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更新日:2025.08.09旅グルメ 連載

フランス・ブルゴーニュ【コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第82回

白ワインの世界最高峰といえば、フランスはブルゴーニュ地方のモンラッシェ。なかなか手が出る値段ではありませんが、そんなモンラッシェの畑に泊まれるといったらどうでしょう。今回は、そんなホテル「コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)」と、フレンチの話です。

コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)

1日目

ブルゴーニュ地方はワインの生産地として世界的に有名ですが、なかでも最高の白ワインを生産するグラン・クリュ(特級畑)がモンラッシェ(正式なAOCとしては6つのグラン・クリュ)。この畑を取り囲むようにピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村があり、このエリアで生産されるシャルドネ種による素晴らしいワインは、ワイン愛好家のみならず多くの人たちを魅了しています。

    ブルゴーニュ地方

今回、泊まったのは、ピュリニー・モンラッシェ村にある「コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)」。村の中心に19世紀に建築されたという建物を改装し、4つの建物に28室という貴重な宿泊体験ができるところです。
周りがすべてモンラッシェの畑ですから、まさに最高峰のワイン畑に囲まれて眠れるというわけです。

  • コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)

  • コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)

トワルド・ジュイや陶器など地方性を意識した女性建築家パオラ・ナヴォーネ氏によるデザインは、女性独特の視点で伝統のなかに現代の感覚がうまく取り入れられています。全体がこじんまりとしたホテルで、ほっとくつろげる、田舎の別荘といった感じです。2023年にオープンしてすぐにワン・ミシュラン・キーを受賞しています。

オープンしてまだ日が浅いので、客層はフランスや他のヨーロッパ諸国、アメリカやシンガポールなどからが中心で週末に車で乗り付ける人も多いようです。小さいながら庭の隅にプールがあって、リゾート感もあります。雑音から遮断され、静かに優雅な週末やヴァケーションを過ごすには最適なところです。

    モンラッシェの畑

私は週末に2泊して、自転車を借りてモンラッシェの畑を回ったり、ボーヌまで足を延ばしたりしましたが、どこも近く、このサイズ感は快適です。ふと田舎で夏休みを過ごした少年時代を思い出したりしました。

    モンラッシェの畑

    モンラッシェの畑

    モンラッシェの畑

初日のディナーは、仔牛の胸線やシーバスを使った料理がメインです。

前菜のグリーンアスパラと卵黄のコンフィをプイィ・フュメ、ピュリニー・モンラッシェでいただき、仔牛とコロンナータ(豚の背脂ハム)には赤ワイン「サン・ロマン(スー・ル・シャトー)」をソムリエが合わせてくれました。

  • ロマン・ヴェルシーノシェフ

  • ピュリニー・モンラッシェ

シェフのロマン・ヴェルシーノさんに話をきくと
「基本、地元の食材をフレンチの伝統的な技法で料理しています。骨格はクラシックですが、技法も含め見た目や味付けは現代的です。今日のシーバスなどはモンラッシェのワインに合わせてイメージしました」。

全体に心地よい軽やかさを感じます。シェフが南仏などで修業されていたのがわかる気がします。そしてフレンチらしく、チーズはたっぷりとワゴンでサーブされます。ワインの酔いも手伝って瞼が重くなります。

ヨーロッパの夏の夕暮れは遅く、10時近くでもまだ明るかったりします。
食後に少しワイン畑を散歩し、心地よい夜風に吹かれて眠りました。

2日目

ピュリニー・モンラッシェ村にある「コモ・ル・モンラッシェ(COMO Le Montrachet)」では窓越しに差し込む朝日と小鳥のさえずりで目が覚めます。

実に気持ちいい目覚めです。

    コモ・ル・モンラッシェ、COMOLeMontrachet

プールの見える庭を眺めながら朝食をいただき、あまり暑くならないうちから自転車でまた畑を散策です。今日はここのすぐ隣のムルソーやポマールの畑を見て、ボーヌまで足を延ばすことにしました。

    ボーヌ

ボーヌはこのあたりの中心地で中世の街並がそのまま残っています。オテル・デュー美術館(オスピス・ド・ボーヌ)では当時の生活を学べますし、ネゴシアン(ワイン商社)も多く日本人にも馴染みがあるところです。美食の街でもありますね。ここを起点にグラン・クリュ街道を巡る人も多いとか。

  • シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン

  • シテ・デ・クリマ・エ・ヴァンの屋上

2023年にオープンしたばかりの「シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン」では、ワイン産地の魅力が総合的に学べるようになっていて、今回はこちらをゆっくり見学することができました。屋上にあがるとワインの聖地コートドール(黄金の丘)が目の前に広がっています。これはなかなか感動的な景色です。

帰り道、ムルソーのワイナリー見学と試飲ツアーに参加してみました。いくつかこういったツアーはありますが、私が今回参加したのはシャトー・ド・ムルソー。11世紀からの歴史を持つ名門です。20人ほどのグループでワイナリーと土壌の説明等を受け、それから5種類ほど試飲します。

ムルソーも世界的に有名な白ワインの産地です。グラン・クリュはありませんが、高評価のプルミエ・クリュが多く存在します。よく言われる特徴はバターの風味。たしかに独特のコクを感じるワインなのです。

それと比べるとモンラッシェのワインは、キレが良く、特にピュリニーにおいて、よりミネラルを感じ、シャサーニュには果実味を感じます。隣の畑でもこれだけ違ってくるということを体験すると、ワインの深さというものに改めて驚いてしまうのです。

    ブルゴーニュ地方の畑

さてホテルに戻ってディナーです。今日は鳩を出してくれるとか。グラン・クリュをお願いすると1本20万以上はするので、1人ではもったいない。今日もプルミエ・クリュでいきます。

    プルミエ・クリュ

    エスカルゴ

最初はエスカルゴですね。これはこのあたりでは本当によく食べられており、名物のひとつと言っていいでしょう。サザエを蒸したような食感で、実に味わい深い。パセリ等の野菜のエマルジョンです。

それに魚はでかいイワナですね。添えられたアンティチョークなどとともに。これらを、ピュリニーのプルミエ・クリュでいただきました。

    コモ・ル・モンラッシェ、COMOLeMontrachet、ディナー

そしてメインはシリアルクラストでくるんだ鳩とフォアグラ、野生きのこ添え。伝統的な料理「鳩のパイ包み」をシェフがアレンジしたものです。ロッシーニ的な重厚感とジビエ感もあって、なかなかすごい料理です。

ここはソムリエはサントネーを合わせてくれました。最後にがっつりフレンチがきました。

  • コモ・ル・モンラッシェ、COMOLeMontrachet、チーズ

  • コモ・ル・モンラッシェ、COMOLeMontrachet、デセール

チーズとデセールをいただき、もう一度プルミエ・クリュを冷やして一杯用意してもらい、また夕暮れの畑を散策しました。

    フランスの葡萄畑

葡萄畑の先に教会の塔が見え、それらがだんだん黄昏ていく。
ミレーの晩鐘のような荘厳な風景が静かに闇に溶けていきます。

「コモ ル モンラッシェ(COMO Le Montrachet)」
10 place du Pasquier de la Fontaine, 21190 Puligny-Montrachet, France
+33 03 80 21 30 06
lemontrachet@comohotels.com
公式サイト:https://www.comohotels.com/jp/burgundy/como-le-montrachet

この記事を作った人

小西克博/ヒトサラ編集長

北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。

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