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更新日:2021.04.15食トレンド デート・会食

日本酒ペアリングの新時代が到来、洋の皿×和酒の美味しさの頂に挑む|【MAEN Sake pairing restaurant】恵比寿

2021年3月、恵比寿に誕生した【MAEN(ミーン)】は、イタリアンベースの洋の皿と日本酒を1品1杯ずつ合わせるコースを驚きの美味しさと楽しさで提供。シェフと日本酒担当の二人に縁がある徳島と長野の食材を主軸とし、日本酒は全国の旨い地酒を用意。「口中燗」なる新たな試みも登場するなど、新次元のペアリングを体感できます。

MAEN『鹿芯玉 クリームチーズ 苺』

イタリアン出身のシェフと日本酒の伝道師がコラボ

恵比寿駅から徒歩3分、渋谷川近くの細長いビルの7階にある【MAEN】に一歩入ると、優しい空気感とワクワク感に包まれます。

徳島の伝統工芸・藍染めをキーカラーとし、薄灰色を合わせた設えは、どこか懐かしく落ち着いた趣。そこで待ち受ける洋の皿×日本酒のペアリングコースは、食材と料理、和酒の銘柄と提供法など、すべてが多種多様でハイクオリティ。自然体で過ごせる空間で、高揚感と幸福感にあふれる食体験が叶います。

    【MAEN】内観

    店名【MAEN(ミーン)】は、「作り手と食べ手との『間 MA』を、料理と酒で『縁 EN』へと紡ぐ」という意味をこめて

シックな照明の店内には、料理とお酒を最上の状態とタイミングで共に饗せるよう、カウンター11席を設えています。このミニマルな舞台で腕をふるうのが、オーナーシェフの井戸雄太さんと日本酒の伝道師・御子柴悟さんの二人。

2010年代、日本酒の新たなつくり手が綺羅星のごとく登場し、和酒の魅力を広める頃、井戸シェフはイタリアンやスペイン料理店で腕を磨きながら、御子柴さんは日本酒と和食の店で経験を積みながら、お酒・食材のつくり手と食べ手を結ぶ場を構想。そんな二人が出会い、タッグを組み、1品1杯ずつの渾身のペアリングワールドを披露しています。

徳島と長野の逸品食材で織りなす皿が和酒と響き合う

ペアリングコースは、『6品6酒コース』『8品8酒コース』の2種を用意。加えて、お酒の苦手な人も楽しめるよう、『料理のみ6品』『料理のみ8品』のコースがあり、好みのドリンクをアラカルトで合わせることも可能です。

食材は徳島と長野産が中心となり、無農薬栽培の野菜、鮮魚、銘柄肉やジビエ、山菜やきのこなど季節ごとの山里の幸が、産地直送で続々入荷します。

    MAEN 食材

    多彩な食材を産地から直送。日本指折りの好漁港・鳴門を有する徳島、大地の恵みの宝庫・長野の2県が揃うことで、食材の個性が増す

これは、井戸シェフの両親が徳島出身で、幼い頃から慣れ親しんだ地であること、御子柴さんの故郷が長野であることにちなむ縁。二人が現地に足を運び、生産者との絆を紡いで仕入れるスタイルを貫き、鶏舎で鶏の羽にまみれたこともあったそう。食材の背景と力強さを体感してつくる料理は、皿の上に産地の風景や季節の詩情が舞うような奥行きの深さです。

ある日のコースから、自慢の3品とペアリングの趣向を紹介しましょう。

『鹿芯玉 クリームチーズ 苺』

    MAEN『鹿芯玉 クリームチーズ 苺』

    鹿肉は日本の原風景が残る秘境・徳島県祖谷(いや)のジビエ業者から直接仕入れ

コースの最初に登場する井戸シェフのスペシャリテ。徳島の「祖谷地美栄」の鹿肉に繊細な火入れを施し、希少な芯玉部位の持ち味を頂点へ。苺の酸味をきかせたクリームチーズを肉でくるみ、日本酒と自家製発酵ドリンクを煮詰めたソースをつけて食べると、複雑味のある構成要素の味わいが渾然一体となり、陶酔ものの美味しさです。

御子柴さんがこの皿に合わせるのは熱燗。一皿目がジビエ料理×熱燗というインパクトに富むペアリングに心を奪われ、次の皿とお酒へのワクワク感が高まります。

『小林ゴールドエッグ 阿波尾鶏 椎茸』

    MAEN『小林ゴールドエッグ 阿波尾鶏 椎茸』

    コース中盤に饗されることが多い名物料理の一つ。卵型のキュートな器はオリジナル

調理技はフレンチのフラン、味わうと洋風茶碗蒸しの超進化系。80種以上もの卵を扱う徳島の「たまごのソムリエ」小林さんセレクトの卵、徳島の地鶏・阿波尾鶏、徳島「サンマッシュ櫛渕」の椎茸を主軸に、生クリームを巧みにきかせてミルキー&ほのぼのとした美味しさに仕上げています。

上部の低温ソテーしたカリッカリッの椎茸に加え、中の具にしっとり旨みの濃い椎茸と地鶏を仕込み、料理が和酒を呼ぶ趣向です。合わせるお酒は燗酒がメイン。口の中が椎茸スープを味わうような趣になり、深く長い余韻が続き、幸福感に包まれながら次の皿とお酒へ。

『阿波牛 新玉葱 人参』

    MAEN『阿波牛 新玉葱 人参』

    肉の美味しさに加え、塩だけの調味で2時間焼いて自然な甘みを引き出した野菜の旨みも圧巻

徳島と長野の食材を直送仕入れする【MAEN】には、東京では珍しい食材も多数。A5ランクの阿波牛もその一つで、さらに嬉しいのは、希少部位ハツがかなりの頻度で入荷すること。上質な赤身肉のような品のある旨みと、サクッと軽やかな食感を併せ持つ阿波牛ハツの美味しさは、この上なくドラマチックです。

季節の滋味が肉のアクセントになり、この皿では蕗味噌を添えています。お酒の合わせ方は変幻自在。洋の皿のメインである肉料理×日本酒のペアリングは、御子柴さんが得意とするところ。何を合わせるかはその日のお楽しみに。

約80銘柄の日本酒を揃え、最上のペアリングを探求

    MAEN 日本酒

    無限の可能性から、料理と日本酒がお互いを高め合うペアリングを探り、実証する

料理に合わせる日本酒は、全国の名蔵元が醸す地酒約80種を揃える豪快さとひたむきさ。その日の料理とゲストに応じた銘柄を提供温度帯・酒器とともに探り、井戸シェフと御子柴さんが実際に試し、「美味しい」と納得したペアリングのみを饗しています。

扱う銘柄は季節や食材に応じて順次入れ替え。なかには定番的なお酒もあり、ボディの強い肉料理に合う奈良「花巴」、群馬「流輝」、京都「弥栄鶴」、デザートに合わせている滋賀「双子座のスピカ(萩乃露)」などが代表格。さらに、新酒・春酒・夏酒・ひやおろしなどの季節酒を取り入れながら、コース全体の緩急をつけています。

    MAEN井戸シェフ

    新次元のペアリングを楽しいライブ感と共に届けつつ、程よい距離感のもてなしに徹するのも、この店の持ち味

銘酒揃いのラインナップに加え、御子柴さん独自の神業的な提供法も、【MAEN】のペアリングワールドをパワーアップしています。冷酒・常温・燗などの温度帯や酒器を替えるのはもとより、長野のどぶろくをガス感が残る状態で熱燗にする「ピチ燗」、炭酸ガスを注入してサワー風にするなど、新しくて美味しい試みも多数。

極めつきは、凍るギリギリまで冷やしたお酒と熱い料理を合わせる、温度差ペアリングです。料理の熱にひかれ、お酒の温度が口の中で上がり、通常は燗をつける際に変化する香りと味わいの状態を口内で体感できるという面白さ。【MAEN】で「口中燗」と呼んでいるスペシャルペアリングは、ぜひお店で体験を。

    MAEN 内観

    東京にいながら、徳島や長野を旅しているような気分にも。デートや一人ディナーなどにおすすめ

さらに、長野産木曽檜に徳島の藍染めを施した手づくりのプレート、藍染めのエプロン、大谷焼の器など、徳島と長野の風土と文化が薫る小物も、MAENワールドの大切なアイテムです。

料理とお酒、空間や小物のすべてに細やかな配慮が行き渡り、一つ一つに心がこもる……。

メニュー表には、「Special Thanks」の言葉に続き、食材の生産者や小物のつくり手たちの名前がずらり。ペアリングの妙味にひたりながら、つくる人・饗する人・食べる人の輪を感じ、「縁 EN」を紡げるのも、この店の醍醐味になっています。

この記事を作った人

取材・文/重松 久美子 撮影/岡本 祐介

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