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更新日:2022.01.28食トレンド

恵比寿【中國菜 李白】|夫婦で生み出す「四川」×「広東点心」の融合。刺激と和みのメリハリが効いた独創的なコース

代々木上原の【虞妃(ユイフェイ)】で7年半シェフを務め、人気店へと押し上げた佐藤剛さんが満を辞して2021年7月に独立。恵比寿に開いた新しいお店【中國菜 李白】のコンセプトは「四川と広東飲茶の融合」とのことですが、厨房に立つのは、佐藤さんではありません。どんな秘密が隠されているのか、お店に伺ってみました。

蟹爪と蓮根の蒸し餃子,ゆり根と豚肉の湯葉巻き

隠れ家的な立地も魅力。大人のモダンチャイニーズ

    李白の内観

    ダイニングは中国×西洋のイメージ。ディナータイムは照明を落としシックな雰囲気を強調

恵比寿ガーデンプレイスの裏手、路地の奥にひっそりと佇む隠れ家的なお店は、町中華ではなく大人のモダンチャイニーズといった雰囲気です。

    李白の個室

    店の奥には、4名から6名で利用できる個室が1室。こちらは中国×和のテイストとのこと。柔らかな間接照明が和やかさを演出

オーナーシェフの佐藤剛さんは、19歳で四川料理や上海料理店で働いた後、四川大学に料理留学もするなど四川料理の高い知識と技術の持ち主ですが、このお店では主にサービスを担当しています。

    オーナーの佐藤剛さん

    2021年7月、【中國菜 李白】のオーナーとなった佐藤剛さん。一旦鍋を振るのをやめて、経営と接客に専念

「今までと同じように料理だけやっていれば楽ですが、自分で店をやるからには何か新しいものを生み出したいと思ったのです。また、これまでとは違う位置でお客様のニーズを察するという経験もしておきたかった」と佐藤さん。基本的に料理のことは“二人”のやりたいようにと任せて、オーナーの立場で見守っているそうです。

息の合った夫婦が生み出す「四川」×「広東」のマリアージュ

    シェフの木村侑史さん

    四川料理一筋に道を極めてきた木村侑史さん。「伝統を大切にしながらも素材使い、調理法など独自の工夫も加えて個性を出していきたい」と話す

料理長を務めるのは、佐藤さんと同じく四川料理の名店【老四川 飄香(ピャオシャン)】で働いていた木村侑史さんと、点心師で奥さんでもある木村葵さん。

「この二人と仕事をすると決めたとき、四川と広東の融合をコンセプトにというアイデアが浮かびました。それぞれ超一流店で研鑽を積み、専門性を磨いてきたスペシャリストです。しかもとても息が合った夫婦。この二人なら、今までなかった四川と広東飲茶のマリアージュで新しい価値を生み出せるのではないかと…」と佐藤さん。

    点心師の木村葵さん

    【赤坂離宮】、ウェスティンホテル内の【龍天門】など、広東料理の名店で点心師として腕を磨いてきた木村葵さん

「やみくもに融合するのではなく、流れの中で意味を考えながらコースを組み立てています。せっかく夫婦で仕事をするのだから、自分たちにしかできないことをやっていきたい」と木村夫妻。

季節感、食感、料理の余韻など考えながら素材や調理法を選び、メリハリの効いたコースを毎月考えているそうです。

    蟹爪と蓮根の蒸し餃子,ゆり根と豚肉の湯葉巻き オイスターソース

    『蟹爪と蓮根の蒸し餃子』と『ゆり根と豚肉の湯葉巻き オイスターソース』

葵さんが一つ一つ丁寧に作る点心は見た目からとても美しく繊細。刺激的でパンチの効いた四川料理の合間にほっこり、口直しだけでなく、気持ちも一度リセットして再度辛いものに挑戦、という起伏が楽しめるのはここならでは。メニューはその時々の旬や季節感が楽しめる食材を選び、食感などで驚かせてくれるので、毎月楽しみに通いたくなります。

    鹿肉と蟹肉の四川味噌炒め

    現地で仕入れた唐辛子などを使い自家製にした四川調味料で作る『鹿肉と蟹肉の四川味噌炒め』(夜のコースより)

昼も夜もコースのみなので、料理は季節ごとに変わっていきます。「四川料理が大好きで、どう料理したらもっと美味しくできるのか、常に考えています」と話す侑史さん。冬は、ジビエも登場します。

北海道美唄市から直送の蝦夷鹿肉を塊のまま低温でじっくり火入れ。中をレアに仕上げてから、程よく厚切りにし、葉ニンニクとともに自家製の甜麺醤、豆鼓、豆板醤などの四川調味料で炒めたこの料理は、食感、香りなど赤身の鹿肉ならではの個性ある美味しさが見事に活かされていて、侑史さんの実力のほどが伺えます。

    白子とおぼろ豆腐の麻辣

    白子と豆腐の2つの食感が楽しい『白子とおぼろ豆腐の麻辣』(夜のコースより)

四川省では白子の麻婆が一般的だとか。別に味を入れたふわふわの豆腐の上に、白子の豆板醤煮込みをあんかけのようにかけています。18種類の香辛料で作る香り高くスパイシーな自家製辣油も決め手。忘れられない食感と香りに魅了される一品です。

    中国山東省のワイン「シャトー・9ピークス」

    故ジョエル・ロブション氏の息子でありワインのインポーターでもあるルイ・ロブション氏が輸入している中国・山東省の『シャトー・9ピークス』

「エリア的にワインを飲まれるお客様が多いので、うちの店に合うワインを色々勉強中」と佐藤さん。要望の多いシャンパーニュや、中国料理に合うロゼワインなどをさらに充実させていきたいとのこと。佐藤さんが「リースナブルなのに驚くほどクオリティが高い」と絶賛する中国産のワイン『シャトー・9ピークス』もぜひ。グラス950円~、ボトル5,000円~

    三人の並び,佐藤剛さん,木村侑史さん,木村葵さん

    「将来独立するときの足がかりとしてこの店で頑張って欲しい」と木村夫妻をバックアップする佐藤さん。この店を旗艦に、カジュアル店、テイクアウト店など新たな店の展開も企画中だとか

スパイシーで旨みやコクもたっぷり、味がはっきりした四川料理の合間に優しい味わいの広東飲茶。なぜ今までなかったの?と思ってしまうほど自然に受け入れることができます。
とはいえ、専門性を極めてきた佐藤さん、木村夫妻にとっては、「そんなのありえない!」と仲間内から批判されることも覚悟の上での挑戦です。だからこそ、なぜこの食材なのか、なぜこの調理法なのか、なぜこの流れで出すのかなど考え抜かなければならない苦悩も計り知れません。

プロフェッショナルたちの深い思慮の元に生み出される新たな融合。刺激と和みを是非体験してみてください。

※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください。

この記事を作った人

取材・文/藤田 実子(フリーライター) 撮影/佐藤顕子

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