未知の美味に遭遇! 四川の食堂や家庭で愛され続ける郷土の味を飄香流に再構築|【竹韻飄香】代々木上原
四川省の伝統の味をブラッシュアップしてきた【飄香(ピャオシャン)】。都内4店舗目となる【竹韻飄香(ジュユィンピャオシャン)】は、四川の食堂や一般家庭で食べられている庶民の味がテーマ。オープンキッチンから臨場感たっぷりに繰り出されるのはどれも食べたことがない料理ながらもどこか懐かしい味わいが病みつきに。待望の新店に早速行ってみました。
カウンターメインのモダンチャイニーズキッチン
【飄香(ピャオシャン)】グループ初となるオープンキッチン。唐辛子や花椒はじめ香り高いスパイスの香りの臨場感も堪らない
【飄香】といえば、コースでいただくハレの日料理というイメージですが、ここはグループ初となるオープンキッチン、カウンターメインの造り。漢詩の額など従来のクラシックな雰囲気を残しながらも、グレーのコックコートを着たスタッフ、器使いなどすべてにおいてモダンな印象。【飄香】の新たな挑戦、意気込みを感じることができ、期待が高まります。
パンダが生息する四川は、竹の名産地。店名にも“竹韻”と冠し、お店の前には竹の植栽を配して四川らしさを強調
四川にどハマりしているシェフたちの愛情溢れる料理を
井桁氏と同様、四川料理愛溢れる廣瀬文彦料理長
カウンターで指揮を執るのは、井桁氏の愛弟子であり、【飄香】本店をはじめ、銀座三越店、六本木ヒルズ店の料理長も務めてきた廣瀬文彦氏。井桁氏とは22年前に新入社員として入社した【天外天】で出会ったそうです。
料理好きが高じて四川料理にハマったという廣瀬氏ですが、井桁氏の本場中国での修業体験談を聞いてますます探究心を刺激され、2年の長期留学を決心。帰国後2007年に【飄香】に入社して以来、片腕として活躍してきました。2人の四川料理への愛の深さ、信頼関係の厚さも【飄香】のブレのない美味しさと関係があるように思えます。
唐辛子や花椒を使った辣油や、空豆を発酵させて作る豆板醤、豆豉、もち米を発酵させる“醪糟(ラオザオ)”など調味料の多くは自家製にしている
「四川料理というと麻婆豆腐や棒々鶏、担々麺などがポピュラーですが、それだけでなく、井桁シェフや私が現地で感動した味をもっともっと知っていただきたいと思って伝統料理のレシピも掘り起こしながら、日本人の口に合うよう、そして、できるだけヘルシーにと素材を厳選したり、自家製で調味料を作ったり、料理法を工夫するなどしてきました」と話す廣瀬氏。【竹韻飄香】では、四川省の人々が家庭や食堂など普段の暮らしの中で食べている料理をテーマにしたそうです。
「郷土料理的な素朴な味わいのものもあれば、辛味たっぷりのパンチの効いた料理もあります。現地で食べた印象はそのままですが、味わいはもちろん【飄香】流にブラッシュアップできるよう工夫を重ねています」と新たなメニューを考えるのが楽しくて堪らない様子にこちらも気持ちが上がってくる。
スパイシーだけどほっこりする優しい味わい
『竹韵粉蒸鶏』 煎ったお米をまぶしてしっとり柔らかく蒸した四川伝統の鶏肉料理。2,200円
郷土的な味わいを大切にしながらも、香りや食感を改良しながらより丁寧な仕事で現地よりも美味しい料理に仕上げて煎る【竹韻飄香】。その真骨頂を味わえるのが『竹韵粉蒸鶏』。“粉蒸”というのは、カボチャ、サツマイモ、ジャガイモ、豆などホクホクとした食感の野菜や豚、鶏、羊などの肉にうるち米をまぶして蒸す調理法のことで、四川ではかなりポピュラーな料理だそうです。
「でも、現地で食べるとボソボソとしていて、素朴な魅力はあっても美味しいとは思えなかったんです」と廣瀬さん。「唯一、研修先のお店で、米のふわっとした甘みやネギと花椒の爽やかな香りに癒されるのと同時にしみじみとした美味しさに感動しました」。
その感動を表現したいと工夫を重ねた結果、うるち米だけでなく、しっとり感の出るもち米、香りの良いジャスミン米の3種の米とスパイスを一緒に煎ることに。そして細かく刻んだネギと花椒、そして鶏をしっとり柔らかく仕上げ、優しい味わいを醸し出す隠し味として腐乳を加えたソースと一緒に鶏肉と安納芋を蒸し上げています。
『豆渣香酥鴨』 柔らかく蒸した鴨の香り揚げ、スパイシーおからソース。2,640円
しっとりと柔らかい肉がほろっと骨から簡単に外れる『豆渣香酥鴨』は、その肉の質感が低温の油でじっくり火を入れるフランス料理のコンフィに似ています。豆腐の搾りかす“おから”は、四川ではソースとしてよく使われているそうです。確かにスパイスとよく馴染み、『竹韵粉蒸鶏』同様にスパイシーながら優しい味わいでいくらでも箸が進みます。
スパイスでマリネして低温で4時間蒸した鴨の腿肉を熱い油を何度もかけてパリッと揚げる
このおからソースには、鴨を蒸した時に出た汁を吸わせた蕎麦の実を加えてアレンジ。蕎麦の実のプリッとしながら少し粘りのある食感や香りをアクセントに加えているところが秀逸。忘れられない一品になること間違いなしです。
『酒仙牛肉』 味噌漬け岩手短角牛の一夜干し“酒仙”李白に捧ぐ“ 3,520円
『酒仙牛肉』は、豚肉に醬とスパイスを塗って干す四川の伝統的保存食“醬肉(ジャンロウ)に着想を得て、牛の赤身肉を使って再構築した一品です。肉の表面に甜麺醤ともち米を発酵させた調味料“醪糟(ラオザオ)”や唐辛子、花椒など10種ほどのスパイスを塗ってドライエイジングで旨味を凝縮させてから低温で焼き上げています。一見ローストビーフのようですが、スパイスの味が染み込み、旨味もたっぷり。詩人・李白が醬肉をお酒のつまみとして愛していたという逸話がメニュー名の由来とのこと。まさにお酒が進む味わいです。
お酒も四川流をアレンジ。オリジナルカクテルに注目!
ワインや紹興酒だけでなく、オリジナルのカクテルも充実。『竹韻モヒート』(左)、『麻辣ハイボール』(右)など990円〜
四川省では、紹興酒よりも蒸留酒の“白酒(パイチュウ)”が主流。現地の方はストレートでぐいぐい飲み干しているそうですが、アルコール度数はなんと50度〜65度! そこで、唐辛子を漬け込み、炭酸で割ったオリジナルカクテル『麻辣ハイボール』にアレンジ。ほどよい辛さがスパイシーな料理と相乗して美味しさを広げてくれます。
また、店名に因み、竹をイメージした『竹韻モヒート』は後味すっきり。ほかにも料理と一緒に飲んで美味しいカクテルやワイン、紹興酒も充実しています。
カウンター席の後ろにはしっとりと過ごせる2名用のテーブルも。そのほか6名までのテーブル席やテラス席もある
井桁氏、廣瀬氏という四川料理への造詣が深い二人が、古いレシピを紐解き、現地で体験した感動をそれ以上の味わいで再構築している【竹韻飄香】。今まで日本ではあまり紹介されてこなかった未知の味わいというマニアックなものにもかかわらず、首をかしげるような難解なものではなく、誰もが癖になるバランスの良いスパイス使いが絶妙で、食感や香りに懐かしさ、優しさの演出が工夫されているのがここならでは。四川の奥深い食文化の魅力に虜になること間違いでしょう。
料理が美味しいだけでなく接客のクオリティーも高いことで定評のある【飄香(ピャオシャン)】
アラカルトで頼んだ料理を1、2品つまみながらお酒を楽しむもよし、コースで色々な味を楽しむのもよし、カウンターでひとり飲みもできれば、テーブル席でしっとりデート、あるいは仲間と取り分けてなどなどTPOに応じて使い分けることができます。お料理も使い勝手も抜群言うことなし。名店の実力をカジュアルに、そして、四川の郷土料理をスタイリッシュに楽しめる世界的に見ても唯一無二のモダンチャイニーズといえるでしょう。
撮影/佐藤顕子 取材・文/藤田実子
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