互いの店舗のシェフとソムリエをシャッフル!【Gris】×【LA BONNE TABLE】コラボレーションディナー
2017年4月26日、三越前の【LA BONNE TABLE/ラボンヌターブル】にて、代々木上原の【Gris/グリ】とのコラボレーションディナーが開かれました。互いのシェフとソムリエをシャッフルし、料理とワインだけでない“店舗同士のペアリング”が行われた、イベントの様子をヒトサラ編集部がレポートしました!
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シェフとソムリエをシャッフルした“店舗同士のペアリング”
当日の、9皿のペアリングコースと会場の様子をレポート
シェフが語る、コラボレーションをすることの意義とは
【Gris】×【LA BONNE TABLE】一夜限りのコラボレーション!
会場の【LA BONNE TABLE】。当日は、生産者やグルメ通の人々で賑わいをみせた
今回の会場である【LA BONNE TABLE】は、二つ星の名店【L'Effervescence】の姉妹店。食材にこだわっており、畑で完熟した野菜をつかった料理や、ペアリングのワインやジュースも、国産を中心に自然派のものが揃います。中村シェフや戸澤ソムリエをはじめ、チーム総出でイベントに参加。
相対する【Gris】は、生産者との繋がりを大切に、ジャンルにとらわれない自由な発想で味の調和を生み出す料理と、それに合わせたペアリングドリンクが話題のフランス料理店。鳥羽シェフや外山ソムリエ、新圖(しんず)スーシェフをはじめ、こちらもチーム総出でイベントを盛り上げました。
当日のメニュー:右が料理、左がそのペアリングドリンク
今回のコラボレーションの魅力のひとつは、互いのシェフとソムリエをシャッフルした“お店同士のペアリング”。【Gris】の鳥羽シェフの料理に対し、【LA BONNE TABLE】の戸澤ソムリエがドリンクを合わせる。逆に、【LA BONNE TABLE】の中村シェフの料理には【Gris】の外山ソムリエがドリンクを合わせる、といった具合。どちらも普段からアルコールだけでなくノンアルコールのペアリングも用意しているフランス料理店で、今回のコラボでもアルコールとノンアルコールを提供。どんな“組み合わせの妙”が見られるのか、期待が高まります。
1品目『野菜/赤/破廉恥』×『small fry 2016 GRENACHE PETILLANT-NATUREL ROSE』
一品目の野菜のアミューズ『野菜/赤/破廉恥』
まず最初に登場したのは【Gris】の鳥羽シェフの前菜『野菜/赤/破廉恥』。「エロス」をテーマに、見た目、食感、香りで表現したという、何ともユニークで鳥羽シェフらしい一皿です。しかし、この前菜は【LA BONNE TABLE】で定番の野菜のアミューズ。それを今回は鳥羽シェフがアレンジするという演出です。
テーマの「エロス」を、見た目はザクロやイチゴ、赤い野菜などで演出し、食感はブッラータチーズの柔らかさで、香りはビーツとフランボワーズのパウダーで表現。野菜は【LA BONNE TABLE】で用意したものを使用しているのだそう。
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ペアリングワイン『small fry 2016 GRENACHE PETILLANT-NATUREL ROSE』
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ノンアルコールのペアリングドリンクは、リンゴベース
合わせるワインは、フランボワーズの香りととても相性の良い、オーストラリア産の『small fry 2016 GRENACHE PETILLANT-NATUREL ROSE』。ノンアルコールはリンゴをベースにしたドリンクで、料理の酸味とリンゴの酸味が“抱き合い”ます。
2品目『フォアグラ/Gris/秘密』×『寺田本家 懐古酒 平成14年度醸造』
2品目のアミューズ『フォアグラ/Gris/秘密』
お次は【Gris】定番のフォアグラのアミューズを、【LA BONNE TABLE】の中村シェフがアレンジした『フォアグラ/Gris/秘密』。メニュー名の「秘密」とは、食べるまで中身は秘密ということで、食べてからシェフが答えを教えてくれるという文字通りのアミューズ(お楽しみ)です。食べてみると、濃厚で何やら奥深い味わい。洋風料理かと思いきや、中身はフォアグラのほか、砂糖、醤油、しいたけ、梅の花、奈良漬、黒豆、ゆず、ごぼうパウダーなど、和風の食材をふんだんにつかった和洋折衷料理でした。「フランス料理と日本のお惣菜を混ぜたようなイメージでつくりました」と中村シェフ。
ペアリングの日本酒『寺田本家 懐古酒 平成14年度醸造』
ドリンクは、しいたけの旨味に合わせ、生もと造りの日本酒『寺田本家 懐古酒 平成14年度醸造』をペアリング。味を似せたノンアルコールドリンクからは、しいたけのような風味と、生もと独特の酸味、香ばしさを感じられます。
3品目『カツオ/ドライトマト/ロングレンジ』×『CHRISTAIN TSCHIDA HIMMEL AUF ERDEN ROSE 2014』
イメージはカツオのタタキだという『カツオ/ドライトマト/ロングレンジ』
「洋風のカツオのタタキのようなイメージでつくりました」と鳥羽シェフが語る、『カツオ/ドライトマト/ロングレンジ』は、塩とトレハロースでマリネし、皮をバーナーで焼いたカツオ。そこに、キュウリとミョウガのピクルス、フェンネル、丘ヒジキ、しそをのせ、ドライトマトから取ったスープで仕上げた一皿。フェンネルの食感がシャキシャキと心地よく、そこにトマトの酸味と甘味が染み込んだスープが絡みます。このスープがとてもおいしいのですが、つくり方はなんと、ドライトマトを水に浸しておくだけなのだそう。「ご自宅でも簡単につくれますし、そうめんに合わせてもおいしいですよ」とスタッフの方が教えてくれました。
この辺りから会場にはほろ酔い気分が漂い、賑やかな声が周囲を包みます。鳥羽シェフが「いつも最高の状態で食材を用意してくれる」と語る、カツオの生産者である【一山】の宮川さんも壇上で挨拶をし、ユニークな語り口調で笑いを誘いました。
(左)ペアリングワイン『CHRISTAIN TSCHIDA HIMMEL AUF ERDEN ROSE 2014』(右)ゆずの香りとトマトの風味の、ノンアルコールドリンク
合わせるワインは、『CHRISTAIN TSCHIDA HIMMEL AUF ERDEN ROSE 2014』。ノンアルコールドリンクは、ゆずの香りとトマトの風味が、料理に馴染みます。
4品目『もの凄い鯖』×『菊姫 にごり酒』
旨味、酸味、濃厚なコクが調和する『もの凄い鯖』
お次は、いま話題の「もの凄い鯖」をつかった料理。「もの凄い鯖」に凝縮された旨味に対し、どぶろくのビネガーで酸味をつけたキヌア、甘辛風味を添えるべったら漬け、トリュフ、菊芋のスープでまとめた一皿。鯖が本当にジューシーで、それを包み込むようなクリーミーな菊芋のスープがクセになります。
メニュー名にもなっている「もの凄い鯖」の生産者である、【越田商店】の越田さんや、名付け親であり世に広めた【tasobi】の堀田さんも登壇しました。
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ペアリングは『菊姫 にごり酒』。『もの凄い鯖』のクリーミーな菊芋のスープと、濃厚なにごり酒が相性抜群です。
5品目『血/墨/焼もろこし』×『Zurab Topuridze CHKHAVERI AMBER DRY QVEVRI Q720 2012』
トウモロコシのソースが優しく包み込む『血/墨/焼もろこし』
黒い団子状のものは、ブーダンノワールを鹿肉で包み、イカスミで揚げたもの。そのドライでぽろぽろとした食感を、なめらかなソースが包みます。ソースからはトウモロコシの濃厚な甘さが感じられ、そこにパクチーの香りがアクセントを加えます。
筆者も酔いがまわり始め、ワインの写真を撮り忘れてしまいましたが、ペアリングは『Zurab Topuridze CHKHAVERI AMBER DRY QVEVRI Q720 2012』。スモーキーでありながら梅ジャムのような果実味も感じられ、酸味が綺麗にのびるワインです。
6品目『伊勢/海老/π』×『Kmetija Stekar Malvazija 2015』
伊勢海老の滋味深さを存分に味わう『伊勢/海老/π』
伊勢海老をパイ包みにしたこちらの一皿。「オーソドックスに仕上げたので、伊勢海老のストレートなおいしさを感じて欲しい」と中村シェフがプレゼンします。メニュー名のラテン文字表記の「π」は、パイのこと。
ペアリングワインは、海老の旨味とパイ生地の香ばしさに対し、旨味がありアカシアの香りが効いた『Kmetija Stekar Malvazija 2015』を合わせています。
7品目『ジョンピー/醤/🍄』×『DON&Kindeli PINOT NOIR 2014』
お茶漬けをイメージしたという優しい味わいの『ジョンピー/醤/🍄』
7品目の『ジョンピー/醤/🍄』は鳥羽シェフの一皿。この“ジョンピー”とは、ピジョンの業界用語的表現で、これもまた鳥羽シェフらしいユニークなネーミングです。このコラボレーションディナーの数日前に【Gris】にお邪魔した際、丁寧に下処理をしたピジョンを見せながら「今度のコラボでも“ジョンピー”出しますよ!」と嬉しそうに話してくれました。
ピジョンは皮が香ばしく、身は歯応えがあり、旨味が凝縮されたお味。最初はスープがかかっていない状態で供され、あとからテーブルを周り一皿ずつかけてくれます。「お茶漬けをイメージしました」というこれまたユニークなコンセプトで、下に敷かれたお米にスープが染み込み、まさにお茶漬けのように優しく身体に入ってきます。デセールの前のシメにぴったりです。
ノンアルコールのペアリングは、ポルチーニの香りを染み込ませたドリンク
ペアリングワインは『DON&Kindeli PINOT NOIR 2014』。そして、ノンアルコールはポルチーニの香りを染み込ませた加賀棒茶。なんとも言えない、古民家のような懐かしい匂いのする薫香が、料理の「お茶漬け」の風味に馴染みます。
8品目『枇杷/花/蜜』×『Domaine Christian Binner Selection de Grains Nobles 2006 KAEFFERKOPF GEWURZTRAMINER』
酸味、苦み、甘味が口の中でとろける『枇杷/花/蜜』
ひとつめのデセールは、「枇杷が大好きなんです」と語る中村シェフの『枇杷/花/蜜』。枇杷の種が入ったクリームの酸味と、花の苦み、そしてそれを包み込む蜜の甘味が、口の中を満たします。見た目も味も、女性をとろけさせてしまうようなデセールです。
夢中で飲んでしまい量が少ないですが、とても希少な『Domaine Christian Binner Selection de Grains Nobles 2006 KAEFFERKOPF GEWURZTRAMINER』
来日したクリスチャン・ビネール氏が、この日の前日に【LA BONNE TABLE】に来店したとのことで、ペアリングワインは戸澤ソムリエたっての希望の『Domaine Christian Binner Selection de Grains Nobles 2006 KAEFFERKOPF GEWURZTRAMINER』をサーブ。
こちらは希少なセレクション・デ・グラン・ノーブルの中でもビネール氏の思い入れがとても深い2006年のもの。2004年の収穫の前に我が子の様なブドウの木が切られてしまった事件があり、ビネール氏は想像もつかないショックを受けます。心情から木を引き抜くことができずそのまま残していたところ、2006年に奇跡的に接ぎ木のように木が生え、実ったブドウをつかったものがこちらのワインなのです。撮るのも忘れて飲んでしまい、写真は量が少なめですが、ご勘弁を。
9品目『レモン/塩/ケール』×『完熟屋 MISAKI MEAD』
爽やかな甘さを感じる『レモン/塩/ケール』
【Gris】の新圖スーシェフが担当したこちらのデセールは、レモン風味のチーズケーキにレモンのジャム、そこにケールのクランブルとパウダー、乾燥させたケールをのせた一皿。
「デセールに野菜をつかうことが多い【Gris】らしい一皿に仕上げてみました。」と新圖スーシェフ。ケーキの甘さに対し、レモンジャムの酸味とケールの苦みでバランスをとった、爽やかに甘味を感じられるデセールです。
モヒートをイメージした、爽やかな後味のノンアルコールドリンク
ペアリングは蜂蜜酒で、戸澤ソムリエが「色気がある」とプレゼンする『完熟屋 MISAKI MEAD』。しっかりとした甘味の中に、はちみつの旨味が感じられ、酸味もきれいにのびます。写真のノンアルコールドリンクはモヒートをイメージしたそうで、「レモンを絞り炭酸とミントをがっつり加えました」と戸澤ソムリエ。さっぱりとした後味が、爽やかに広がります。
最後のコーヒー・ティーは『エチオピア』or『ハーブティー』
最後は『エチオピア』、『ハーブティー』でシメ
コーヒーは、オニバスコーヒーの『エチオピア』。ベリーやワインを思わせる風味が特徴です。オリジナルブレンドの『ハーブティー』は、穏やかな朝を迎えたような、リラックスできる一杯でした。
これにて、全ての料理とドリンクが終了。最後に、テーブルを周っていた【Gris】の鳥羽シェフが、コラボレーションディナーを開くことの意義を語ってくれました。
他店舗とコラボレーションをする意義とは
──鳥羽シェフ
色々なお店と何度もコラボレーションを重ねて気づいたことは、他店とコラボすることで、僕ら自身も客観的な視点から自分の料理を見つめ直すことができるということ。こういう考え方もあるんだなっていうものをもらって、それを今度は自分の料理に反映させることで、結果、お客様に還元できる。その意義がコラボレーションにはあると思います。食べた人に喜んでもらったり、幸せな気持ちになってもらえれば、こんなに素敵な仕事はないです。
一般客だけでなく、生産者の方々もゲストに招いて行われた今回のコラボレーションディナー。普段はシェフのプレゼンを通しての話でしか聞くことがありませんが、一顧客として、生産者の方々と触れ合い、食材への想いを聞くことができる貴重な場でもありました。
「完璧な食材を用意してもらっているので、絶対納得のいく料理しか出したくないんです。だから今日も100%全力の料理です」と語ってくれた鳥羽シェフ。その言葉どおり、シェフ達の熱い想いがこもった料理やペアリングの妙、そして生産者の方々の想いを、舌と心で感じるとても素晴らしい時間を過ごすことができました。次回のコラボレーションが開かれた際は、両店舗のどんな魅力に出会えるのか、非常に楽しみですね。
関口 潤(ヒトサラ編集部)
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