映画『74歳のペリカンはパンを売る。』 浅草の老舗パン屋の魅力は、飽きのこない味とつくる人々の強い想いだった
東京・浅草にある老舗パン屋【ペリカン】は、全国に名を轟かせ、オープン前からお客さんが列をなす人気店。その魅力に迫ったドキュメンタリー映画『74歳のペリカンはパンを売る。』が2017年10月7日(土)より、東京・渋谷のユーロスペース他にて全国で順次公開されます。
変わらない味。
多くのパン屋が乱立し、多種多様なパンが溢れかえる中、ここ【ペリカン】で売っているのは、食パンとロールパンのみ。それなのにお客さんは朝8時の開店前から並び、途切れることなく訪れ、売り切れるほどの賑わいを見せます。
なぜそこまで人々を惹きつけるのか――。
ペリカンのパンに関わる人々を通してその魅力に迫る、ドキュメンタリー映画がこの秋公開されます。
そんな老舗パン屋【ペリカン】について、まずはご紹介します。
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創業74年、老舗パン屋【ペリカン】について
「ペリカンのパン」の魅力に迫る
パンだけじゃない、つくる人々が魅力的だった
あのペリカンが映画になった!
創業74年、老舗パン屋【ペリカン】について
銀座線「田原町」駅から徒歩3分、朝8時の開店と当時にひっきりなしにお客さんが訪れます
東京・浅草に店を構えて74年以上、食パンとロールパンの2種類のみを販売する【ペリカン】は、地元のみならず地方からも多くの人が訪れる人気のパン屋です。この“2種類のパンのみをつくる”というスタイルは、パン業界でも異端の存在。
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【ペリカン】という店名は、2代目である渡辺多夫さんのあだ名からつけられたもの
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ロゴやデザインも2代目の時にできたもの。“レトロ可愛い”と評判です
映画の中でも、ベーカリー専門のコンサルティングを行う「ドゥ・コンサルティング」代表の保住さんは、「多くのパン屋が80~100種類をつくって、やっといまのペリカンと同等の客数と売り上げになる中、2種類しかつくっていないのにこれだけの客数と売り上げを誇るのは、全国でもペリカン1軒しかない」と語ります。
パンだけじゃない、つくる人々が魅力的だった
職人さんが毎朝3時30分から食パン400~500本、ロールパン4000個をつくり続けています
そんな【ペリカン】ですが、創業当初は菓子パンの製造も行っていました。初代から2代目の多夫さんに代が変わると、「様々なパン屋ができる中で生き残っていくためには、他との差別化を図らなければならない」と商品数を絞り、徹底的に深堀りしていく方法へとシフトしました。
職人の名木広行さん。18歳でペリカンの職人として働きはじめて40年以上、初代から4代目まで見続けてきたペリカンの生き字引
種類を絞り、同じものをつくり続けるということ。その決断には勇気も必要でしたし、同じつくり方をしたからといって同じクオリティのパンができるわけではありません。
“同じクオリティにするために、様々な努力をする”のです。
「パンは生き物」と名木さんが語るように、季節や気温、湿度、つくる工程によってもパン酵母は表情を変えます。職人はその変化を感じ取り、寄り添い、「ペリカンのパン」をつくり上げるのです。
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粗熱の取れたパンをカットしていきます
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カットしたパンは続々と袋詰めされます
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店内の棚には、予約済のパンがずらりと並ぶ
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途切れることなく訪れるお客さんに笑顔で対応
「ペリカンのパン」の魅力に迫る
左から『山型』、『食パン』、手前が『小ロール』、左奥が『中ロール』。入っているのは小麦粉と水、イースト菌、砂糖、塩など7種類ほど。余分なものは加えず、昔ながらの方法でつくります
ペリカンで扱うのは食パンとロールパンのみ。同じ生地なのに『食パン』は焼いてもモチっとしていて、『山型』はカリッとしている。その違いはなんなのか。
焼かれたばかりの『食パン』。きめが細かく濃密なのがペリカンの食パンの魅力
それは成型の差や焼き方の違い、とのこと。『山型』は蓋をせずに焼くので中で膨らみ、サクッとしています。一方、『食パン』は蓋をして焼いているので水分が中に籠もり、焼いてももちもちとした食感が続くのです。
「面白いもので、生地は一緒でも成型や大きさによって風味や食感は異なってきます。それは『小ロール』や『中ロール』でも同じこと。『中ロール』の方が大きい分ふわっとしていて、『小ロール』はちょっと詰まっている感じ。『小ロール』の方が小さい分、少し香ばしいです」と陸さん。
食パン
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中までもちもちとした食感の『食パン』は、焼いても“もちもち”が続きます。1斤380円、1.5斤570円、2斤760円、3斤1140円(税抜) ※写真は1斤
山型
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さくっとした食感が魅力の『山型』。山型960円、山型半(半斤)480円(税抜)※写真は半斤
ロール
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サイズの異なる『ロール』。(上)中ロール5ヶ入 480円、(下)小ロール10ヶ入 610円(税抜)
同じ製法とはいっても、戦後と今の食生活は全く異なります。その中でご飯として食べるには、副食(おかず)とのバランスを考えなければなりません。「飽きのこないパンをつくるために、その時代時代において塩と砂糖の配合を変え、バランスを取ってきました」と陸さん。
絶妙なさじ加減で行われる配合の違いが、ペリカンの味を守りつつも新鮮に、時代の食生活になじむ形へと変えていったのです。
20代の若さで老舗パン屋を継いだ渡辺陸さん、4代目としての使命とは。「先代から受け継いだ大切なお店。僕の代でお店を傾けず、しっかりと営業していきたい」
「買っていただいたパンはお客様のものなので、お好きに食べていただいて構わないのですが、強いて言うなら・・・…」と前置きしつつ――。
「『ロールパン』は、当日焼いたものの粗熱が取れたタイミングで食べるのが最もおいしいと思います。また、『食パン』は、当日よりも1日置いてからの方が耳まで水分が行き渡り、中もしっとりします。それをトーストして食べるのが僕は好きですね。サンドイッチにするときは、焼き立てよりも1日置いた方がパンが落ちついていてオススメです」とのこと。
ペリカンで販売されているパンの一覧。生地自体は2種類しかないですが、成型を変えて10種ほど販売しています
上記で紹介したパンの他に、『ドッグ』 5ヶ入 や『中丸』(ともに480円・税抜)などもあります。余分なものが入っていない分、賞味期限は短く、「夏場だと食パンの賞味期限は2日ほど。スライスして冷凍すれば1週間くらいはもちます。食べる時は冷凍したまま、自然解凍せずにトースターで焼き上げてください」
あのペリカンが映画になった!
©ポルトレ
これまでもたびたびメディアに登場していた【ペリカン】ですが、映画になったのは今回がはじめて。
きっかけは、テレビで取り取り上げられていた【ペリカン】に、プロデューサーの石原弘之さんが興味を持ったこと。石原さんと陸さんは同じ歳で、自分と同じ年代の若者が74年もの老舗を継いでいることが面白く映ったようです。
手前が4代目の陸さん、奥が職人の名木さん。©ポルトレ
映画の話を引き受けた理由を陸さんはこう語ります。
「職人の名木が働いている姿をフィルムに納め、いつか名木が引退し、自分がしんどいなって思った時に『あぁ、仕事頑張らなきゃな』と思えるような記録が欲しかったんです」。
だが、話がどんどん大きくなり、映画の話を聞きつけ、様々なメディアから問い合わせが。「こんなに大きな話になるとは思っていなくて、ちょっと戸惑いました(笑)」
この映画にはペリカンのパンをつくる職人さんやスタッフさん、取引先の方々やパンのファンや「生活の一部だ」と語る常連さんが登場します。そんな彼らの“ペリカンのパンへの想い”によって物語は進みます。
スタイリスト伊藤まさこさんは、「お気に入りのジャムをたっぷり塗って頂きます」©ポルトレ
変化が求められ変わりゆく時代に、“変わらない”という選択をし続けてきた【ペリカン】。パンづくりを通してその強い意志や価値について、さらにモノづくりの本質とはなにかを考えさせられることでしょう。
「でも、うちはただの街のパン屋さんなんですけどね」
そう語る陸さんをはじめ職人さんやスタッフのみなさんは、今日も朝から変わらずパンをつくり続けます。
【パンのペリカン】
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電話:03-3841-4686
住所:台東区寿4-7-4
店舗詳細はこちら >
【ペリカンカフェ】店舗情報
ペリカンの食パンを炭火で焼き、そのトーストでカツサンドや卵サンド、チーズトーストなど10種を提供。コーヒーや紅茶の他にワインやビールもあり、お酒とトーストを楽しむ、なんて浅草ならではの楽しみ方もできます。
☎03-6231-7636
■住所:東京都台東区寿3-9-11 1階
■営業時間:8:00~18:00(L.O.17:00)
■定休日:日曜、祝日
「74歳のペリカンはパンを売る。」作品情報
©ポルトレ 2017年/日本/80分/カラー(一部モノクロ)
浅草の老舗パン屋【ペリカン】は、毎日お客さんが途切れることなく訪れ、売り切れるほどの賑わいを見せます。なぜここまで人を惹きつけるのか――ペリカンのパン、関わる人々の魅力に迫るドキュメンタリー映画。
■作品名:『74歳のペリカンはパンを売る。』
■公開日:2017年10月7日(土) より、ユーロスペースにて公開(全国順次)
■上映:東京・渋谷のユーロスペース他にて全国で順次公開
■出演:渡辺多夫、渡辺陸、名木広行、伊藤まさこ、保住光男、中島進治
■企画・製作・撮影:石原弘之 監督・編集・撮影:内田俊太郎
■制作プロダクション:ポルトレ 配給:オルケスト
■配給:オルケスト
2017年/日本/80分/カラー(一部モノクロ)
撮影/佐藤顕子 取材・文/嶋亜希子(ヒトサラ編集部)
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