8席のみの劇場型イタリアン【Orchestra(オルケストラ)】。小川シェフが7年間過ごしたイタリア時代をお皿で表現する「私を育てたエミリア・ロマーニャへの想い」
イタリアで7年を過ごし、郷土料理から二つ星リストランテまでを経験した小川慎二シェフ。30歳の節目に帰国してからも経験を積むなかで「今、日本にいる自分にしかつくることのできない料理」を提供したいと、自身のお店【Orchestra(オルケストラ)】を2023年9月、参宮橋に開業しました。オープンから半年を経て心機一転、「私を育てたエミリア・ロマーニャへの想い」と題した、原点回帰のコース料理を、5月31日までの期間限定で提供するとのこと。小川シェフの原点と今を味わえる貴重な機会を見逃すわけにはいきません。
まるでオーケストラの演奏のように
関わるすべての人の想いをお皿で表現
小田急線・参宮橋駅より徒歩1分。代々木駅も徒歩圏内
2023年9月、閑静な住宅街にオープンした【Orchestra】。この店名は、小川シェフがイタリアで修業していたとき、「一皿を作り上げるのに大勢の人が同時に手を動かし、集中して仕上げていく。それはまるで100人で壮大な曲を演奏するオーケストラのようだった」と強く記憶に刻まれた経験から命名したのだそう。料理人だけでなく、食材の生産者からサービススタッフ、皿やカトラリーを作る職人など、レストランに関わる全ての人が一つになって、最高の一皿を完成させるレストランを目指しています。
シェフの小川慎二さん。1987年生まれ、長崎県出身
小川シェフは、フランス料理を経験したのちにイタリア料理に魅せられて渡伊。トスカーナ州のトラットリアや、エミリア・ロマーニャ州モデナの一つ星レストラン【ストラーダファチェンド】に勤務し、46年連続ミシュラン二つ星の【リストランテ サン ドメニコ】ではスーシェフまで務めました。帰国後は目黒【リナシメント】のシェフとして腕を振るったのち、同店のシェフに就任。
イタリアから取り寄せたアンティークの扉を開けると、オープンキッチンを中心に、劇場で楽曲を愉しむような8席の特等席が囲む
メニューは、“今、日本にいる小川シェフにしか作れない料理”をテーマにした「おまかせコース」のみ。イタリア料理の技術をベースに、日本各地の優れた旬の食材の魅力を引き出しつつ、その食材が生まれた風土や取り巻くストーリーも含めて表現します。ワインは、ソムリエであり支配人の矢島聡さんが、コースに合わせたワインをセレクト。ナチュラルワインを長く扱ってきた矢島さんが選ぶ本物の自然派ワインのほか、シャンパーニュやブルゴーニュ、古酒まで幅広く取り揃えます。
小川シェフの原点回帰
「私を育てたエミリア・ロマーニャへの想い」
イタリア時代を振り返りつつ、今の小川シェフをも投影したお皿に期待が膨らみます
今回は、5月31日までの期間限定で、小川シェフがイタリアで腕を磨いた料理と、産地や生産者にこだわった魅力的な日本の食材を掛け合わせて創り上げるコース「私を育てたエミリア・ロマーニャへの想い〜サンドメニコでの日々へ〜」を提供します。ペアリングするワインも、エミリア・ロマーニャ州とその近郊の北イタリアのワインを中心にラインナップ。その内容をご紹介します。
『小川シェフから今夜のゲストへ「味探し」』
スペシャリテの『トルテッリーニ イン ブロード』。ブロードとは、イタリア語で“だし”の意味で、現地では鶏だしを使うのが一般的だそうですが、小川シェフは出身地である長崎でポピュラーなアゴだしを使用。朝から6時間かけてじっくり作る渾身の一皿です。中には鹿児島の「幸福豚」を包んだトルテッリーニが
だしに使う食材を見せていただきました。パルミジャーノチーズや生ハムの端っこ、ネギ、鶏節など。スープをいただきながら、これらの「味探し」をするのも一興
『今宵のオルケストラを皆様へ』
ピアノを思わせる艶やかな黒いボックスを開けると、美しい5種のアミューズが現れます。黒鍵と白鍵をイメージした長方形の器を使い、5つの音色を楽しむように、それぞれの食感や味わいを堪能。冷菜が白鍵、温菜が黒鍵です
左から、毛ガニとサワークリームを合わせたものを、パルミジャーノと五香粉(ウーシャンフェン)を使ったビスケットで挟み、上にキャビアを乗せて仕上げたもの。次がA5ランクの牛ヒレ肉と「幸福豚」と使ったミニバーガー。真ん中の小さなタルトは、新たまねぎの麹でマリネしたアジのタルタルの上に、新たまねぎのピューレとスナップエンドウを乗せたもの。次は、菊芋を表現した前菜で、皮をフリットにした上にグアンチャーレと菊芋のエスプーマで仕上げ。右はブルスケッタで、熊本の馬肉と牡蠣を合わせたものです。
『京都、辻さんからのしらこたけのこ』
お皿の水色とのコントラスト、蓮の花が浮かぶような印象の美しい一皿
京都の京都辻農園が育てる「白子たけのこ」を使った冷前菜で、白子たけのこは極端にえぐみが少ないため、アク抜きをせずに火入れするだけで食べられるほど。下から層になっており、菜の花、オマール海老、白子たけのこ。その上に、たけのこの姫皮と生ハムでとっただしを合わせたジュレを乗せています。ソースは自家製マヨネーズとアップルビネガーで華やかに。
『伝統のパスタ ガルガネッリ』
エミリア・ロマーニャ州にある街、イーモラの伝統料理である筒形パスタを、春らしいグリーンピースのソースで仕上げています。グリーンピースは、国産のものより数段甘みが強いイタリア産のものを使用。セミドライトマトと、千葉県産イノシシのサルシッチャと合わせます
ショートパスタは伝統に倣い、古い木製の溝つき板を転がして成形する
『モデナのティジェッレ オルケストラ風』
蒸しパンの中に豚の角煮を入れる長崎の「角煮まん」をオマージュし、中には仔牛すね肉の煮込み料理「オッソブーコ」というミラノの代表的な料理を入れた小川シェフならではの一品
小川シェフがイタリアから持ち帰ってきたという型でつくる
『ラヴィオーロ サン・ドメニコへの感謝』
小川シェフが一番長く働いた、1970年創業の名店【リストランテ サン ドメニコ】のスペシャリテ、卵の入ったラビオリです。同店のレシピをそのまま継承した【Orchestra】のスペシャリテでもあります。仕上げに焦がしバターとトリュフをかける
パスタ生地も調理する直前に目の前で伸ばす
パスタ生地に羊のリコッタチーズとほうれん草のムース、卵黄を入れたラビオリ。その繊細な味わいを、ひとつひとつ丁寧につくっています
『藤本さん 鰆 アーティチョーク ミント』
愛媛県の漁師、藤本さんから神経締めで直送された鰆を薪焼きで。ほどよい水分を纏って、皮目はパリパリ、中はジュワッとレアに仕上げています。香ばしく濃厚なアーティチョークのソースにミントのオイル。付け合わせがアーティチョークのフリットとホタルイカです
『冷たく小さな一品』
お口直しの冷製パスタは日替わり。今回はパスタではなく、地元・長崎の五島うどんを冷製にしています。発酵トマトとハマグリだしのソースによく絡みます。上に輝くのはニジマスのキャビア
『千葉KASYU 仔豚 エミリア・ロマーニャ仕立て』
エミリア・ロマーニャ州は豚の畜産が盛んなことから、メインディッシュには豚肉を採用
豚肉は、カシューナッツとハーブを食べて育った千葉県産「花悠仔豚(かしゅうこぶた)」を使います。現地ではガリガリになるほど皮目を焼きますが、小川シェフは、一度お湯を通して皮目に熱を加えてからオーブンで火入れし、最後に薪で焼き上げることで、ほどよくバリっと焼き上がリます。豚の骨からとったソースにセージを合わせて。
『ペペロンチーノ』
即興演奏のように、メニューにはないアーリオオーリオがお目見え。にんにくのコンフィを使ったペペロンチーノで、コンフィにすることでにんにくが強くなりすぎず、旨みだけを引き出しています。もちもちで歯切れのよいパスタに、香ばしさと旨みが印象に残る一皿
『カッサータ カカオ キャラメル カシス』
シチリアの伝統的なお菓子「カッサータ」をベースにした美しいデザート
パイナップル、ズッキーニ、バジルを使ったソルベのあとに、メインのデザートが登場。カッサータの中にはアーモンドとフランボワーズ。上にキャラメルクリーム、チョコレートソースがかかり、抹茶でマリネした苺とカシスのソースが添えられます。コロコロと表情が変わる魅力的な味わいで、一口ごとに新たな発見があり、後味にはフェンネルの香りが残り、爽やかな食後感です。
小川シェフの人生が垣間見えるような流れのあるコース。出身地・長崎を懐かしむような料理と、エミリア・ロマーニャ州の伝統と、名物の手打ちパスタの数々。それらがコースの中で調和し、心まで温かくなるような料理は、まさに今の小川シェフにしかできないものだと感じました。小川シェフの集大成とも言える味わいを、ぜひ体感してみてほしいです。
この記事を作った人
宿坊アカリ
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