多い超人気メニューの『そぼろ御飯』。
大きなザルで炎を上げながら豪快に鶏挽肉を炙り焼く様子は、何回見ても気持ちが上がる。立ち上る煙と共に広がる薫香もおいしさのうち。お腹はいっぱいのはずなのに、早くも胃袋が騒ぎ出す。

特注の土鍋は、信楽・雲井窯の七号炊き。これで炊いた6合の米に1kgの鶏挽肉をあわせているそうで、米はほどよい粘りと弾力性に富むあきたこまち。「香りや鶏の旨みによく合う米だと思います。」と疋田さん。ややもちもちとした白飯の食感に香ばしくも旨み豊かな鶏そぼろが最強の組み合わせ。塩味のシンプルな味付けながら、1杯目は炒めたニラ、2杯目は卵かけ、3杯目はカンズリと青ネギというように、味変で楽しませる趣向も心憎いばかり。最後まで舌を飽きさせない秘訣だろう。

    『そぼろ御飯』。土鍋に薪を入れるのは「ご飯にも薪の薫香をまとわせるため」と疋田さん

    『そぼろ御飯』。土鍋に薪を入れるのは「ご飯にも薪の薫香をまとわせるため」と疋田さん

    まず、炒めたニラを乗せて一杯。その後、卵かけ、カンズリとネギなど味変で楽しめる

    まず、炒めたニラを乗せて一杯。その後、卵かけ、カンズリとネギなど味変で楽しめる

アルコールは、ワインも日本酒も豊富に揃うが、疋田さん曰く「人気があるのは、やっぱり日本酒ですね。」とのこと。希少な三重の「而今」や「新政 水墨 亀の尾」、フルーティで微炭酸の奈良「風の森」、長崎・壱岐の超辛口「よこやま」など銘酒が揃っている。

    お酒はワインはもとより、「而今」など希少な日本酒も揃っている

    お酒はワインはもとより、「而今」など希少な日本酒も揃っている

この記事を作った人

撮影/三橋 優美子 取材・文/森脇 慶子

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