更新日:2019.11.21[PR]
ボジョレーヌーヴォーの楽しみ方と魅力を名店のソムリエにきく④ 広尾【鮨 在】
毎年、秋の収穫期に解禁され、日本でも一種のお祭りのように盛り上がるボジョレーヌーヴォー。2019年の解禁に先立ち、ヒトサラMAGAZINEでは、解禁カウントダウン企画の記事をお届け! 名店のソムリエたちに、ボジョレーヌーヴォーの魅力、味わい、そして楽しみ方のポイントをインタビューしていきます。
鮨をも包み込むボジョレーヌーヴォーの奥深さ
まさか、お鮨とボジョレーヌーヴォーがこんなにも合うとは! そんな意外性に満ちたマリアージュを教えてくれたのは、【鮨 在】のソムリエ・保坂卓さんだ。 “鮨とワイン”という新しい楽しみ方で、今年5月の開店以来、早くも鮨通のみならず、ワイン通の心までもがっちりつかんでいる。
通常置いているワインは5~6種というが、【鮨 在】にはワインリストがない。大将の岡田貴裕さんが毎朝豊洲市場で仕入れるネタに合わせてその日に出すワインを決めているのだという。
「旬ならではのネタのひとつひとつを生かしたいです」と保坂さんは語る。鮨ネタは、季節によって魚種や産地も違えば脂ののり方も違う。マグロひとつをとっても、“今日のマグロ”には酸味がしっかりあるものがいいのか、果実味が豊かなものがいいのか、ネタに合わせて選ぶのだという。
保坂さんは洋食以外に韓国料理やエスニック、焼肉など、さまざまなジャンルの料理とのペアリングを経験。「鮨とワインは、一番難しいと感じています。だからこそやりがいがあります」
また、通常、鮨には“白身にはシャンパーニュや白”、“小肌などのヒカリモノにはロゼ”が合うとされているが、保坂さんは「じつは、ボジョレーヌーヴォーも、予想以上に奥深い味わいが楽しめるのです」と満面の笑顔を見せる。
「ボジョレーヌーヴォーは、全体的にはフレッシュでフルーティーと評されますが、生産者によって香りや味の構成が異なる、じつに奥深いワイン。ボジョレーという地域は、もともと自然派の造り手が多いエリアです。トラディショナルな味わいのものから、フィルターをかけず(濾過せず)に果実の旨みをそのまま封じ込めたものなども多く、“型にとらわれすぎない、バラエティ豊か”なワインの宝庫でもあるのです。しかも、果実味と酸味のバランスがいいので、料理とのバランスが取りやすい。鮨とのマリアージュはチャレンジングではありますが、魚の脂ののり方をきちんと見れば、ボジョレーヌーヴォーの味わいと香りにぴたりとはまるのです」。
鮨の“仕事”が、ボジョレーヌーヴォーをさらにおいしくする
『車海老の握り』(この日は長崎産)。酢飯には赤酢と塩を使用、赤酢の酸味が海老の甘さを引き立てる。ボジョレーヌーヴォーを合わせると、「鮨の酸味、甘み、旨み、塩味にワインの苦みが加わり、五味が整う」と保坂さん
前菜から『熟成ブリの芽ネギ巻き』。まだ脂がのりすぎていない北海道産ブリを3日かけて熟成させ、さらにうまみを引き出す。そのブリの味わいをさらに高みに上げるのが、フレッシュな果実味と酸味をもつボジョレーヌーヴォーだ
たとえば、今回の『車海老』。さっと茹でて甘みを引き出し、煮切りを塗ったシンプルな仕立てだが、ボジョレーヌーヴォーにはバナナやクローブなどスパイスのような香りがあるため、エスニックによく使われるエビはワインの香りに同調して、オリエンタルなニュアンスも楽しんでもらえると考えたのだという。
また、コースの最初に出るおつまみの『熟成ブリの芽ネギ巻き』は、3日寝かせて“づけ”にしたブリのうまみとねっとりとした食感、芽ネギの爽やかさがボジョレーヌーヴォーならではのフレッシュな酸味と相まって、濃厚な味ながら後味はすっきり。
「ボジョレーヌーヴォーは、渋みにフォーカスするなら『カツオ』や『マグロ』、ミネラル感とのバランスを取るなら『煮ハマグリ』もいい。白身なら昆布〆をして味を濃縮させて煮切りを付ければワインのフルーティーさにも寄り添います。『サワラ』なら皮目を焼いてもおいしいし、穴子はテッパン(笑)。鮨がよりおいしく感じられると思います」。
ボジョレーヌーヴォーが大好きで毎年チェックするという保坂さん。大手生産者のものや自然派のちいさな造り手などをセレクトするという。「個性が違ってどちらも魅力的。飲み比べが楽しいですよね」
サービス温度を変えて、さまざまな表情を引き出す
この言葉を受け、大将の岡田さんはこう語る。
「長いこと、『鮨にワインは合わない』と思っていました。でも、保坂さんのワイン選びを見て、考えが180度変わりました。赤酢のシャリも、赤ワインの苦みで甘みや旨みを感じたり、新しい発見がありました。よく、試飲と試食も一緒にするのですが、その相性のよさに驚いています」
今年は、店では2~3種類のボジョレーヌーヴォーを用意し、コースのペアリングとしてグラスで提供していく予定だと、保坂さんは話す。
「ペアリングでは温度にも工夫したいと思っていまして、前菜ではワインを12~13℃で合わせ、フレッシュ感が際立つように。そして握りは、15~16℃で酢飯がまろやかにマッチする感覚を味わってもらいたい。ボジョレーヌーヴォーの可能性は、まだまだ大きい。これからも、ペアリングの楽しさを探求していきたいと思っています」
大将の岡田貴裕さん。「『赤酢のシャリとワインが合う』ということに驚いています。お客さまの反応がダイレクトに感じられるのが板場の一番の楽しみですが、ボジョレーヌーヴォーと合わせたときの反応も楽しみですね」
ソムリエプロフィール
保坂卓さん-
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山梨県甲府市生まれ。アルバイトで入店した韓国料理店にソムリエがいたことが、ワインに興味をもったきっかけ。そのあと、飲食業を離れ、「ニコライ・バーグマン」や「カントリー・ハーベスト」などの人気花店で働くも、「ワインに真剣に向き合いたい」と再び飲食の世界へ。名ソムリエ・大越基裕さんがオーナーを務める【An-Di】で、研鑽を積む。2019年5月より【鮨 在】ソムリエに。
この記事を作った人
取材・文/安齋喜美子 カメラマン/原務
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