ヒトサラマガジンとは RSS

更新日:2020.04.10食トレンド

まるでフレンチ⁉ 華やかで独創的なチャイニーズ・ガストロノミー|ベルロオジエ(京都)

2019年12月、京都の中心地である四条河原町にホテルを有する商業施設【Good Nature Station】がオープンしました。その2階に注目のストロノミーレストラン3軒が集まった「プレミアム・ガストロノミーフロア」が登場。地方の名店が装いも新たにこの地に移転してきたり、新進気鋭のシェフの初出店など、話題沸騰中。そのひとつが兵庫・苦楽園からやってきた【VELROSIER】。中華をベースとしながらも、その繊細な盛り付けや、鮮やかな色合いはまさにフレンチの様。驚きの一皿一皿が待ち受けています。

まるでフレンチ⁉ 華やかで独創的なチャイニーズ・ガストロノミー|ベルロオジエ(京都)

はじめて目にするチャイニーズ・ガストロノミー

スタイリッシュなアプローチをくぐり抜け、店内に一歩足を踏み込むとそこは黒を基調としたラグジュアリーな空間。まさかここがチャイニーズレストランとは思いもよらないほど、まるでモダンフレンチでも食べに来たかのような錯覚に陥ります。

    ヴェルロジェの店内

    アーティスティックなゴールドのシャンデリアが印象的な、黒を基調にしたドラマティックな店内。テーブル感覚も広く、ソファもゆったりとし優雅な時間を過ごすことができる

 そう、こここそが西宮・苦楽園でマダムたちに絶大な人気を誇っていた【VELROSIER】です。このレストランの最大の特徴は、一言で言うなら“フレンチのようなチャイニーズ”。でもその世界観は、中華を美しく仕上げたヌーベルシノワとはまた一線を課す全く別のもの。中華と言う味のベースはあるものの、そこには中華の枠を超えたチャイニーズ・ガストロノミーという、ここだけでしかお目にかかれない唯一無二の世界があります。

    4種のアミューズ

    色とりどりな美しい4種のアミューズ。XO醤で作った蕗味噌や山菜を使ったアメリカンドッグや、タルトに見立てた海老シュウマイ、洋食のパイ生地を使ったチャーシューパイなど

 10皿ほどで構成されるランチと約14皿で構成されるディナー。一皿一皿が中華では見たことがない色使いや、ソース。かといって、フレンチとはまた異なる……。運ばれてくるたびに“素敵と!”と思わず口にせずにはいられません。

 一口食べてみると、様々な食材の違う食感、温度感のものが口の中で賑やかにはじけ、こんな組み合わせ初めてだという驚きがあります。味のファーストインプレッションはフレンチのよう。でも噛みしめるほどに、味わうほどに、まぎれもない中華の味わいになっていきます。その妙がなんとも楽しく驚きの連続なのです。

ミシュラン3ツ星店で見つけた新たな道

「広東料理一筋でやってきましたからね。どう作ろうが、自然と最後には中華になるんです」とシェフの岩崎祐司さん。高校卒業後、ホテル日航大阪の【桃李】に入り、広東料理を学び始めます。その後、関西のホテルの中国料理店などを経験し、2014年に独立。苦楽園でチャイニーズ・ガストロノミーの店をオープンさせます。

    フォワグラ最中

    苦楽園の時からのシグネチャー料理でもあるフォワグラ最中。フォワグラを一度コンフィにしてから紹興酒につけることで、濃厚な味わいを残しつつ、紹興酒の豊かな香りも楽しめる

 ホテルの中華という王道から、”中華におけるガストロノミー”を目指したのには、ミシュランの3ツ星店との衝撃な出会いがあったからだと言います。「中国に留学しようかなど自分のこれからの道を探しているときに、大阪で初めて3ツ星をとった【Hajime RESTAURANT GASTRONOMIQUE OSAKA JAPON】(現HAJIME)に行ったんです。もう何を食べても鳥肌が立ちましたね。その表現方法や特に火入れの仕方は驚きでした」。

    岩崎シェフ

    広々とした解放感あふれるオープンキッチンで、料理の仕上がりを見るのも楽しい。「ベストなタイミングで料理を出せた時は最高に気持ちがいいです」とシェフの岩崎さん

 年齢に差はあれど、同じ料理人としてここまで差が出るのかと驚愕したと言います。その反面、同じ人間なのだから僕も努力すれば新しい中華の表現ができるようになるだろうとも……。それ以来寝る間も惜しんで独学で勉強してきたそう。

「”フレンチのようですね”とよく形容されますが、フレンチの経験はないんです。僕がつくる料理はあくまで中華。中華のテクニックは“炒める”ひとつをとっても何種類もあり、すごく細かい。そこにはすべての料理の基本が詰まっています。様々なフレンチやイタリアンを勉強する中で、“これは中華のあの技法と似ているな”などと置き換えることで理解するのが早くなりましたね」と岩崎さん。

素材の組み合わせで生まれる新しい味の魅惑

 「ガストロノミーとして常に新しいものを目指し、五感を刺激し続けたい」という岩崎さん。例えば、中華の人気メニューである「餃子」。それが岩崎さんの手にかかれば、緑のパウダーが美しい"スプーンですくう餃子”になって登場。底にはニラの茶碗蒸し、その上に豚とキャベツなどを炒めた餡に生姜のソースをかけます。そして一度蒸してから、パリパリな餃子の皮をトッピングし、最後に茹でたニラで作ったアイスパウダーを。上品な味わいと共に、そこにはきちんと餃子のエッセンスが感じられます。これがまたワインとすごく合う。普段親しんでいる料理だけに、形が変わって出てくると驚きと楽しさがひときわ湧き上がってきます。

    餃子

    全くの新しい顔になった餃子は苦楽園時代からリクエストの多い人気の一品。ニンニクは使用しておらず、上品な味わい。すべての料理で、にんにくはあえて使わないのも岩崎流

 そしてもう一つの大きな特徴が、素材の味をかけあわせて、誰もが感じたことのない新しい味を探求したいというシェフの哲学です。

 「最近の調理は引き算が多いですが、僕は食材と食材をチェーンのように組み合わせていきます。だから一皿にいろいろな食材や食感をいれるように意識しています」。たとえば、山のものと海のものを組み合わせたり、食感や温度を変えたり。料理に仕掛けたさまざまなコントラストで脳に刺激を与え続けるのです。中華ではほとんど使われることのない野菜のピュレを添えてみるのもその一つ。そうすることで、中華でもない、はたまたフレンチでもない新しい独自の味が生み出されます。

 よくリクエストされるもの以外は月ごとにメニューを変え、同じものを作ることはないという岩崎さん。行くたびに新たなる出会いに満ち溢れた店、リピーターが多いというのもうなずけます。

ベルロオジエ

  • 住所:京都府京都市下京区河原町四条下ル2丁目稲荷町318番6
    GOOD NATURE STATION 2F
    電話:075-744-6984
    営業時間:12:00~15:00(12:30までに入店)、18:30~22:30(19:00までに入店)
    無休
    コース:ランチ(約10皿)7,000円、12,000円(税・サ別)
        ディナー(約14皿)15,000円、20,000円(税・サ別)

※コロナウイルスの影響で4月半ばまで営業を自粛しています。最新情報はお店公式HP、またはSNSにてご確認ください。

予約カレンダー
カレンダーで他の日を見る

この記事を作った人

撮影/吉田祥平 取材/楠井祐介

この記事に関連するエリア・タグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(11/15~11/21)

エリアから探す