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更新日:2018.02.15グルメラボ

極限の柔らかさを追求した名物の煮穴子に感動 地元出身の店主が魅せるベテランのにぎり【すし 市呂】

この道30年以上の経験を持つ寿司職人が、2016年にオープンした【すし 市呂】。25年前に六甲で始めた店は阪神淡路大震災で一度は三田市に移転しましたが、約20年ぶりに、地元・神戸に戻って心機一転して再開。確かな目利きと熟練の技を駆使した、“ベテランの味”を堪能できます。

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地元のネタを知り尽くした寿司職人が気持ちも新たに開店

    店内は、赤い椅子と白木のカウンターの対比がモダンな雰囲気

 路地に溶け込む隠れ家的な扉を開けると、すぐ横に絨毯敷きの階段。上るにつれて、赤い椅子に白木のカウンター、その向こうに作務衣姿の店主・市井喜代志さんの姿が徐々に現れます。

「生まれも育ちも神戸なので、戻ってくるとやはり落ち着きますね」と市井さん。地元・神戸の寿司店や和食店で腕を磨き、1992年に六甲道で自店を開くも、阪神淡路大震災の影響で三田に移転。20年の時を経て、2016年に再び地元に戻り、気持ちも新たに腕を振るいます。地元出身だけに懇意の市場や鮮魚店も数多く、神戸中央市場や明石の昼網、大阪にまで出向いてネタを仕入れるため、ネタ箱には瀬戸内のネタを中心に、その日一番の魚が揃います。

口の中で“消える”煮穴子の柔らかさは圧巻

    ふかふかの煮穴子は、煮詰めか塩が選べる

 試行錯誤を重ねた数々のにぎりの中でも、圧巻は煮穴子。

「自分も穴子が好きで、他にはない看板ネタにできれば」と、穴子だけは常に最適な型の穴子を九州から確保し、年中欠かしません。「これだけは秘密」という独自の下仕事を施し、じっくり炊き上げた穴子は、「いったん冷やさないと手で持てない」という極限まで柔らかさを追求。

 一見、肉厚ですが頬張ると、溶けるというより一瞬、口で見失うほど軽やか。香ばしい風味と旨みだけを残して、シャリにまとわるように消えていきます。思わず目を見張る、この名物目当てのお客が多いというのも頷けます。

和食の経験も生かした彩り豊かなおまかせコース

  • 料理はすべて夜のコース7000円(税込)より。肝ポン酢を添えた「カワハギ」

  • 煮詰めの甘みと貝の旨みがと渾然となる「煮ハマグリ」

  • 濃密な旨みがとろりと溶けだす「中トロ」

  • 浅めに〆た鯖は薄切りを三枚付けに

 品書きは、昼夜共におまかせコースがメイン。とりわけ、「これまでの職人としての集大成」という夜のコースは、盛り込みも繊細な前菜盛合せが、幕開きを彩ります。月替わりで約10種を盛り込む前菜は、エビと栗のごま豆腐、筍と栗の袱紗など、手間を惜しまぬ仕事が随所に。華やかな一品は、和食や割烹での経験を持つ市井さんならではです。吟味されたネタの活きの良さが伝わる造りも、にぎりへの期待感を高めます。

 やや小ぶりの寿司は、淡い旨みがすっと後引くカワハギや、濃密な脂を湛えたシマアジなど瀬戸内のネタのほか、地元の名産・有馬山椒の香りを効かせた〆鯖などのひと工夫も心憎い。古米のブレンドを特注するシャリも、「時季ごとに、10㏄単位で水加減を微妙に変えています」と市井さん。ピンと粒立ったシャリが、するりとほどける食感が心地よく、新鮮なネタの旨みが際立ちます。

    入口を入ると白壁に屋号の看板。絨毯敷きの階段が上に伸びる

 寿司はおまかせもお好みでも楽しめますが、「堅苦しいのは苦手で、気軽に使ってもらえれば」という市井さんの話好きの人柄も手伝って、お一人様や女性客も多い。地元に戻ったベテランの味は、寿司激戦区の界隈でも確かな存在感を発揮しています。

【すし 市呂(いちろ)】

電話:078-335-0618
住所:神戸市中央区北長狭通2-9-6 好大ビル2F
アクセス:JR「三ノ宮」駅、阪急「神戸三宮」駅から歩5分
営業時間:12:00~15:00、18:00~22:00
定休日:月曜

この記事を作った人

文/田中慶一(フリーライター)

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