更新日:2021.07.24食トレンド
辛いだけがスパイスじゃない!? 料理に個性を生み出す“広義のスパイス”に中毒者が増加中|中目黒【SPICEHOLIC】
「スパイスが好き」とは最近、至る所でよく耳にする話です。目下、スパイスをうたった料理は飲食業界の一大旋風を巻き起こすほど見逃せない存在。そんな中、2021年4月に中目黒にオープンした【SPICEHOLIC(スパイスホリック)】がにわかに注目を集めています。人々を中毒にする【SPICEHOLIC】の料理にはいろんな“スパイス”が使われていました。
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スパイシーな仕掛けたっぷり! 多国籍な単品料理たち
【SPICEHOLIC】が考える“広義のスパイス”
もちろんお酒も料理の“スパイス”
思わず鼻奥がツンと刺激される異国情緒溢れる店内
中目黒の駅近く、ビルの5階。エレベーターを降りると、すぐに広がる【SPICEHOLIC】の店内。まるで東南アジアにワープしたかのような感覚に陥り、その異国情緒溢れる店内の雰囲気とツンと鼻をつくスパイシーな薫りに気持ちが高まります。この時点ですでに、同店がうたう“広義のスパイス”、そのマジックにかけられていることは後に分かることです。
アジアの夜の屋台街を感じさせるエキゾチックな店内
オレンジのネオンを基調とした落ち着きある店内。屋台チックな背の高いテーブルとスツール席を中心にボックスソファ席などが並ぶ。アジア特有の熱気と纏わりつくような湿気がいまにも伝わってきそう。
巧みに陳列された香辛料はインテリアとしても存在感を放つ
店内には所狭しと香辛料や漬け込まれたお酒の瓶が並びます。これらはもちろん料理の素材ですが、同時に【SPICEHOLIC】というお店を象徴するインテリアアイテムとしても機能。この辺りの作り込みがまた同店ならではのスタイルであり、唯一無二な雰囲気を生み出しています。
スパイシーな仕掛けたっぷり! 多国籍な単品料理たち
さっぱり料理の代名詞、カルパッチョもスパイシーに
料理メニューも店内さながら屋台チックな単品料理がラインナップ。いろんな料理を少しずつシェアして食べるもよし、お気に入りの一品料理を頼んで掻き込むもよし。どんなスタイルにも対応できる豊富な多国籍料理がメニューに揃っているのです。そしていずれの料理もピリッと痺れる“仕掛け”を持ち、その存在感がクセになること請け合いです。
【SPICEHOLIC】の料理長を務める上口さん
2021年4月から【SPICEHOLIC】の料理長を務める上口さんは、もともと和食畑を歩んできたシェフ。
スパイス料理に関して「カルチャーや洋服同様に料理にも流行があり、今はスパイスが流行のど真ん中。だからスパイス料理を作りたかったのです。試作すればするほど深みにハマって困っていますが、その奥深さが魅力ですね。和食を得意とする自分だからこそ作れる一品もあるので、いろんな料理をワイワイと楽しんでもらいたいです」と言います。
口の中にどう入れるかで味が変わる『鮮魚の旨味カルパッチョ』
ということで一皿目から早速、和食を得意とする上口さんならではのスパイスが効いたカルパッチョを作っていただきました。
和食を得意とする上口さんならではの発想でまとめられたスパイシーな一品『鮮魚の旨味カルパッチョ』900円
愛媛県で獲れた天然の真鯛に、直七と呼ばれる鮮魚に抜群の相性を見せるスダチを絞り、トリュフオイルとトリュフ塩で味を調えたカルパッチョ。これだけでも間違いなくおいしいですが、その上には4種類のスパイスが流れています。左から「塩昆布」、「カツオパウダー」、「黒七味」そして「味噌パウダー」。日本由来の食材を味の決め手となる“スパイス”として使っているのです。
一度口に入れるとそれぞれのスパイスが舌の上で抜群の存在感を見せるため、口への入れ方一つでいろんな味の変化が楽しめます。そして最終的には鯛ならではの甘さと直七の爽快さでさっぱりとした旨味が口の中に残るのです。
優しい食感とは裏腹に刺激的たっぷりの『クレイジースペアリブ』
3時間煮込み続けることで骨離れがよく、まるで角煮のようにお口の中でホロホロとほどけるスペアリブを2皿目に紹介。決め手はたっぷり乗った薬味とピリ辛スパイスです。
たっぷりの薬味と見るからに辛そうスパイスがまぶされた『クレイジースペアリブ』1,600円
スペアリブといったら甘辛いBBQソースにどっぷりと漬けられていて、手をベタベタにしながら齧りつく!そんな大胆な食べ方で食欲をそそるイメージですが、こちらのスペアリブは塩ダレベースでなんともさっぱり。しかも上にはクミン、唐辛子、ガーリックチップまぶし、さらに水菜、赤からし菜、黄ニラ、パクチー、三つ葉、みょうが、ムラ芽、フォアジャオスプラウト、赤カイワレスプラウト、赤キャベツスプラウトといった緑を使った薬味がたっぷり。噛むほどにさまざま味があらわれ、お肉料理とは思えない爽快さを残します。
スパイス料理の代名詞!『土鍋麻婆豆腐』は痺れ重視
お待たせいたしました! スパイス料理の大本命でもありファンも多い麻婆豆腐が3皿目に登場!【SPICE HOLIC】の麻婆豆腐は痺れ重視のレシピ。ですがやっぱり辛さを求める人も多く、別添えパウダーで辛さの調節も可能となります。
フォアジャオを使った麻婆豆腐は辛さよりも痺れがポイント『土鍋麻婆豆腐』900円
本格的な麻婆豆腐を追求した結果、辛さよりも痺れ重視の味わいとなった【SPICEHOLIC】の麻婆豆腐。本場でも使われる刺激的痺れが特徴のフォアジャオの実を使い、甜麺醤、豆豉醤、豆板醤で味を整えます。下に心地いい痺れと絹豆腐の甘み、お肉の旨味がバランスよく合わさり気がつくとスプーン山盛りに掬って口の中に放り込んでいます。なんとも中毒性の高い一品です。
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オリジナルの辛味スパイス(300円)で料理の辛さを自分好みに調節
痺れ重視といっても中華料理きってのメジャー料理である麻婆豆腐といえば、反射的に辛さを求めるファンが多いということはもちろんお店も承知。そこで【SPICEHOLIC】では別添えのオリジナル辛味パウダーを準備しています。
キャロライナリーパー、韓国唐辛子、マジョラム、エルブドプロバンスをブレンドしたこちらのパウダーは、わずか小さじ一杯で火を噴く辛さ! 体中の汗腺から汗が噴き出してきます。まずは痺れを楽しんで、その後は徐々に辛味をプラス。そんな刺激的な調整を楽しみながら食せるのもスパイス料理ならではですね。
【SPICEHOLIC】が考える“広義のスパイス”
スパイスといえば胡椒や唐辛子、山椒といった刺激的な食材をイメージします。しかし実際のところ香辛料には、具体的な定義付けがなくその基準も国や地域によってまちまちなのです。「【SPICEHOLIC】では広い意味でスパイスを考えています」と上口さんは言います。
【SPICEHOLIC】が定義する“スパイス”はなんとも自由で個性的!
「例えばぼくがずっと研鑽してきた和食では、すべての基礎となるだしを何よりも大事にします。そして【SPICEHOLIC】的に言えば、そのだしですらスパイスです。さらに言えば実際に口に入るものだけではないです。
例えば夏限定で藁焼きのメニューを出しているのですが、その藁焼きによって食材に染み込む独特な風味、それもまたスパイスとして考えています。究極的に言ったら店内の内装や雰囲気など、間そのものも“スパイス”なのです。つまりメインの食材の味に関わるもの、そしてそれを食べる人の五感を刺激するもの、その全てがスパイスだと考えているのです」。
一般的にスパイスとして捉えられている食材はもちろん、それ以外の薬味や調理方法、はたまたお店の雰囲気にいたるまであらゆるものが食材の味に影響します。【SPICEHOLIC】はそれらすべてをスパイスとして捉えることで、あらゆる料理をスパイス料理へとアジャストさせているということです。最初に店内に入って、花奥にスパイスの刺激を感じ、ネオンやインテリアといった空間デザインに胸をときめかせている時点で【SPICEHOLIC】によるスパイスのマジックにかかっていたというワケです。
もちろんお酒も料理の“スパイス”
中央カウンターの周囲には漬け込み酒が多く並んでいます。食材に影響を与えるものや食べる人の五感を刺激するものなどあらゆるものをスパイスとして捉える【SPICEHOLIC】にとって、お酒ももちろん重要な“スパイス”のひとつなのです。
バーカウンターには漬け込み途中のお酒が数多並ぶ
「高級料理店がペアリングを実施するように、うちでもスパイス料理にあった刺激的なお酒を多数準備しています。ビールなどの既製品もございますが、オススメはやはりオリジナルの漬け込み酒ですね。うちではソムリエ資格を持つ金子が料理にあったお酒を提案、提供しています」と上口さんは続けます。
漬け込みを始めお酒のすべてを担当する店長の金子さん
ワインバーでソムリエとしての勤務歴を持つ金子さんは、プライベートでも趣味として漬け込み酒を作っていたという。その縁あって【SPICEHOLIC】の店長に。公私にわたってお酒への造詣の深さがうかがえます。そんな金子さんがオススメする3杯がこちら。
選りすぐりのオリジナル漬け込み酒。中でも今時期オススメだという3杯
左から『季節の果実酒のソニック』、『ベリーベリーブリーズ』、『リモンチェッロのレモンサワー』。それぞれのポイントについて金子さんに聞きました。
「まず季節の果実酒はその季節一番オススメの果物をウォッカに漬け込んだお酒なのですが、いまはキンカン(取材時は6月初旬)です。これをソーダとトニックで割って飲みます。すっきりとした味わいの中に果実の甘みが感じられるので脂っこい食べ物と一緒に飲んでいただければと思います。漬け込む分、市場の旬のものとはちょっとタイムラグができますが次はどんなお酒が登場するのか聞いていただければアナウンスすることができますよ。ちなみにいまは最高の梅が手に入ったので漬け込む準備をしています」
これからウォッカに付け込まれる梅の実。提供時期に関しては店舗にお問い合わせください
「真ん中の『ベリーベリーブリーズ』はその名の通りベリーを使った果実酒です。ラズベリー、グズベリー、ストロベリー、クランベリーをウォッカに漬け込んだお酒を、グレープフルーツジュースで割って提供します。ウォッカの無垢なさにベリーの果汁がよく染み込んでくれるので、果実酒としての醍醐味を感じられる一杯です。割とどんな料理にもハマりますが、スイーツとの相性はことさらいいですね」
漬け込み最中のオリジナル、リモンチェッロ
「一番右がレモンの皮を一枚一枚剥いで、中の白い皮もすべて削って黄色い部分だけをスピリタスに一ヶ月以上漬け込み、最終的にシロップやレモン果汁などで味をととのえたオリジナルのリモンチェッロを使ったレモンサワーです。これは“とりあえずの一杯目”にオススメしたいです。どんなレモンサワーよりもフルーティでのど越し爽やかなので喉の渇きも潤してくれます」
大甘裁定のスパイスがピリッと響き、中毒者増加中
何がスパイスなのか?と問われた時、【SPICEHOLIC】の示すスパイスはかなりの大甘裁定で
す。他の料理屋では到底スパイスとして認められないでしょう。しかし先にも述べた通りスパイス
には明確な定義がないのも事実。
瓶詰めされた陳列される香辛料。【SPICEHOLIC】を象徴する眺め
現に【SPICEHOLIC】はコロナ禍でのオープンにも関わらず順調に客足を伸ばしており、それは同店がうたう“広義のスパイス”に痺れた中毒者を増やし続けています。しっかりと料理に効き、来店した人の五感にもピリッと響くそんな“スパイス”、ぜひと味わってみたいなんて思いませんか?
撮影/辻 嵩裕 取材・文/岡本546
アウトドア雑誌・WEBメディアを中心に、企画立案から撮影や執筆までこなすマルチエディター。四十路に近づき落ち着きある大人の食事に憧れるが、服・キャプギア・クルマの整備に浪費する日々のため憧れのままで終わっている。
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