料理人の愛読書をご紹介「シェフの本棚」|小林武志さん
料理人の方々がどんな本を読み、どんな学びを得ているのか――、そんな料理人の愛読書をご紹介する「シェフの本棚」。自分の店を持ってからわずか5年でミシュランの星を獲得した実力派の料理人・小林武志さんはいわゆる〝本の虫〞であった。かつての愛読書3冊を教えていただくと、彼の中国料理に対する揺るがぬ哲学が透けて見えてきた。
料理人・小林武志さん
点と点をつないで一本の太い線にする読書の効能
料理人は調理師の免許を取っても、すぐにいろんなことをやれるようになるわけではありません。だから、若かりし頃の私はせめて知識を養っておこうと、とにかく本を読みました。母校の辻調理師専門学校で講師をやっていたときは、夜中になるとしんと静まり返った校内の図書室に忍び込み、読書にふけったもの。四畳半の自宅も、その3分の2は書物で埋め尽くされていました。
『華味三昧―中国料理の文化と歴史』/講談社
『華味三昧―中国料理の文化と歴史』は、まさにそんな修業時代に出合った一冊。現場での最初の師匠、【知味 竹爐山房】の山本 豊さんが実に博識のある方で、「中国料理をやるならその文化や歴史を知っておいた方がいい。コバちゃん、これを読んでみたら?」と薦めてくださったのです。そもそも中国に円卓は存在せず、四角いテーブルで食事していたとかね、厨房にいるだけじゃ知り得ない蘊蓄がちりばめられていて、前のめりでページをめくりました。
『ことばの歳時記』金田一春彦 著/新潮社
山本さんの影響を受けて読んだ本の中には、『ことばの歳時記』というタイトルのものもありました。日本人の季節に対する感性はとても繊細であるということをしみじみと考えるきっかけになりましたっけ。
『色の名前』近江源太郎 監修/角川書店
料理長という立場になり、メニューの名前を決める際の参考にと求めた『色の名前』という本もそうです。日本人は微差に注目し、それを重んじられる民族だと感じました。私の料理は時に「丁寧を極めている」と形容していただきますが、実際は包丁をきちんと研いだり、火加減を大切にしたり、当たり前のことを当たり前にやっているだけです。思えばそれは、日本人である私にもともと備わっていた感性と、物心ついてから手に取った書物によって培われた感性の賜物かもしれません。
読書には記憶の中の点と点をつなぎ合わせてくれる効能があります。それがいつか線になり、料理をするうえで閃きを与えてくれる。だから、若い方にはなるべくいろいろな本に親しんでいただきたいですね。
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講談社
1981年刊行。中国料理の変遷史、北京における食の歳時記・風俗記、豚食文化の歴史、医食同源のルーツなど、中国料理の文化と歴史をさまざまな角度から浮き彫りにした一冊。
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金田一春彦 著/新潮社
著者である日本語研究の第一人者が深い学識とユニークな発想にもとづいて、四季折々の言葉の背後に広がる日本人の生活と感情、歴史と民俗を広い視野で捉えた異色の歳時記。
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近江源太郎 監修/角川書店
自然の中に存在する多彩な色の名前を、その由来となった自然の風景写真と共に紹介した色彩図鑑。微差で色を識別するところに日本人ならではの繊細な美意識が感じられるはず。
この記事を作った人
撮影/佐藤顕子(書影) 取材・文/甘利美緒
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