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更新日:2018.08.10食トレンド 旅グルメ

今アツイ。パリで最も注目を集める、気鋭の日本人シェフ3人にインタビュー

パリではここ10年の間、多くの日本人シェフが大活躍。一国一城の主として店を構え、人気を集めることも珍しくなくなった。2017年以降オープン、リニューアルオープンした注目店でも日本人が大活躍。パリジャン、パリジェンヌはもちろん世界からもゲストから注目されている日本人シェフ三人、守江慶智さん、北村啓太さん、渥美創太さんにインタビューした。

今アツイ。パリで最も注目を集める、気鋭の日本人シェフ3人にインタビュー

【Yoshinori】守江慶智シェフ

  • 1980年 愛媛県生まれ。辻フランス料理専門カレッジ、同フランス校卒業後【コート・ドール】、【アラジン】、などで修業を経て26歳で渡仏。2007には【Le petit verdo】の シェフに就任。その後、2012【Encore】シェフ、2013~2015 【L'auberge du 15】のシェフを務め、2017年10月に自身の店【Yoshinori】をパリ6区にオープンした。

パリのテロワールに基づく文化を読み解き、意味のあるアプローチをしたい

    「ホテルニューオータニ東京」”世界で活躍する日本人シェフフェア第5弾”で出された守江さんの料理の一つ。季節そのものを皿に移したような美しい料理。

    「ホテルニューオータニ東京」”世界で活躍する日本人シェフフェア第5弾”で出された守江さんの料理の一つ。季節そのものを皿に移したような美しい料理。

 緑の皿で登場した美しい料理。雪のような白いパウダーの下にはセロリの新芽や関アジが隠れている。白いパウダーはベルガモットの風味をつけた米粉だ。これはある春先にいただいた守江さんの一皿。東京の「ホテルニューオータニ」のフェアでのことである。「故郷の山に雪が残っているイメージで作りました」と語ってくれた守江シェフ。一皿の料理の中感じる食材の様々なコントラストがまるで音楽を奏でているかのようだった。フランス料理らしい味わいのひとさらの中に、守江さんの繊細な感性が垣間見える。優しくて、調和がとれ、そしてポエティックだ。

 この皿はスペシャリテの「サバとベルガモット」をアレンジしたもの。魚は好きな食材の一つだという。「すずきやマトウダイがフランス料理のガストロノミーにはよく登場しますが、アジやサバは美味しいのにあまり登場しません。こうした魚のおいしさを料理にすると、フランスでは結構喜ばれるんですよ」と笑う。

    【Yoshinori】住所:18 rue Grégoire de Tours 75006 Paris ☎+33 9 84 19 76 05<br />
HP:www.yoshinori-paris.com/ja/

    【Yoshinori】住所:18 rue Grégoire de Tours 75006 Paris ☎+33 9 84 19 76 05
    HP:www.yoshinori-paris.com/ja/

 日本では【アラジン】、【コート・ドール】、【ジベルニー】で修業した。【コート・ドール】の斉須政雄シェフからは、”あたりまえにできることの重要さ”を教えてもらった。 

その後渡仏し、【Encore】、パリ13区【L'Aubelge de 15】のシェフになり、その頃から同業者のシェフやパリの料理評論家などが足繁く通う店として耳目を集めた。そして2017年10月に自身の名を冠した店をオーナーシェフとして構え、ますますやりたいことが形になってきたという。「料理がおいしい、というのは当たり前。パリのテロワールを建築や食材、歴史から読み解き、これまでの料理人としての経験を足したり引いたりして、意味のある食材へのアプローチをしていきたい」とこれからの思いを語ってくれた。

守江シェフへ質問

―いつか、日本に戻りたいですか?

毎年一回は帰りたいですが、戻りたい気持ちは無いですね。

―これからチャレンジしたいことは?

パリの店をスタッフに任せて、フランスらしいいい土地に庭園があるレストランを作りたいですね。

【RESTAURANT ERH】北村啓太シェフ

  • 1980年滋賀県生まれ。大阪・あべにの辻調理師学校を卒業後、【ラ・ナプール】、【レ・クレアション・ド・ナリサワ】(現【ナリサワ】)で修業後渡仏。パリの【ピエール・ガニエール】での経験を経て、【オーボン・アクイユ】のシェフに。2017年【RESTAURANT ERH】のシェフに就任し、ガストロノミーレストランとしてリニューアルオープン。フランスのレストランガイド「Lebey」の前菜部門にて2018年最優秀賞を受賞。

土地の食材に自分の経験を重ねて、ここにしかない料理を作りたい

    東京のフェアでの一皿。スモークしたフォアグラのフランに、タラバガニとマスの子、鴨のコンソメをあわせて。

    東京のフェアでの一皿。スモークしたフォアグラのフランに、タラバガニとマスの子、鴨のコンソメをあわせて。

 とにかく、一流のシェフになりたい。一流のシェフになるには一流の人の元で修業したい。そう思いながら調理師学校を卒業し、どこのレストランで働こうかと迷っていた北村さん。何軒か面接を重ねたなか、当時【ラ・ナプール】の成澤由浩シェフと面接をしたときに、しっかりと世界を見据えているヴィジョンに衝撃を受け、すぐに”ここしかない”と行くことを決めたという。

 そんな北村さんが、フランスで働きたい―と思ったのは、【レ・クレアション・ド・ナリサワ】での修業時代のこと。成澤シェフとともに海外経験豊富な現場スタッフのなかに入り、ひとつひとつの作業を”完璧に”こなさなければならない日々を過ごすうちに、自分の知識の少なさ、語学力のなさを痛感し、いつか本場フランスで働きたいという思いがさらに強くなっていった。

 そうして渡仏し、【オーヴォン・アクイユ】、【ピエール・ガニェール】を経て、ビストロだった店をガストロノミーレストランとして生まれ変わらせたいというオーナーのラブコールのもと、【RESTAURANT ERH】のシェフに就任して見事人気店に押し上げた。

    【RESTAURANT ERH】住所:11 rue Tiquetonne, Paris 2e, France ☎: +33 (0) 1 45 08 49 37 HP:www.restaurant-erh.com/

    【RESTAURANT ERH】住所:11 rue Tiquetonne, Paris 2e, France ☎: +33 (0) 1 45 08 49 37 HP:www.restaurant-erh.com/

 店で大切にしていることは「一つ一つの仕事をきちんとすること。」それは恩師・成澤シェフの教えに繋がる。それを前提としてフランス料理の技法をベースに、自分にしかできない料理を作りたいと語る。「その瞬間瞬間の味を大切にしたいです。その季節の、生産者さんから届くいいものをそのときの自分の感じるままに料理をする。一年経てば自分も考え方も感じ方も変わるじゃないですか。同じテーマで料理をしても、一年前とは絶対に違うと思うんですね。」
 
 北村さんの料理は、一つの皿の上の様々な食材の旨味や香りがバランスよく融合して一つの世界感を作る。独創的な食材の組み合わせは、まずテーマを決めて試作を繰り返して生まれるものだ。一つ試作をし、足りない味、温度、食感を加えていく。すべてはそのときの自分の感覚が頼りだ。世界中どの土地にいても、その土地にある良い食材を自分の目で見て、そこから得るインスピレーションに自分の今迄の経験を重ね合わせていくイメージで料理を作っているという。”今ここ”でしか生まれない料理。その料理を楽しみにゲストは今日も店を訪れる。

北村シェフへの質問

―パリで料理をするを上で、日本人であることは意識していますか?

日本人であることを意識して料理をする事はありませんが、生まれてから28年日本で育っているので、日本人としてのアイデンティティは必然的に料理に組み込まれていくものだと感じています。

―いつか日本に戻りたいですか?

日本にはいつか戻りたいと考えていますが、日本とフランス、両方に拠点を置ける展開をしていきたいと考えています。

【MAISON】渥美創太シェフ

  • 1986年千葉県生まれ。辻調理師専門学校在学中に【メゾン・トロワグロ】で研修。卒業後からパリで仕事を始める。【ステラマリス】を経て26歳で【ヴィヴァン・ターブル】、【クラウン・バー】のシェフを勤め、2015年には「ル・フーディング」で最優秀ビストロ賞を受賞。現在、11月自身の店【MAISON】をオープンするための準備に奔走する。2018年4月から7月までニューヨークで開催したポップアップレストランは連日満席。

主体になる素材からおいしさを引き出し、記憶に残る一皿をつくる

    一見パイのように見えるのは、菊芋の皮。根菜とウニは、渥美さんの好きな組み合わせ。

    一見パイのように見えるのは、菊芋の皮。根菜とウニは、渥美さんの好きな組み合わせ。

 一口食べると、シンプルに、素材そのもの味・香り、がグワッと広がる。渥美創太シェフの料理は驚くほど迷いがない潔さがある。

 例えばこの「菊芋・ウニ」の一品。パイのようにパリパリに薄く仕上げた菊芋の皮、それに挟んだピュレとウニ。シンプルながらその皮の食感、菊芋の香り、甘味、旨味、合わせたときの味わい・・・・。素材の持ち味が料理になることで幾重にも広がっていく。

「素材を無駄にしない。それは意識しています。」と渥美シェフ。「いろんな要素でおいしさを引き出すのではなく、主体になる素材からおいしさを生み出したい」。それは一見ソースを工夫し、素材の持ち味とあわせておいしさをつくっていくフランス料理のセオリーよりも和食的なアプローチとも思える。「今はフランスにも本当に素晴らしい生産者がつくるいい食材があるんです。流通も発達していますし、その時代に合わせた料理があると思うんですよね」

    2018年11月オープンの【MAISON】のイメージ図。一軒家にこだわって場所を探したそう。

    2018年11月オープンの【MAISON】のイメージ図。一軒家にこだわって場所を探したそう。

 ”顔の見える”生産者とのやりとりを大切にしているのは、26歳でシェフを務めたパリの【ヴィヴァン・ターブル】のころから。その思いは、【クラウン・バー】時代も、日本でフェアをやるときにも、ニューヨークのポップアップでやるにしても変わらない。「【ヴィヴァン・ターブル】のオーナー、ピエール・ジャンクーと出会って僕の料理観ががらりと変わりました。食材を生かしたナチュラルな料理の魅力に触れ、自然派ワインの素晴らしさを教えてくれたのも彼です」

 老舗ビストロ【クラウン・バー】のリニューアル時にシェフに抜擢され、素材を生かした料理と自然派ワインを楽しめる店として瞬く間に予約困難店に。一躍パリのグルメ界の話題をさらった。

 そして、今彼は、いよいよオーナーシェフとして11区に一軒家の店をオープンする予定。「うまくいけば今年の11月。もしかしたら来年になってしまうかも」と話すが、世界中のファンたちがそのオープンを心待ちにしている。

渥美シェフへ質問

―新しいお店、【MAISON】でやりたいことを教えてください

アットホームな雰囲気のナチュラルガストロノミー

―海外のいろんな場所で 積極的にコラボレーションなど今後もしていく予定はありますか?

楽しそうな話しがあれば"やりたいな"とは思いますが、積極的にはやらないです。

この記事を作った人

山路美佐(ヒトサラ副編集長)

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