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更新日:2017.06.19グルメラボ 連載

福岡の名店めぐり from「ヒトサラSpecial」

周囲を海に囲まれた博多は、魚がめっぽう旨い街として知られています。そんな旨いものが揃う博多の名店を巡ってみてはいかがでしょうか。

福岡の名店めぐり  from「ヒトサラSpecial」

【博多味処いろは】

鳥の旨みを凝縮させた、シンプルな水炊き

 最初はスープのみ。テーブルごとに専属の仲居さんが担当し、温まったスープに薬味のネギと少量の塩・柚子胡椒を入れ、味見させてくれる。その一口で胃はふっと温かくなり、じんわりと鳥の濃厚な滋味が口に広がる。そして、この一杯だけで店の自信が一気に伝わってくる。
 「佐賀の麓どりは臭みが少なく、旨みが強い。そして赤鶏らしい味わいで水炊きには最高にあいますよ」
 
 現四代目店主の原田隆史氏は、使用する鳥について何も隠すことなく教えてくれる。炊いた時には身が崩れず、かぶりつけば身離れよし。さらに皮の歯ごたえよく、脂の旨みも申し分ない。これは5年ほど前、諸事情によりそれまで使用していた鳥が使えなくなり、結果、何種も試食を重ねてたどり着いた自慢の鳥。スープも原田氏が、毎日、つきっきりで5~6時間かけて丹念にアク取りし、守り続ける味。

    本日のスープをチェックする四代目・原田隆史氏。毎日繰り返されるこの作業こそが鍋の味を最も左右する

    本日のスープをチェックする四代目・原田隆史氏。毎日繰り返されるこの作業こそが鍋の味を最も左右する

    水炊きのスタートで供される鳥スープ。まずは濃厚なスープで店のこだわりを感じてほしい

    水炊きのスタートで供される鳥スープ。まずは濃厚なスープで店のこだわりを感じてほしい

 「水炊きといっても、この味しか知らないですからね。若くして父が体調を崩し、店を継いだので本当にこの味しか知らないんですよ」
 そう言って笑うが、だからこそぶれず、一本道を歩んできた。昭和28年から続く老舗水炊き店【いろは】。これこそが博多で長く愛される水炊きの味。

 スープで炊いた骨付き肉、続いてもも肉でつくるミンチ、さらにその旨みを丸ごと吸って旨みを倍増させるキャベツ、〆の玉子がふわふわの雑炊まで、鳥の旨みを余すところなく味わえる怒涛の構成。味わうたびに旨さが倍々に増えていく、その感動を体験されたし。

  • タレントや著名人のサインで埋め尽くされる1階フロア。店はほかに個室や大広間なども備える3階建て

    タレントや著名人のサインで埋め尽くされる1階フロア。店はほかに個室や大広間なども備える3階建て

  • こちらも代々伝わる自家製の『辛子明太子』。あまり辛くせず酒を利かせた味わいで酒肴としても最適

    こちらも代々伝わる自家製の『辛子明太子』。あまり辛くせず酒を利かせた味わいで酒肴としても最適

【もつ幸】

鶏ガラスープで煮込み、酢醤油で味わうもつ鍋

 今や押しも押されぬ博多の名物であり、庶民に愛される味といえばもつ鍋。なかでも地元のタクシー運転手であれば十中八九がこの店の名前だけで場所がわかるという人気店が、1978年創業の【もつ幸】だ。

    もつ鍋の手順は各テーブル、店のスタッフが担当。その手際の良さや絶妙な火入れの加減も腕の見せ所だ

    もつ鍋の手順は各テーブル、店のスタッフが担当。その手際の良さや絶妙な火入れの加減も腕の見せ所だ

 元は夫婦二人ではじめたという同店。他店がしょうゆベースや塩ベースのスープで味わうのに対し、こちらは鶏ガラのスープで煮た具材を自家製の酢醤油で味わうオリジナルスタイル。それもそのはず、出自は中洲のスナックでつまみとして出していた小鍋仕立てのもつ鍋であり、まさに酒の肴として誕生した逸品なのだ。そのすっきりとした味わいは評判となり、その後専門店として営業。以来、40年近い年月を重ねるわけだが、夫婦でつくりあげた味わいは今なお色褪せることなく輝き、二代目・松尾一豪氏がさらに磨きをかける。

    小腸、センマイ、赤センマイ、ハツの4種のもつを使用する『もつ鍋』。鶏ガラスープで炊く、水炊き風だ

    小腸、センマイ、赤センマイ、ハツの4種のもつを使用する『もつ鍋』。鶏ガラスープで炊く、水炊き風だ

  • 初代の松尾夫妻がつくりあげたオリジナルのもつ鍋を、現在は息子の一豪氏が受け継ぐ老舗

    初代の松尾夫妻がつくりあげたオリジナルのもつ鍋を、現在は息子の一豪氏が受け継ぐ老舗

  • 鍋の〆にはちゃんぽん麺。大量のすりごまを麺が隠れるほど投入するが、これがコクと旨みを倍増させる

    鍋の〆にはちゃんぽん麺。大量のすりごまを麺が隠れるほど投入するが、これがコクと旨みを倍増させる

 「もつが届くのは毎日12時頃、鮮度が重要だから当日に仕入れます。そしてベースの鶏ガラスープは朝の10時から仕込んでいるんです。時間はかかりますが、丁寧にした処理した分だけ旨みは増しますね」
 この手間を惜しまぬ情熱と、鮮度抜群のもつこそが店のベースだと松尾氏。さらに鍋に浮かべた餃子の皮はもちとろの食感で楽しませ、追加の水餃子もファン多し。〆のちゃんぽんに至っては極限まで煮詰めたスープと麺を絡めたのち、大量のすりごまをかけて味わうオリジナル。何から何まで独創性あふれるもつ鍋こそが真骨頂なのだ。唯一の無二の鍋、一度試していただきたい。

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ヒトサラ編集部

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