料理人の愛読書をご紹介「シェフの本棚」|【レストランOGINO】荻野信也さん
料理人の方々がどんな本を読み、どんな学びを得ているのか――、そんな料理人の愛読書をご紹介する「シェフの本棚」。食材を加工し、そこに付加価値をつけていくことは料理人だからこその表現方法。それを教えてくれたのは、何十冊もの本たちであったと語る荻野シェフ。そんな彼が知恵としている本を伺った。
【レストランOGINO】 荻野信也さん
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大阪の調理師学校、同校フランス校で学んだあと都内のレストランを中心に修業。28歳のときに自身のお店【レストランOGINO】を池尻大橋にオープン。その後、シャルキュトリーやフレンチデリをテークアウトできる【ターブルオギノ】を開設。フレンチの技術を使い、添加物に頼らない取り組みを行っている。
料理人は加工の知恵と技で「表現者」にもなれる
料理人の存在意義や価値は一体どこにあるのでしょうか。限られたお客さまのために料理をこしらえること? 僕はそうは思いません。
たとえば曲がったニンジンは規格外品として敬遠されがちですが、料理人ならではの加工技術とアイデアを駆使すれば、刻んでサラダにしたり、ミキサーにかけてスープにしたりして有効に活用できる。「もったいないをなくそう」と世の中に一石を投じる表現者にもなれるのです。
『新版 社員をサーフィンに行かせようパタゴニア経営のすべて』イヴォン・シュイナード著、井口 耕二訳/ダイヤモンド社
そうした示唆を僕に与えてくれたのは『新版 社員をサーフィンに行かせよう パタゴニア経営のすべて』という本でした。著者のパタゴニア創業者は言い切ります。「サステナブルなんてものは存在しない。私たちにできる一番のことは、与える害を最小限にすることだ」と。
僕らの業界にしたってそうです。サステナブルな食材を選ぶだけではサスティナビリティは実現しません。なぜって、それを運べばCOが排出されるでしょう。であれば、なるべく自分の目が届く範囲で、必要な分だけ確保するようにしたらいいのです。
『食の未来のためのフィールドノート』(上・下)ダン・バーバー著、小坂 恵理訳/NTT出版
そんな発想を行動に移すべく、僕は自分で畑をやったり、狩猟したりしています。料理人の責任を追求し続ける三つ星シェフ、ダン・バーバーの著作『食の未来のためのフィールドノート』がその後押しをしてくれました。これを読んだら恥ずかしくなりましたね。川上から川下まで経験しないままに、鼻の穴を膨らませて己の料理をあれこれ語ることが。
『いのちへの礼儀』生田 武志著/筑摩書房
やはり実際に生き物を殺してみなければ、食べるという行為の本質を理解するのは難しいのでしょう。『いのちへの礼儀』でも論じられているように、僕も人と動物は共存ではなく、「共生」するべきだと思います。今、人間は食物連鎖から完全に切り離されていますけどね、どうすれば食物連鎖の一部になれるかを意識すれば、料理人として何ができるかがおのずと見えてくるはず。僕はそれを模索し、表現し続ける料理人でありたいですね。
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イヴォン・シュイナード著、井口 耕二訳/ダイヤモンド社
いい波が来たら、就業時間内であっても上司の許可なくサーフィンに行くことを承認する。パタゴニアはなぜそうした型破りなマネジメントを実践するのか。創業者のイヴォン・シュイナードが論ずる。
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ダン・バーバー著、小坂 恵理訳/NTT出版
食材への徹底したこだわりと美しい料理で知られるニューヨークの三つ星レストランのシェフが、現代のフードシステムの問題に切り込み、私たちが目指す未来の食のあり方に迫るノンフィクション。
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生田 武志著/筑摩書房
人間にとって動物とは何者なのか。それを問うことは、人類の来し方を振り返り、肉食への態度を語ることだ。人間の生と死を洞察してきた著者が動物の生と死に向き合い、人間と動物の共生の道を示す。
いかがでしたか。料理人の愛読書「シェフの本棚」も掲載されている冊子「hitosara quarterly magazine」は、グルメサイト「ヒトサラ」が加盟店様向けに発行している食のトレンドブックです。日本から世界まで、あらゆる角度から食の情報を集めています。下記リンクより試し読みもできます。ぜひチェックしてみてください。
【OGINO organic Restaurant】
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住所:東京都世田谷区池尻2-20-9 SPAZIO R-655 1F
アクセス:東急 池尻大橋駅店舗詳細はこちら >
この記事を作った人
撮影/佐藤顕子(書影) 取材・文/甘利美緒
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