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更新日:2020.07.07グルメラボ

「ウィズコロナ時代」に飲食店ができること

2020年春、新型コロナウイルスの感染が拡大し、外食産業に打撃を与えていた。先が見えない不安な状況で「今できること」に注力した飲食店に、外出自粛の影響が出始めてからの取り組みや、緊急事態宣言の発令を受けての対応を聞いた。
※情報は2020年5月時点のものです。

テイクアウト

01_こんな時こそ考える「お客さまとの関係」

緊急事態宣言中、対応しながらもファンを増やした店がある。地元からオンライン上まで、各店が取り組んだファンづくりを探った。

国領町【ドン ブラボー】

郊外に人を呼ぶレストランが地元でも愛される理由

    手づくり生地を使ったピザを店内の窯で焼く

    手づくり生地を使ったピザを店内の窯で焼く

「郊外に人を呼ぶレストラン」の代表格として挙げられる、国領の【ドン ブラボー】。現在遠方客が訪れるのは難しい状況だが、オーナーシェフの平雅一さんは「今は地域の人たちのためになることをしたい」と話す。しかし、新型コロナウイルスの影響で初めて地元客に目が向いたのではない。

  • ここでしか食べられないイタリアンを感じさせるコース内容

    ここでしか食べられないイタリアンを感じさせるコース内容

  • 発酵トマトのソースがしっかりと絡んだパスタ『発酵トマトのパスタ レモン』

    発酵トマトのソースがしっかりと絡んだパスタ『発酵トマトのパスタ レモン』

今、お店は9年目。レストランとしてやりたいことを追求するために、アラカルトからコースに絞り、価格も徐々に上げ、その評判は遠くまで届くように。地元客で満席だった店内は、いつしか遠方客の数が上回った。新型コロナの影響を受けるまで8割ほどが遠方客だったという。

2店舗目を出店するなら都心でも通用しそうだが、今年の夏には同じく国領にカジュアルなピザの専門店をオープンする。「食通じゃなくてもうちの店を知ってくれている人が多いのは、国領。どの街の人よりも来てくれる可能性は高い。安心できる素材を使った料理を食べてほしいと思っています」。

    店内奥は半個室となっている

    店内奥は半個室となっている

4月以降は緊急事態宣言を受けて営業を縮小し、ピザを中心にしたテイクアウトや、近隣のレストランと連携したデリバリーが地元の人々を惹きつけている。しばらくは地域住民がメインのレストラン利用者となる可能性もあるなかで、平時の客層に縛られないバランス感覚が鍵となりそうだ。

平雅一さん

平雅一さん

「23 区外でレストランを盛り上げる動きをつくりたい」

代々木上原【sio(シオ)】/二重橋前【o/sio(オシオ)】

オンライン上でも新たなファンを増やす

    【オシオ】の名物である『ナポリタンを超えたナポリタン』も、レシピや調理ポイントを公開した

    【オシオ】の名物である『ナポリタンを超えたナポリタン』も、レシピや調理ポイントを公開した

高級住宅街にあるミシュラン一つ星獲得店【シオ】と、カジュアルラインとして昨年10月に東京駅近くにオープンした【オシオ】。【オシオ】は手頃な値段で【シオ】のエッセンスが味わえるとあって、平日は東京駅付近で働く人を中心に、週末は他の街からも客が訪れるような店となり、両店のファン層をさらに厚くすることになった。

  • 代々木上原【sio】の店内<br />

    代々木上原【sio】の店内

  • 二重橋前【o/sio】の店内

    二重橋前【o/sio】の店内

外出自粛の影響が先に現れたのは、ビジネス街にある【オシオ】。街にいる人自体が減った。両店のオーナーシェフである鳥羽周作さんは「料理人として自宅で料理をする人のために何かできないか」と考え、ネット上で「#おうちでsio」というハッシュタグとともに店で提供している料理のレシピ公開を始め、来店したことがない人の間でも話題に。「家での時間を少しでも幸せに過ごしてほしい」という思いからと、今できる「新たなファンづくり」の形でもある。

鳥羽周作さん

鳥羽周作さん

「“幸せの分母”を増やすためのことをしたいんです」

清澄白河【O2】

気軽なテイクアウトで地元客との関係を築く

    道路に面したカウンターで客とやりとりする

    道路に面したカウンターで客とやりとりする

2018年にオープンして以来、住宅街にありながら予約が取りにくい中国料理店として知られる【O2】。4月から始めたテイクアウトでは、焼売や春巻きなどごはんのおかずを意識した中華総菜を提供する。営業日の朝にテイクアウトメニューを発信しているSNSは、1カ月でフォロワーが1,000人ほど増えたそう。

  • 『上海焼きそば』800円

    『上海焼きそば』800円

  • 春限定の『ふきのとうの焼売』1,000円

    春限定の『ふきのとうの焼売』1,000円

レストラン利用者は地域外の人が多かったが、今まで来店したことがない地元の人もテイクアウトを利用するようになり、好評だ。

「だからといって、テイクアウトのお客さんが、コロナが落ち着いてからレストランに食べに来るわけではないと思うんです。テイクアウトとレストランには求めるものが違うので。通常営業が再開できてからも、月1くらいでテイクアウトイベントをできたらと思っています」とオーナーシェフの大津光太郎さん。テイクアウトが地元の人に味を知ってもらうきっかけとなり、地域との新たな関わりが始まっている。

大津光太郎さん

大津光太郎さん

「地域に感謝して今後も地元の人にできることを考えます」


  

02_外出自粛を受けてレストランはどう動いたか

2月下旬に大規模イベントの開催自粛が要請され、飲食店にも影響が見え始めた。いち早く対策を始めたシェフに、緊急事態宣言発令後の今に至るまでを聞いた。

中目黒【リストランテ カシーナ カナミッラ】

テイクアウトで街の胃袋と利益を支える

    アニョロッティ』はバターソース、パルミジャーノ、つくり方の説明書とセット。完成すると写真のように。

    アニョロッティ』はバターソース、パルミジャーノ、つくり方の説明書とセット。完成すると写真のように。

「テイクアウトに踏み切ったのは売り上げの補填という意味もあるんですけど、家で楽しい時間をつくる提案ができることが、レストランの意義ではないかとも思ったんです」と話すのは、2月末にいち早くテイクアウトを始めたオーナーシェフの岡野健介さん。

    『クレーシャ』はクレープのように巻いて提供する。

    『クレーシャ』はクレープのように巻いて提供する。

常連を通じてSNSで広がり、ひとまず2月29日から3月12日までの限定で提供した『クレーシャ』(1,000円)は毎日準備した20個が完売。『アニョロッティ』(1,500円)と合わせて、少なくとも2月に当月キャンセルがあった分の補填になったという。緊急事態宣言後は『フォアグラチョコ』や『パプリカのマリネ』『野菜のズッパ』など、メニューの幅を広げてテイクアウトに対応している。

駒澤大学【ビストロコンフル】/学芸大学【えさけ】

「おつまみセット」で即座にテイクアウトに対応

    【ビストロコンフル】の詰め合わせは2,200円。真空冷凍にしたメイン料理は1,100円

    【ビストロコンフル】の詰め合わせは2,200円。真空冷凍にしたメイン料理は1,100円

相次ぐキャンセルで危機感を感じ、頭に浮かんだのは昨年末に販売したおつまみセット。駒沢大学にある【ビストロコンフル】と学芸大学にある姉妹店【えさけ】のオーナー、倉田俊輔さんはすぐに容器を購入してテイクアウトの準備に取りかかった。両店で前菜の詰め合わせを用意し、設備がある【ビストロコンフル】では肉・魚料理の真空パックを冷凍で提供し始めた。

    【えさけ】で販売したのは2,200円のおつまみセットと、1,100円のメイン料理

    【えさけ】で販売したのは2,200円のおつまみセットと、1,100円のメイン料理

外出自粛の影響が出始めた3月には詰め合わせが中心だったが、緊急事態宣言後にテイクアウトと近隣へのデリバリーのみの営業となってからは、毎日食べたくなるような料理をテーマに総菜や弁当などメニュー数を大幅に増やし、リーズナブルなメニューも豊富に。下処理した食材をセットにし、自宅で完成させるような料理も考案中だ。

押上【スパイスカフェ】

アラカルトメニューの開放がひとり客を呼び込む

    カレーは『ラムキーマ』や『海老』など4種類。ランチで出すカレーを多めに仕込んだ。

    カレーは『ラムキーマ』や『海老』など4種類。ランチで出すカレーを多めに仕込んだ。

「3月頭に翌日の予約が1件しかなくなり、すぐに手を打ちました」と話すのは、オーナーシェフの伊藤一城さん。ランチ営業のある平日に限って、コース料理のみの提供だったディナータイムにアラカルトメニューを始めることにした。瞬く間にSNSで近隣の人々に伝わり、告知当日から満席に。

アラカルトの客が4割ほどとなったことで1人あたりの単価は8,000円から6,000円に落ちたものの、空席を残すダメージよりは良しと考えた。また、初めて訪れる客の姿も。「近所に住んでいる人が1人で来てくれるんです。アラカルトに潜在需要はあったということですね」

    コースは予約制でアラカルトの準備量が見えていたため、カレー以外のメニューもロスなく仕込みができたという。

    コースは予約制でアラカルトの準備量が見えていたため、カレー以外のメニューもロスなく仕込みができたという。

以前よりアラカルトをやってみたいという思いはあった。「今までは目の前のことをどうにか回していたけど、少し時間ができるのかなと。とりあえずやってみないと始まらない」と伊藤さん。緊急事態宣言後はテイクアウトや区内でのデリバリーに力を入れ、営業は情勢を見ながら判断している。

この記事を作った人

撮影/冨樫実和(【O2】、【リストランテ カシーナ カナミッラ】、 【ビストロコンフル】、【えさけ】、【スパイスカフェ】) 取材・文/泉友果子

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