ドバイVol.03_【オーファリ・ブラザーズ・ビストロ】(Orfali Bros Bistro)~ヒトサラ編集長の編集後記 第63回
ドバイの最終回は、ドバイが持つ多様性や未来が見えてくればいいかと思います。訪れたのは【オーファリ・ブラザーズ・ビストロ】(Orfali Bros Bistro)。モダン中東料理を標榜するビストロで、2023年版「世界のベストレストラン50」中東・アフリカ部門で1位を獲得しました。「ドバイモール」は何でもそろうショッピングの中心ですし、逆に旧市街はスパイス香るエスニックなエリアで、時間が止まったように感じます。
食のシーンから見えるドバイの多様性、未来
【オーファリ・ブラザーズ・ビストロ】(Orfali Bros Bistro)
【オーファリ・ブラザーズ・ビストロ】(Orfali Bros Bistro)はシリア出身の3人が提供するモダン中東料理で、ドバイのレストラン・シーンの進化とともにワールドワイドに注目を集めてきたお店です。料理をつくるシェフはモハマド・オーファリさん、ワシムさんとオマールさんという2人の兄弟はパティシエです。
広場の一角にある小洒落た外観の入口を入ると、キッチンが広くとられ、テーブルがそれを囲むように配されています。面白いのは2階が丸見えで、そこはデザートやお菓子をつくる場所なのだそうです。
勧められるままに、いくつかオーダーをします。
まずはコーンボム、とうもろこし爆弾と題されたもの。砂漠で水耕栽培されたコーンの前菜ですが、いろんな食感と甘みが重なり、三年熟成のパルミジャーノの香りと相まって、いきなり食欲の扉をこじ開けられたような感じになりました。
これ旨いなと話していたら、次に出てきたのがウマミエクレアというそのままなネーミングの一品。
ポルチーニ風味のエクレアに牛肉の生ハム。塩味と甘みがいい具合にミックスします。
コーンもこれも、パティシエである兄弟との合作感ある一品です。kombucha表記(実際は発酵緑茶など)のカクテルがいくつかあって、それらと合わせてみましたが、旨みの相乗効果のような感じもして、なかなか気持ちのいいものです。
次はどこか中東っぽい一品です。ブルグルという小麦を引いたものに唐辛子などのスパイスが加えられ、紫蘇にまいて食べるスタイル。すごく辛いものです。
「アレッポの唐辛子を入れています。これ、われわれが小さいころから慣れ親しんだ味なんです。紫蘇は砂漠の水耕栽培でつくられたものを使います。基本、使うのは地元の食材中心で、そこに祖国へのオマージュがあったりします」とシェフのモハマドさんは語ります。
餃子が出てきました。中に使われている肉は和牛です。ガーリック・ヨーグルトが中東テイストで、砂漠で食べる餃子といった趣。けっこう人気のメニューだそう。餃子というのは分かりやすくておいしくて、餡やソースを変えるだけであらゆる国のバージョンが出来そうでいいですね。
そして次は「僕とアレッポへ行こう」というタイトルの和牛ケバブ。焼鳥にも見えますが、牛肉味のケバブ。これも思い出の一品ということです。
そして最後にピザが出てきました。昔ながらのスタイルの生地に地元でつくったブッラータ、味噌バターもいい風味を醸しています。
デザートに「ジャパニーズ・スクエア」と題したケーキが出てきました。炒り方を変えた黒ゴマでつくったケーキで柚子の香りが効いています。
「和牛や味噌もそうですが、われわれは日本から多くのことを学んでいます」
モハマド・シェフはそういいながらコーヒーを出してくれました。
ドバイモール、ドバイ・フレーム、未来博物館
食事の後は有名なドバイモールを歩き、バージュ・カリファを眺めます。これあたりがドバイのいわゆる中心地で、近隣諸国のみならず、アジアやアフリカ、ヨーロッパなどからも多くの観光客が来て賑わっています。そのため、豚肉と豚肉製品を特別に扱う店などもあります。
有名なチョコレート屋、紅茶屋などがあり、ブランドショップも賑わっています。デーツを加工したお菓子など、お土産にも事欠かないエリアです。
ドバイ・フレームに上り、街を見下ろし、未来博物館を通過します。
開発中の街の勢いがいたるところで感じられます。どこか日本の高度成長期、1970年の大阪万博あたりを髣髴とさせる風景にも思えます。
旧市街へ渡り、食べ歩きしてみる
一方、渡し船で旧市街に渡ると、そこは急に昔の世界に戻ります。
昔から交易の盛んだったイランやインドがそこにはあります。スークが軒を連ね、スパイスの香りが漂います。時間がくるとコーランが流れ、広場には多くの地元の人が集まります。
ドバイの歴史や伝統を学べるセンターもあります。
食べ歩きツアーもあります↓
この対比は非常に象徴的です。
同じ場所にいて、時間の流れが全然違う。
新市街のドバイ・フレームや未来博物館では、未来予想図が描かれる一方、旧市街では昔ながらのライフスタイルが維持されているます。
イラン人やインド人が入り混じり、カオスに感じるエリアを食べ歩きながら思うのは、北にペルシャ、東にインド、南にアフリカ、西にエジプト、といった異文化の交じり合うタペストリーのような重厚感です。
昔からこういった異文化のハブであったドバイというエリアの描く未来図は、まさに今に生きるわれわれの直面する問題を最もよく表しているような気もします。
この絶妙なバランスでわれわれの共存未来を描けるのか、
はたまた新たにもっと強固な階層社会になっていくのか、
食のシーンを通じてそういうことも考えさせられた旅でした。
小西克博/ヒトサラ編集長
北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。
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