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更新日:2019.02.08食トレンド 連載

「ソーシャルグッドな男」が語る、地球と食の未来/~食の明日のために~vol.9

「世界を変える、はじめかた。」 これは、講談社『FRaU』の1月号が掲げたコピーです。女性誌が丸ごとソーシャルなテーマ(SDGs)で展開したこの号の仕掛け人は、ソーシャルグッドプロデューサー・石川淳哉さん。SDGsについて、ソーシャルとクリエーティブの関係、地球と食の未来について、石川さんの考えるところを伺いました。

知らないと恥ずかしい?! 2019年はSDGsの年

温暖化による異常気象が、世界中で記録されています。資源の枯渇や絶滅する生物の数が、急激に増えています。富の配分のアンバランスは貧困と飢餓を招き、さらには戦争をも生んでいます。

地球がかかえる数々の問題を解決するために、2015年9月の国連サミットで採択されたのが“SDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)”。シンプルなアイコンとともに掲げられた17のゴール(目標)のなかには、「2飢餓をゼロに」や「14海の豊かさを守ろう」「15陸の豊かさも守ろう」など、食にかかわる項目がたくさん含まれています。

    Sustainable Development Goals(SDGs/世界を変えるための17の目標)

あくまで「目標」であるSDGsは順守の拘束力や罰則などを持たないぶん、各国、各地域、各企業、さらには各人ができることから取り入れ、みんなでよりサステナブルな地球をめざそうというチャレンジ項目の位置づけです。それでも、各国政府や企業の推進力は年々拡大。私は仕事上、さまざまな国の方と話す機会が多いのですが、SDGsがごく普通に会話に顔を出すようになって数年が経つでしょうか。一方で日本ではまだまだ知られておらず、残念だな(※)、、、と思っていたところ、このFRaU SDGs号の発行を知ったのでした。
※朝日新聞社が2018年9月に行った調査で、3000人中「聞いたことがある」と答えたのは14%。

なにしろ、一般女性誌丸ごと一冊のSDGs特集です。ファッションや食、旅などをメインに内容を組み立ててきた歴史ある講談社の女性誌をジャックしたなんて、日本のソーシャルグッド史上(というものがあるかは別として)エポックメイキングなできごとだったに違いありません。この一大プロジェクトを立ち上げたのは株式会社ドリームデザイン代表、ソーシャルグッドプロデューサーの石川淳哉さん。お話を聞こうとオフィスに伺うと、大きな体と大きな笑顔で迎えてくれました。

    東京タワーを超・至近に望むオフィス屋上で

クリエーティブの力で社会を変える

「地球が生まれて46億年、終わりの日を迎えるまであと46億年。人間には本来、地球の歩みを早める権利なんかないんです。でも、僕たちが(資源を乱用する)現在のライフスタイルを変えなければ、2030年に地球がもう一つ必要になると懸念されるところまで来てしまった。僕は、次世代に地球の傷をなるだけ残さないように、クリエーティブのチカラでできることをとことん考えていきたいんです」

石川さんの名前を聞いたことがなくても、21世紀のはじめ社会現象にまでなった大ベストセラー、「世界が100人の村だったら」(マガジンハウス刊)の広告プロデューサーといえば、なるほどと感じる方も多いでしょう。それまで「インテル入ってる」のコピーを冠したインテル社のクリエーティブ戦略をはじめ、さまざまな有名広告プロジェクトを率い、多くの受賞実績をも持つ石川さんは、この小さな書籍のプロモーションを通じて人生観が180度変わったと言います。現代社会が抱える国家間格差の大きさや階層社会のひずみ、差別と無関心の問題など、平易な文章で世に訴えたこの本に自分が関わることで、数えきれないほどの人の心を動かすことができたと実感したからです。

    2000年前後にチェーンメールとして世界を巡った英語のメールをもとに、「小学3年生の子供に母親が読み聞かせるシチュエーション」を想定して作り上げた本。全64ページのこの小さな書籍が、石川さんの広告戦略も手伝い300万部という大ベストセラーとなった。

「それまでのプロジェクトとは、まったく違う達成感がありましたね。クリエーティブに社会課題を解決できる可能性があるんだと理解したとき、脳と細胞が震えたんです」

その時以降、石川さんは仕事の選び方を大きく転換します。BMWの電気自動車プロダクト広告や防災ポータルサイトプロジェクト、また平和への想いをアートに昇華させたピースアートプロジェクト“retired weapons”など、数々のソーシャルプロジェクトを自ら探し、企画し、クリエーティブの力で支えてきたのです。そして10数年の努力を重ねた結果、今では「ソーシャルグッドの男」として、自身の仕事の100%をソーシャルグッドプロジェクトのみで固めています。

    "retired weapons"の2007ミラノでの展覧会。その後、ベルリン、ロンドンと巡回。日本では博多、東京、大分県立美術館で展覧会を行なった。

買う人、使う人、食べる人を巻き込んで前へ

「ここ1-2年で、日本社会に少しずつSDGsを受け入れる素地が出てきたのを感じるんですよ。なかでもオーガニック野菜やフェアトレード商品を選んで買ったり、フードロスを出さないよう意識したり、『食』は毎日の暮らしのなかで取り組める『最初の一歩』がたくさん見つかる、特に相性のいい分野じゃないかな」

そう話す石川さんは2016年より、富士山のふもと御殿場に土地を借り、自ら農業に取り組んでいます。太陽光で電気をつくり、年間50種の野菜を自然栽培で育てているのです。野菜も電気も、家族の消費分の8割を自家生産する理由は「自分で実践しないと何もいえないから」。SDGsの目標で言うと「15陸の豊かさも守ろう」「7エネルギーをみんなに クリーンに」はもちろん、「12つくる責任つかう責任」にもつながるソーシャルグッドな生活に向けて、自らチャレンジをしている訳です。「この農業を自分で実践しているからこそ、胸を張ってソーシャルグッドを語れると思わない? 8割だからホントは完璧じゃないんだけどね」と茶目っ気たっぷりに笑う様子はいかにも楽しそう。

FRaU SDGs号にはじまった石川さん率いるSDGsプロジェクトは、これから2030年まで続きます。今後のプランは現在策定中ですが、さまざまなメディア展開はもちろん、企業や自治体を巻き込んだダイニングイベントやツーリズムなど、さまざまな方法を模索していく予定とのこと。
「SDGsの推進を、企業だけに任せてちゃダメなんです。生活者、つまり買う人、使う人、食べる人を巻き込んで、少しずつ積み上げて、たくさんの人がアクションを起こすところまでもっていかなくちゃ。なかでも『食』は、間違いなくメインで取り組むカテゴリーです。皆さん、ぜひ僕たちと一緒に進みましょう!」

この記事を作った人

佐々木ひろこ

日本で国際関係論を、アメリカで調理学とジャーナリズムを、香港で文化人類学を学び、現在フードライター、エディター、翻訳家。多くの雑誌や書籍、ウェブサイトに寄稿中。料理人を中心としたサステナブルシーフード勉強会“Chefs for the Blue”の世話人。

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