外食名人が語る! 2017年グルメトレンド予測 ~前編~
2017年のグルメトレンドとはなにか? フードライターの小石原はるかさん、飲食プロデュースを手掛ける中村貞裕さん、料理家の山脇りこさんという食のプロ3名に、それぞれの視点から現在の飲食市場の旬と走りについて、語り合っていただきました。
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「うどん居酒屋」に「焼きそば」。昨年は密かな麺ブームに
「ナチュール」と「ヴィーガン」。一方で「肉」人気は根強い!?
クラフトビールの次は、「クラフトジン」に熱視線!!
「うどん居酒屋」に「焼きそば」。昨年は密かな麺ブームに
小石原(以下、小) :2016年を振り返ると、まずは博多うどんが話題になりましたよね。まさに、その仕掛け人のひとりがここにいるわけですが(笑)。
中村(以下、中) :【二○加屋長介】ですよね。これはタイミングがよかっただけです。自社だけでは店舗として話題になることはありますが、世の中のトレンドとなるには、何店舗か同じような店が必要になる。もちろん、数年前から博多うどんとうどん居酒屋には注目していました。麻布十番に【益吉】という、一見地味な店だけど立派なうどん居酒屋があって面白いと思っていましたしね。そして、2016年になって【博多一風堂】と【焼とりの八兵衛】による【イチカバチカ】がオープンしたんです。タイミングとしては抜群でしたね。
小: 博多うどんの勢力は、2017年もそのまま続きそうな雰囲気ですね。博多うどんって、「出ては消え、また現れてはいつのまにか消えて…」というような歴史がありませんか!? 「ここで何とか定着を!」という思いも込めて、今年も注目していきたいと思っています。
山脇(以下、山) :ついに博多うどんが関門海峡を越えてきましたね。NYでもネクストラーメンで、うどんだったり。
「博多うどんの勢力は、2017年もそのまま続きそうな雰囲気」と小石原はるかさん
小:それと、個人的には焼きそばも勢力を広げたのではと。
中:僕も白金高輪の【BAR チェローナ】はよく行きます。あの無添加焼きそばは美味しいですね。
中:その一方で、海外に足を運んで感じたのが、モダン・インディアンの台頭です。日本でもずっとやりたいと思っているんですよ。
山:それは私も同感で、ニューヨークの【インディアン・アクセント】というレストランは、2016年で最高に感動した店のひとつでした。
中:メインストリームにはならないかもしれないですが、モダン・インディアンは日本でも密かな話題をさらうと思います。
「ナチュール」と「ヴィーガン」。一方で「肉」人気は根強い!?
山:私個人としてはヴァン・ナチュールが来ていると思いますがいかがでしょう。もちろん、ナチュールの流れはずっと以前からありましたけど、それが特別ではなく、ついにスタンダードとして定着したのかな、と。ワインバーに行って自然派が置いていないと、物足りないというか、残念になります。
中:そうですね!
山:ナチュールのあるなしって店の姿勢みたいなものを象徴していると感じます。初めて訪れる土地でも、ナチュールをキーワードに店を探すと、必ず芯のある店、食材に強いこだわりのあるシェフにたどり着きます。それと、ヴィーガン。ヴィーガンの店ってことではなく、メニューにヴィーガンという選択肢があるのが当然になってくる気がしますし、強みになる。
「ナチュールが特別ではなく、ついにスタンダードとして定着してきたと感じます」と山脇りこさん
小:そういった意味でも、昨年はカスタム・サラダが来ましたしね。けれど、そういいながら私は〝肉〟の勢いは続くと思っています。羊肉の浸透具合が右肩上がりになっていますし、鹿肉を扱う料理人も多くなっているような気がします。蝦夷鹿の肉はとくにですね!
中:女性は羊好きですよね。自分の店でも、女性のほとんどが羊肉を選びますから。
クラフトビールの次は、「クラフトジン」に熱視線!!
山:食材としては国産のレモンがものすごくおいしくなったと感じます。世界に負けないレモン。意外と知られていませんが、昔の日本にはレモン農家さんが多くいたらしいんですよね。戦後の事情で減ってしまったみたいですが。でも、20 年くらい前からまたレモン栽培が盛んになってきた。とくに、ここ5年くらいは、生口島などの瀬戸内エリアや熊本など九州エリアで、世界に誇れるすばらしいレモンが多くできています。
小:それを物語るように、レモンサワーが流行ってきていますよね? 大衆酒場の脇役から、店によってはこだわりの一杯へと変わりつつある気がします。
山:昔、国産のレモンは果汁が搾りづらい、皮が固いとか言われていましたけど、ジューシーで皮までおいしい減農薬や有機栽培のレモンも多くなりました。
小:本当に皮まで使いたいくらいですよね。レモンサワーでぐいぐい搾って立派な皮だけ残ると「もったいないなぁ~」って思います。
中:話の腰を折るようですが、自社でケータリングをやっていて、実は〝マッチョ需要〟が高いんです。マッチョなスタッフがレモンやグレープフルーツをひたすら搾ってサワーを作るというケータリングが密かに人気なんですよ。グルメトレンドとは一切関係ありませんが。
一同:笑。
「クラフトジンの波には乗り遅れないようにと思っているんです」と中村貞裕さん
中:お酒繋がりで言わせていただくと、今年はジン、とくにクラフトジンに注目していきたい気持ちが強くありますね。今、いい街には必ずクラフトジンの店ができています。実際、自社にも海外から「お店をやってくれないか」という問い合わせが続々と届いています。ここ何年かで勢力を広げたクラフトビールの店も自社でプロデュースをしましたけど、自分たちとしては仕掛けるタイミングが少し遅かったと思っています。だから、クラフトジンの波には乗り遅れないようにと思っているんです(笑)。
山:ジンは応用もききますしね。私は梅酒もほとんどジンで作りますし、教室でもそうしています。みんなおいしくてびっくりするんですよ。レモンチェッロやショウガのお酒もジンで作ります。香りもいいし、飲んだことない人もいないから、少し目新しさがプラスされたら、広がりやすいですよね。(後編に続く)
2017年、外食名人の3人が注目しているお店をご紹介
中村貞裕さん推薦-
01_【傳】
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「2016年12月に神保町から外苑前へと移転したばかり。新たな地でどんな形に変化し、進化していくのか。新天地での名店の第二章が純粋に気になりますね」
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02_【くろぎ】
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「【くろぎ】も移転こそしておりませんが、大門へと移る話があった。キャパシティをグッと減らす予定だったとか。カウンターで楽しむ日本料理の真髄。その先を見たいですね」
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01_【鳥勢】
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「JR総武線沿線の錦糸町、亀戸、小岩と合わせ、通称〝3K″と呼んでいるのですが、その中で小岩らしいなと思ったのがここ。焼き鳥1本60円、アルコール持ち込みOKの立ち食い焼き鳥。オープンな雰囲気と店主が面白い」
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02_【スガハラ】
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「都心の中心部でも勝負できるクオリティを持ちながら、あえて錦糸町を選択。その分、価格に反映し、スタッフとの距離感が近いアットホームな雰囲気もいいですね」
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01_【ビストロアンクゥー】
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「ナチュールの神様と言われる、マルセルラピエールの元で畑仕事からワインづくりを学んだオーナーの飯野さん。彼が選び、注ぐワインは+αの魔法でおいしいです」
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02_【太庵】
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「対面の昔ながらの割烹で気どったところがなく、誠実さの伝わるお店。私の中でいまのところ日本で1番、出汁が美味しいお店です」
<Profile> 中村貞裕さん(飲食プロデューサー)
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「TRANSIT GENERAL OFFICE」代表取締役社長。【sign】をはじめ多くの店を手がけたカフェブームの立役者。モダンギリシャレストラン【THE APOLLO】などのレストラン運営、ホテルなどのプロデュースも行い、話題のスポットを次々に生み出す
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好きなものはとことん突き詰める偏愛系フードライター。これまでにも発酵食品、讃岐うどん、ホルモンなどの世界にどっぷりとハマってきた。近著に『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)などがある
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東京・代官山の料理教室「リコズキッチン」主宰の料理家。伝統にモダンなエッセンスを加えた、”今日の家庭料理” を提案。著書に『ノンオイル&10分でできる昆布レシピ95』(JTBパブリッシング)がある
撮影/佐藤顕子 取材・文/吉田慎治
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