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更新日:2017.04.19食トレンド デート・会食 旅グルメ 連載

台北【RAW】~Nature & Craft<ヒトサラ編集長の編集後記 第7回 アジア・フーディーズ紀行> 

「われわれは台湾に世界の風を持ち込み、われわれが獲得した技術や経験で、この地でとれる恵みとコラボさせ、新しい台湾の料理、いや、世界と台湾の料理の再構築をしているのです」

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台湾で最も予約が取りにくい店

 台湾に行く機会があったので、注目のレストランを何軒か訪れました。そのなかでも最近のモダンレストランブームを騒がせている【RAW】と【mume】の風景を綴ります。

 まずは【RAW】です。
 【RAW】は「Asia’s 50 Best Restaurants(アジアのベストレストラン50)」で常に上位をキープし、カリスマ的な人気を誇るシンガポールの【レストラン・アンドレ】のアンドレ・チャンさんが台北に開いたお店。2014年にオープンして以来、最も予約が取りにくいお店として台北のハイエンドなグルメシーンを牽引しています。

    お店の中から外を見た風景

 台北中山区の大直地区。ここは最近、高級マンションが立ち並ぶエリアとして新しい台北の顔になっています。
 街の新しい息吹を感じる大通りに面したガラス張りのお洒落なビルの1階にこの【RAW】は入っています。このビルには日本の【龍吟】の支店「祥雲龍吟」や、パティスリー サダハル アオキ(【台北晶華酒店】)など、日本の高級店も入っています。

 重いガラスの大きなドアを開けてもらい中に入ると、そこは天上の高い大きな空間になっていて、いきなり目に入ってくるのが、船の形を模した木のバーカウンター。南方松を細かく切って運んできて組み立てたらしく、流線型の美しいフォルムとディテールに、職人の細やかな技を見ることができます。

  • 入り口の壁

  • シェフズテーブルとキッチン

ネイチャー&クラフト

 この木は、キッチンの入り口でも使われていて、コンクリートとガラスの縦と横で区切られた空間に、流線と複雑系が持ち込まれます。木の芳香が実に気持ち良く漂い、安心させてくれます。テーブルはしっかりした木製の一点もので、カトラリーやメニューが引き出しに入っています。どこか大型図書館のような知的な空間といった感じもあります。メーンダイニングはこんな空間で、席はシェフズテーブルを含め60ほどでしょうか。

 「【RAW】のコンセプトはNature&Craftなんです」
そう教えてくれたのは、アンドレさんの右腕、シェフのアラン・ホワンさん。インテリアがすでに、それを物語っています。
 アランさんはカナダで生まれ、香港で育ち、フランスで学んだシェフ。1982年生まれだそうで、インターナショナルな感性で自国の料理を再構築する人たちが多い世代です。
「われわれは台湾に世界の風を持ち込み、われわれが獲得した技術や経験で、この地でとれる恵みとコラボさせ、新しい台湾の料理、いや、世界と台湾の料理の再構築をしているのです」。

自然派ワインとともに

 ワインはフランスの自然派中心とのことでしたので、ペアリングでお願いしました。
スタッフは一様に若く、スタイリッシュでフレンドリーです。英語と中国語のメニューがありますが、日本語はあまり通用しません。

 まずは、水をかけると大きくふくらむお手拭で手を拭くと、出てくるのが台湾の屋台をイメージしたベビーコーンのBBQ風。どこかしら懐かしい味です。

  • メニューは英語と中国語があります

  • 水をかけるとふくらむタオル

 筍やアワビが台湾のサンベイといわれるソースとイタリアンペストソースの組み合わせで出てきます。キレのいい白ワインが出てきます。ヴァンナチール特有の自然香が立ち上がります。
 そしてベビーオニオン。「台湾の人は玉ねぎが嫌いな人多いんですけど、これを食べると玉ねぎの概念が変わります」とスタッフの方が教えてくれます。下に玉ねぎのペーストが敷いてあって、ローストした玉ねぎがあって、その上に甘いベビーオニオン、エシャレットオイルがかかっています。「スプーンですくって玉ねぎの美味しさを全体で味わってください」。そう言われて口にすると、果実のデザートを食べているようです。
シュナン・ブラン主体のアロマが強くて濃厚な白ワインに合わせます。
 香ばしいライ麦パンに、チョコとニンニクとココナッツがついた軽いバターを付けて口に入れると、白ワインが引き立ちます。
そして、タコス。メキシコのタコスに日本のたこ焼きと温泉卵が乗っかります。これも屋台がイメージされているようです。

  • ベビーコーンのBBQ風

  • あわび

  • ベビーオニオン

  • タコス

 鴨料理です。ソースは後から注がれます。鴨が食べている穀物と鴨の各部位の肉がフライにされたりローストされたりしていて、これだけ食べてもかなり美味しいですが、ここに肝のソースが加わると、味の深みが増します。鴨をエサも含めその世界を全体でとらえて食べる感じです。食物連鎖の傲慢さを感じさせる一皿という感じもしますが、肉を余すところなく食べる料理ということでは、フロリレージュの川手シェフのつくる経産牛の料理にも似ていて、フードロスの問題を考える料理ともいえます。

    鴨をエサも含めその世界を全体でとらえて食べる

 次の料理にも同様のメッセージがありました。低温調理されたサーモントラウトと大根の酢漬けを合わせた料理です。酢漬けにはチャイニーズオリーブが添えられ、台湾フレーバーだということです。サーモンの皮やアラも捨てないでフライにして添えられてきます。
こららも白ワイン、シャルドネでいただきました。

  • サーモン

  • 牛頬肉のトマト煮込み

台湾歴の「二十四節気」にあわせて

 最後は牛頬肉のトマト煮込みにクリスピーなタピオカチップス、その上から純度85%といわれる濃厚なダークチョコレートが削ってかけられます。甘いリースリングが出てきて、デザートにマンゴーアイス、メレンゲ。そして、最後にもうひとつ、これも屋台をイメージするスターフルーツが入った甘いキャンディーが用意されました。遊び心も満点です。

 最後はお茶を頼みました。薫り高い阿里山の高原烏龍茶です。
昔、台湾の山岳部で凍頂烏龍茶の取材をした時のことが目の間に浮かんできました。霞たなびく深山の風景です。思わず深呼吸したくなる気分です。

  • マンゴーアイス

  • シェフのアラン・ホワンさん

 「Nature&Craftの意味が少し分かったような気がします。自然な空気感と食材、そして人の手になる人に感動を与える作品群」。そうシェフのアランさんに言うと、彼は何度も頷いて喜んでくれました。
「われわれは季節ごと、台湾歴の「二十四節気」にあわせ、月に2回少しずつ料理を変えていくんです。そのたびごとにメニューに旬とライフスタイルを織り込んでいきます」
とアラン・シェフ。
 この料理が1年に24回、食材やスタイルが変わって食べられるとしたら、それは好きな人なら世界中からやってくることでしょう。もちろん予約が取れればの話ですが。
【RAW】のこういったチャレンジは、確実に台湾のグルメシーンを変えていくのだと思いました。

 気になるお値段ですが、ランチもディナーも同じメニューで、1,850台湾ドル+10%サービス料。お酒は別ですが、だいたい7~8,000円くらいでしょうか。魅力的ですね。


予約は2週間前からwebのみで受付。
営業時間:Lunch:11:30~14:30、Dinner:18:00~22:00
定休日:月曜、火曜日

この記事を作った人

小西克博(ヒトサラ編集長)

北極から南極まで世界を旅してきた編集者、紀行作家。

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