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更新日:2019.06.23連載

「人にモテるようになるには?」 | 鮨屋は閉店後がおもしろい。女将の深夜スイーツとぼやきvol.3

函館の名店【鮨処 ひろ季】。地物ネタで握る鮨はもちろん、それ以上に話題を集めているのが女将・緋田和美さんが深夜につくるパティシエ顔負けのデザート。この連載では、そんな女将が披露する珠玉のスイーツをご紹介しつつ、軽妙なトークで鮨屋の裏話やこぼれ話をお届けします。今日はプリン・ア・ラ・モードです。シンプルだけど一番つくるのが楽しいスイーツのひとつです。

スイーツを食べて悲しくなる人はいない

    プリンは硬めに限ります。今風のとろとろプリンとか、プリンじゃねえし!って思います

 そもそも私がなぜパティシエでもないのにガチでケーキつくりをしているのか。それは、ケーキが「ポジティブのかたまり」だからです。

「こんな嫌なことがあってぇ~」って泣きながらケーキ食べる人っていないでしょう。みんなが喜ぶもの、みんなが楽しむもの。プラスなんです全部。だからつくる時も絶対悪いことは考えないようにします。大音量で音楽かけて、テンション上げまくって。人を幸せにするものだから、ポジティブな気分でつくります。そうすると食べる人にもポジティブが伝わるでしょう。

気は使わないのも、使いすぎるのも過ぎもダメ

    材料は卵、砂糖、牛乳、バニラエッセンスだけ。昔ながらの味です

 私は22歳で女将になりましたが、それまで飲食業に関わったこともないし、やろうとも思わなかった。それが今では飲食業向けのセミナーで講師をしたりしているわけなんですが、そもそもどの業界でも「モテる」人になることが大事だと思います。異性にじゃなく、人間にモテる人。そのためには自分が何をしてもらったら嬉しいかを考えて行動しなきゃならない。

 例えば、お店でやたら気を使ってくる店員さんっているでしょ。グラス空いた途端「お飲み物いかがですか」って。そうじゃなく、飲み終わって空になった状態で、目をチラチラさせた時がタイミングなんですよ。お客さんもお連れの方に「一人だけペース早い」って思われたくないでしょうし。自分が飲食店でサービスを受ける側だったらどうか、というのを常に応用する。

 お客さん同士が話している時に話しかけてくる店員もよくないですね。言わなきゃならない時は私も言いますよ、どうしても1分以内で食べてもらいたい鮮度重視の食材の時とか。それはそっちの方が結果的にお客さんが喜ぶから。

夫婦か、不倫か、一瞬で見分ける

    カラメルソースもしっかり焦がして、苦味を出すのが好きです

 あと、私は男女のお客様が来ると瞬時にカップルかどうか見分けられます。距離感とか醸し出す雰囲気で。ただの同僚同士でも、不倫同士でも分かるものです。そんな時に雨が降ってきて、傘を1本しか貸せない場合は、カップルなら小さめの傘、そうじゃなければなるべく大きい傘を貸します。女性の気持ち考えたらその方が嬉しいですよね。

 また、常連さんがお客さんを連れて来た時は、あえてその常連さんにキツめの言葉をかけます。「また今日も飲むんでしょう」なんて。そうすると常連さんは「ママが勧めるからだよ~」とか言って、店のお得意さん然として連れてきたお客さんに対して鼻が高くなりますよね。あと接待の緊張もほどけて話しやすくなる。そういう小さな気遣いをすることで、人からモテる店員になれます。

努力しないのに「稼ぎたい」だと?

    「ア・ラ・モード」はフランス語で、「流行の」「現代風」などという意味だそうです

 私、同年代の友達がいないんですよね。50代とか70代とかが多い。同世代の人って、会社の愚痴とかもっとお金稼ぎたいとか言うばっかりで、行動に起こしてないのよ。稼ぎたい、もっと上に行きたいなら、じゃあ何をしなきゃって言っても、行動に移さないの。努力しない。

 で、休むのよ。会社員ならまだしも、自営業者でも暦通りに休むの。1週間7日あるとしたら8日働かなきゃならないよってよく言うの。休む理由って何なのよ。仕事のない日でも、私は時間があれば本屋にずっといて、読まない本でも少しでも興味があれば買って、時間があるときに読んでいます。

 東京に行った時にちょっとでも時間があれば必ず美術館に行きます。発想の源、全部仕事に活かせるのよ。病院脱走して6時間かけて観たダリ展、素晴らしいと思ったねあの色使い。ダリは奇才って言われてるけど、奇才じゃなくて、暖かい色を見える目で表現したんだって。

美術に触れることでビジネス感覚が磨かれる

    本業?についても触れないと、スイーツ店だと思われてしまいますね。酒蔵、巡っていますよ

 今、世界の経営者たちはビジネススクールではなくアートを見ろという風潮になっているそうです。私は昔からものづくりも、発想も、企画も好きだけど、そのための「目」は美術や書に触れることで養われると思っています。何かを「選ぶ」能力よりも、「捨てる」能力を研ぎ澄ますほうが重要なんです。瞬時にいいものを選ぶこと。その一瞬の判断が経営に関わりますから。素早く、正しく選んで、正しく捨てる。

 外国の美術館で何十億とかの絵を見てきていると、もう何万円とかの安っぽいタペストリーなんて手に入れようと思わないですね。本当にすごい作品を見ると、本物にしか興味がなくなるし見たくなくなる。そうやって本物と偽物を見分ける目を養ったんです。人の感情を読むことができるようになるんです。

 そのおかげで、詐欺師を瞬時に見抜くこともできるようになりました。詐欺師、よく来ますよ鮨屋に。その話は次回ゆっくり…。

緋田 和美(あけた かずみ)

22歳で【鮨処 ひろ季】の女将になり、大将の緋田広樹さんとともに15年間店を切り盛り。名誉唎酒師、酒匠と日本酒における最高峰の資格を保有。深夜、閉店後に大音量のBGMをかけてスイーツをつくるのが趣味。

この記事を作った人

猫田しげる

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