厳選した素材をピュアな感性と熟練の腕前で磨きあげる名シェフの店へ!|【Il Lato(イル・ラート)】新宿三丁目
味を足しておいしくする料理ではなく、素材の味を生かす料理にこだわり、イタリア料理店では考えられないほど品質の高い魚介を仕入れている古井繁規シェフ。「引き算の美学とはこういうことか」と、おいしさの極地へいざなってくれる大人の隠れ家が新宿三丁目に密やかにオープンしています。古井シェフとはどんな方なのかお店を訪ねてみました。
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シェフはシャイで口下手。塩対応が魅力?!
「料理は素材が命」をモットーに毎朝市場へ
日本料理を好むシェフが生み出す「疲れない味」
新宿三丁目、雑居ビルの4階に現れた上質な大人のリストランテ
厨房を囲むカウンター11席と、テーブルが2卓。木材を多用し、気負わずゆったりくつろげる雰囲気
新宿で個人経営のこぢんまりとした店を見つけるのは至難の技ですが、逆に、「えっ、こんないいお店よく見つけたね」と同伴者を喜ばせることができるサプライズなお店です。シェフの古井繁規氏は、新宿三丁目の【OSTERIA ORIERA(オステリア・オリエーラ)】で9年料理長を務め、予約の取れない人気店に押しあげた実力の持ち主。今年オープンとはいえ、既に【OSTERIA ORIERA】時代のファンが常連となっているようです。
「素材が命」と、食材のおいしさにフォーカスする研ぎ澄まされた味
「僕が何も手を加えなくてもおいしく仕上がるよう極上の食材を仕入れています」と冗談交じりで話す古井繁規シェフ
古井シェフはあまり多くは語らない方です。メニューもなく、コースはおまかせ。10品9,900円、12品16,500円どちらかを選びます。初めて訪れた人は、どんなお料理が出てくるのかちょっと不安になるかもしれませんが、前菜やスープを食べれば、シンプルながらも研ぎ澄まされた贅肉のないおいしさに驚き、次のお皿が楽しみで仕方なくなるでしょう。
『ミネストローネ』 数種の豆やジャガイモ、ニンジンなど30種以上の野菜をことこと3〜4時間煮込んでいる
前菜やスープ、パスタ、そしてメインの魚や肉料理など目の前でどんどん調理が進みます。「おいしいですね」と声をかけると、「腕がないから、食材だけは頑張っていいものを仕入れているんですよ」と冗談交じりのお返事。「いくら食材が良くてもここまでおいしくするには相当の手間暇がかかっていますよね?」と返すと「コンロのスイッチ押すだけですよ」と、とにかく腕の良さに関しては謙遜、自慢するのは食材のことだけなのです。
最上の魚介を仕入れ、真のおいしさに迫る「引き算の料理」
毎朝豊洲市場に通い、目利きの仲卸業者との関係を深めてより良い食材を仕入れている
市場で一級品を入手するには、目利きの実力がある仲卸業者との関係を深めていくことも重要です。古井シェフは、ほぼ毎朝豊洲へ足を運び、仲卸業者だけでなく、日本料理の料理人や鮨職人と情報交換もしているそうです。「魚の扱いは、やはり日本料理や鮨職人さんに学ぶものが多い」と古井シェフ。食事に行くのも日本料理、鮨が多いそうで「油脂類をさほど使わず、栄養バランスもいいですよね。食べて疲れない、朝ごはんみたいな料理がいいなと年齢を経るごとに思うようになりました」。
『赤ムツのヴァポーレ』 丁寧に手当てした赤ムツと、丁寧にひいた魚のだしで蒸し煮に。シンプルの極致を実感する一品
素材の真の魅力をシンプルに伝えてくれる料理は、何皿続いても疲れません。それどころか、透明感のある美しい味わいに体が浄化されるような心地よさを感じるほど。そんなコース料理の中でもひときわ心を動かされるのが旬の白身魚を使った蒸し料理、ヴァポーレです。お皿にのっているのは、蒸したお魚と澄んだスープのみ。潔さと、立ち上る湯気の香りに感動……。柔らかい身を口に入れると繊細な白身のしっとり、ふわっとした質感、旨味の中にきれいが溶け込んだ脂がじんわり舌の上に沁みていくのです。完全に古井シェフの魅力にノックアウトされるシグニチャー料理といえるでしょう。
食感、喉越しなど忘れがたい味わいの手打ちパスタ「タヤリン」
『牛テールのタヤリン』赤ワインやポルチーニと共に煮込んだ牛テールのラグーソースで
シェフのもう一つのシグニチャー、タヤリンという手打ちパスタ。シェフが修業した北イタリア・ピエモンテ地方の伝統的な平打ち麺で、卵黄だけで打つので色が黄色く、味も濃厚、かつ歯切れが良いのが特徴です。濃厚なラグーソースにも負けず、互いを引き立て合うバランスの良さはさすがで、長い間北イタリアで愛されてきた理由がわかるというもの。
このピエモンテの定番もシェフの手にかかると、牛脂の加減もほどほどに仕込まれ、くどさがなく、タヤリンの卵と小麦粉の合わさったまろやかな風味、しっかりとした歯ごたえもありながら、繊細な喉ごしなど、「何か違う」のです。それはきっと、シェフのこのパスタにかける思いの深さなのでしょう。
シェフが修業した北イタリアのワインと共に「綺麗な味」を
綺麗、かつ深い深みがあるシェフの料理には、冷涼な土地で作られたワインが合います。そんな、北イタリアを中心にしたワインを多く揃えたセラーも完備。ワインリストはありませんが、予算や好みを伝えれば、ペアリングでもボトルでも応じてくれます。
セラーには、北寄りのイタリアワインを中心に、きれいですっきりとした味わいのワインが多数眠っている
目利きが選んだ、市場でもトップクラスの魚介を仕入れている古井シェフ。魚の真の魅力を伝えるという料理人としての責任感をも感じます。もちろんそのほかの食材もすべて吟味。野菜は広島県・梶谷農園の無農薬や有機栽培のものを、お肉は但馬牛を使い、その上で、体に負担のない塩加減、脂の量を心掛けていらっしゃいます。
調理の手間暇、自身の経歴もあまり語らないシェフですが、「料理人として当然のことをしているだけ」という矜持を感じます。それは、語らずとも食べればわかることだから。目の前の豪華さに惑わされることなく真の美食に辿り着ける【Il Lato(イル・ラート)】。名店と呼ぶにふさわしいお店です。
この記事を作った人
取材・文/ 藤田実子 撮影 / 岡本祐介
フード・ワイン・日本酒などのを生み出す人々の日々の仕事、思い、人生、哲学に興味を持ち雑誌・書籍などで取材を重ねている。執筆作品に『鮨 一幸のすべて』『鮨さいとう 鍛錬と挑戦』(ともにカドカワ)などあり。ライター歴30年。
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