名店が教える「スペシャリテの秘密」|【新ばし 笹田】の『贅沢! 松茸ごはん』
一度食べたら忘れられない。何度食べても驚くほどおいしい。そう思わせるあの店のスペシャリテには、きっとつくり方に秘密があるはず。そうだ。その秘密、直接シェフに聞いてみよう。
一人で切り盛りしていたころに
編み出した、最高の〝炊き方〞
研ぎ、浸しん漬し、火加減、炊き、蒸らし……。一つ一つはごくシンプルな工程に思えるが、炊き方は店により千差万別。だからこそ日本料理店にとってはこだわりの見せどころとなるわけだが、数ある店のなかでもその味に定評があるのが、【新ばし 笹田】の笹田秀信さんが炊くご飯だ。
南魚沼産コシヒカリ、岩手県産の松茸、日本料理店の命であるだし。使う材料がシンプルだからこそ、その差は歴然とする
締めはきまって白いご飯。ふっくらと上品な甘味があり、これだけでも贅沢なほどだが、今回は特別に、要望があったときにだけ出すという「松茸ごはん」の炊き方を教えてもらった。
蒸らし時間と水分量が変わる以外、炊き方は白米とほぼ同じ。中でも独特なのが、火力を一切変えずに炊くこと。「一人で厨房を切り盛りしていたころ、細かな火加減の調整が難しくて、そのために編み出しまた」。炊きは17分前後と決めているが、最後は空気穴から出る湯気の香りで炊き上がりを判断する。
「環境や米の状態で少しずつ、分量なども変わってきます。ぜひ感覚をつかんで、自分流の最高の炊き方を見つけてください」
『贅沢! 松茸ごはん』のつくり方
日本の秋の“ 贅” を“炊く”食材が輝く、匠の炊き方
南魚沼産コシヒカリ、岩手県産の松茸、日本料理店の命であるだし。使う材料がシンプルだからこそ、その差は歴然とする。
材料(2人分)
・米(新潟県南魚沼産コシヒカリ) 1.5合
・松茸(岩手県産) 100g(~150g)
・一番だし(右ページ参照) 約250cc
・うすくち醤油 40cc
・みつ葉 少々
つくり方
❶ まず、米を研ぐ。ボウルに水を入れておき、米を入れたら、
最初の水は素早く捨てる。次からは、手のひらの親指の付
け根あたりで軽く押しつけるように研ぎ、これを3回ほど
繰り返す。
❷ 米の水気を切ったら、ザルにあげて最低30分ほど置いて
おく。
❸ 松茸は、たんざく切りに。薄すぎないように切り、食感
を残しておく。
❹ 2枚蓋の土鍋に、米と、あらかじめとっておいた常温の
一番だしを入れたら、うすくち醤油を入れ、味を調整する。
松茸から水分が出るので、塩分を強めに感じる程度がベ
スト。
❺ 味を決めたら、上から敷き詰めるように松茸を入れる。
❻ 土鍋に蓋をし、空気穴以外から湯気が漏れないように蓋
の周りなどを布巾でふさぐ。
❼ 中火の弱火で17分前後炊く。途中で、火加減を変えない。
『贅沢! 松茸ごはん』の3つのポイント
Point ①
米を研いだら水を切り乾くまで30分以上置く
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米を研ぎ終わったあと、水気をしっかりと切ったら、ザルにあげ、お米の表面が乾くくらい、最低30分以上置く。笹田さんいわく、「1時間でも2時間でもかまわない」そう。
火力は、途中で変えない。「10分で湯気」を目安にする
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中火の弱火程度の火にかけ、17分炊く。10分前後で、少しずつ湯気が出てくるのを一つの目安にし、もし早めに湯気が出てくるなどしたら、火力を調整する。
おかきのようなこうばしい香りがベスト
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湿度や米の状態など、日々変わる環境下で最上のご飯を炊くため、最後に信じるのは己の感覚。湯気の香りを確認し、おかきのようなこうばしさになったら火を止める。
「『松茸ごはん』の魅力は、米のみずみずしさと松茸の華やかな香りの競演。松茸はカサの開き方で、『味は〝つぼみ〞、香りは〝開き〞』といわれます。軸が太く、ずんぐりしているものほどいい。入れれば入れるほどおいしくなりますよ」旬の炊き込みご飯はもちろん、白米でもぜひ炊き比べをしてほしい。
炊き込みご飯の味を決める笹田流“一番だし”のひき方
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炊き込みご飯に使う“だし”のつくり方を笹田さんに教えてもらった。鰹の風味が勝ちすぎず、昆布の品のいい旨みが出ていればOKだ。
▽材料
・水 2L
・利尻昆布(香深産) 28g
・血合い抜きの鰹節 30g
▽つくり方
❶ 昆布の表面をペーパーなどで軽く拭き、汚れを落とす。
❷ 昆布を1時間ほど水に浸けてから、ぐらぐらさせないように弱火にかける。
❸ 30 ~ 40分ほど煮出したら、昆布を取り出す。
❹ 1割(200cc)ほど差し水をし、温度を下げたら鰹節を入れる。
❺ 軽くアクを取り、鰹節が沈んだら漉してできあがり。
いかがでしたでしょうか。【新ばし 笹田】の松茸ごはんを、ぜひご自宅で再現してみてください。
教えてくれたのは 笹田秀信さん
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奈良県出身。高校卒業後、すぐに日本料理の道を志し、日本料理の名店でおよそ9年間にわたり、研
鑽を積む。2005年に独立、2012年に現在の店舗に移転。
撮影/三木 麻奈 取材・文/郡司 周(ヒトサラ編集部)
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