北海道のミシュランシェフが東京で心機一転! 極上素材と和洋折衷のアイデアで新たな美味の境地を切り拓く|【KINO_】
北海道産の旬の食材を活かしながら確かなクラシックフレンチの技術でグルマンを満足させてきた札幌のフレンチ【lien】が、1年の充電期間ののち店名も改め東京で新たなスタートを切りました。食材も料理法もさらに幅を広げながら「料理人歴25年の集大成を」と意気込むシェフの木下雄介さんに、東京でどのようなお店を目指そうとされているのかを詳しく伺ってきました。
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北海道産の食材の魅力をアピール
札幌から東京へ。変えないこと、変えたこと
入手困難な新政や話題の道産ワインが充実
インパクトある料理で北海道産の食材の魅力をアピール
2022年7月、10年営業した【lien】をクローズした木下雄介シェフ。「東京方面からいらっしゃるお客様も多く、北海道の本当の良い食材を北海道ではない場所で楽しむという非日常が喜ばれるのではなかという思いが次第に大きくなっていました」。
料理の仕込みから仕上げまで1人で真摯に向き合う木下シェフ
木下シェフの料理の人気の理由は、クラシックフレンチの確かな技術に加え、素材の見極めと活かし方のセンス。一度訪れたゲストが「忘れられない味」として必ず挙げる『イカ飯』はその最たるスペシャリテです。
何と言っても「フレンチでイカ飯?」という謎かけと見た目のインパクトだけでも興味を惹きつけられるこの料理。イカの中にウニのリゾットを詰めて柔らかく蒸しあげ、イカの塩辛を加えたバターソースが添えられています。フランス料理ではアンチョビを加えるアンショアというソースがあるのですが、それを塩辛でアレンジして紛うことなくフレンチの一皿に仕立てながらも北海道の郷土料理として有名なイカ飯の再構築と納得できる完成度の高さに感心させられるのです。
インパクトあるイカの姿を蒸し立てで見せたのち、食べやすい大きさに切ってソースを添えテーブルに
メインの肉料理に使う食材は北海道の猟師さんから届きます。「10年以上の付き合いがあり、命の大切さを教えてくれる尊敬できる友人でもあります」と木下さん。血抜きや解体など適切な下処理が味を左右するジビエだけに信頼できるルートを持っているということも強み。夏場は蝦夷鹿がメインでしたが鴨やキジなども登場する冬にかけても期待が高まります。
蝦夷鹿のグリル。焼き汁に胡椒を効かせたポワブラードソースで。付け合わせはインカのめざめのポテトコロッケ。
蝦夷鹿のコクがありながらもピュアなおいしさも印象的ですが、付け合わせのホックホクのポテトコロッケにも感動。1年寝かせて旨みや糖度を高めたインカのめざめで作っているそうです。「長年の付き合いのある農家や業者さんから旬のものを取り寄せ、北海道の野菜はやっぱり違うね、と実感していただけるよう工夫して魅力を引き出しています」と木下さん。
じゃが芋、人参は収穫したてだけでなく、1年氷温貯蔵で旨みや糖度を高めたものなど料理によって使い分けています
春から初夏は、ホワイトアスパラガス、グリーンアスパラガス、トウモロコシなど北海道特産の野菜が、炭火焼き、ポタージュ、春巻きなどで登場します。北海道の旬の魚介だけでなく、野菜のおいしさも【KINO_】の魅力です。
札幌から東京へ。変えないこと、変えたこと
東京進出で改めて北海道の食材の良さを実感し、その魅力を変わらずアピールしていきたいと思う一方、「今まで使っていなかった食材で料理の質を上げられるものに出会えれば北海道産に拘らず取り入れていきたい」と話す木下さん。特に高級鮨店で使われている西日本の魚介の質の高さに感銘したとのことで、新たな料理も生まれています。
「食材を最大限に活かしたいという思いが膨らみ、時にフレンチという枠も外していいのではないかと考えるようになった」と話す木下さん。「自分が食べて好きだな、おいしいなと思ったものを素直に表現できたらと思っています」とのことで、フレンチというジャンルを越え、イノベーティブ、あるいはフュージョンというジャンルに変わりました。
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関西の仲買い業者から直送される極上鰆(サワラ)を炭火で皮目のみ炙って叩き風に
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「ソースや薬味でひと工夫していますが、お刺身的な感覚で軽やかに楽しんでほしい」と木下さん
醤油やカボス、ショウガ、バルサミコを使った和テイストのソースが素材のおいしさを引き立てています
「前菜では、旬の魚介を使ってお刺身のように楽しめる一品を必ず入れるようになりましたし、春巻きのように仕立てた料理など、食材そのもののおいしさを最大限に活かすためなら、和の要素、チャイニーズの要素、あるいは洋食のようなスタイルも臆せず取り込んでいきたいですね」と木下さん。瀬戸内の鬼鯵を使った究極の鯵フライも既に評判の一品になっています。
アットホームなもてなしが期待できる温かみのある店内
「札幌ではクローズキッチンでしたが、【KINO_】ではカウンターメインのオープンキッチンになったのは大きな変化です。「お客様とカウンター越しに話をするのは新鮮な体験。料理に集中しがちなので、これから徐々に会話上手にならくてはと思っています」と苦笑する木下さん。
手が空いている時に話しかければ食材のこと、料理への思いなど熱く語ってくれるに違いありません。
入手困難な新政など日本酒ペアリングも楽しめる
食材の仕入れだけでなく、ワインや日本酒の仕入れも今まで培ってきた経験や人とのつながりを生かして入手困難なものも揃えています。「秋田の新政酒造では友人が蔵で働いているという縁で日本酒ペアリングも積極的に取り入れるようになりました」と木下シェフ。8代目蔵元・佐藤祐輔さんは【KINO_】がオープン早々に食事に訪れ、サワラの料理と『涅槃龜(にるがめ)』のペアリングを佐藤さん自らが提案してくれたそうです。
このほかにも、『産土(うぶすな)』(熊本/花の香酒造)、『田中六十五』(福岡/白糸酒造)など日本酒ファンには嬉しい人気のラインナップでペアリングを楽しむこともできます。
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スペシャリテのイカ飯に合わせたのは、『新政No.6 純米生酒 S-type』
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サワラの前菜には精米歩合88〜92%という革新的な製法で造られた低精白純米酒『涅槃龜(にるがめ)』を。※お酒の種類は入荷によって変わります
ワインは、フランス産のものに加え、親しくしている北海道の生産者のワインも取り揃えているのが特徴です。特に仁木町のヴィニャ・デ・オロ ボデガのワインやシードルを東京で飲めるお店は希少。まだ飲んだことのないワインとの出会いも楽しみに通いたくなります。
入手困難な日本酒、ワインがずらり。他では飲めない1本に出会えるお酒の品揃え
夜のコースは、アミューズ、前菜2品、スープ、お魚料理2品、お肉料理、デザートとお皿の数は多めですが、「おいしいものを少しずつ味わいながら、食後感がちょうどいい、という適切な分量を心がけています」と話す木下さん。札幌時代からの美味食材も大切にしながら、品質が高いものならエリアは問わず、調理法もフレンチにこだわらないという柔軟さで自分らしさを表現しようとしています。本当にいいものを見極める眼力と、そのおいしさを活かす技術を兼ね備えた経験豊かな実力派、木下さんの集大成となるこれからの歩みが楽しみでなりません。
カウンターの後ろには、ゆったり過ごせるテーブル席も
KINOにアンダーバーで「きのした」と読ませるウィットに富んだ店名のロゴデザイン
この記事を作った人
撮影/佐藤顕子 取材・文/藤田実子
フード・ワイン・日本酒などのを生み出す人々の日々の仕事、思い、人生、哲学に興味を持ち雑誌・書籍などで取材を重ねている。執筆作品に『鮨 一幸のすべて』『鮨さいとう 鍛錬と挑戦』(ともにカドカワ)などあり。ライター歴30年。
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