北海道【余市SAGRA(サグラ)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第34回
【余市SAGRA】ではメインダイニングを真ん中に2つの部屋があって、1日2組4人が泊まれます。サウナも併設されています。ワイン畑に沈む夕日を見ながらのサウナも魅力的です。部屋は天井がトドマツ、床はカラマツ、浴室は道南杉と道産材でつくられており、家具や寝具も自然素材に徹しています。
ワイン畑に抱かれて眠る
北海道の余市は、海や山の幸に恵まれたうえ、りんごやなし、ぶどうの生産量も全道一を誇る豊かな場所です。ワイン好きにはたまらない魅力的なワイナリーが多く集まるところでもあります。
札幌でイタリアン・レストランを経営されていた村井啓人さんが、こちらでオーベルジュを開いたのが2017年。その名も【余市Sagra】。SAGRA(サグラ)とはイタリア語で収穫祭を意味します。あ、イタリア語ならオーベルジュではなくロカンダというほうがいいのでしょうか。
美しいワイン畑に囲まれたなかでゆっくりと食事をいただき、大自然のなかに泊まるというのは、都会生活者にとってはあこがれの休日の過ごし方でしょう。
「道内でも後志(しりべし)は農業レベルが高いんです。僕も食材を求めてここに通ううち、生産者の近くで料理をつくりたいと思うようになりました。なかでも余市はワインの有名産地ですからね」。村井シェフは語ります。
【余市Sagra】ではメインダイニングを真ん中に2つの部屋があって、1日2組4人が泊まれます。サウナも併設されています。ワイン畑に沈む夕日を見ながらのサウナも魅力的です。
部屋は天井がトドマツ、床はカラマツ、浴室は道南杉と道産材でつくられており、家具や寝具も自然素材に徹しています。
大地との見事なマリアージュ
木の香りのするお風呂でさっぱりしたあとは、ディナーのスタートです。メインダイニングはゆったりとしていて、キッチンも見えます。
「今日はアスパラが素晴らしいので、それをメインにします。そろそろ最後だと思うので」とシェフ。
クルマバソウのお茶をいただき、スパークリング・ワインで乾杯します。「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」は仁木町のワイナリーのナイアガラで爽やか。
一品目の甘エビの出汁で炊いた豆のサラダに合わせます。アカシアの花の香りがします。
サクラマスが出てきました。きれいな色です。
骨と皮と頭などを煮込んだ魚醤で味付けられていて薫り高い一品。これにはドメーヌ・モンのケルナーを合わせます。ドメーヌ・モンもすぐ近くの畑で、出されるワインは基本このエリアのものです。冷たく冷やした微発砲のケルナーは喉越しもよく、ほどよい泡が食欲をそそります。
近くの海で上がるタコとじゃがいものサラダは菜種油でコンフィ、サクランボの花が添えられています。
続いてシャコです。タコのワインソースがつかわれています。
根曲がり竹とその下はポレンタです。しっかり海とそしてこの地の力を感じさせてくれる料理です。イタリアに鮨屋があったらこんな流れかなと思ってみたり。
発酵バターのパンが添えられ、ワインはドメーヌ・タカヒコの「ヨイチ・ノボリ・ナカイ・ブラン 2017」。中井農園のケルナー100%のもので、このへんでしか流通してないものとか。
こういうマリアージュが成立することがやはり余市の魅力なんですね。大地の恵みを感じながらゆっくりといただきます。
「さっぱり、お口直しに」と、うにのソーメンが出てきました。
「うにはシーズンに入ったので、おいしいです。じゅんさいとあわせてあります」。
お酒で火照った喉を気持ちよく通過していきます。
ワインは「ぴのろぜ2018」。余市のピノノワールを岩見沢で野生酵母発酵したもので、酸を抑えつつも溌溂としたロゼになっています。
いくら酔っても心配はいらない
さて、メイン。
少し早いかと思いましたが、アスパラ料理が2パターン。
まずは、大きなグリーンアスパラ。
行者ニンニクとバターでソテーしてあり、牡蛎のペーストが添えられています。
ワインは「こことあるシリーズ 2016ツヴァイゲルト」。
これも、先ほど同様、余市のブドウを岩見沢にて野生酵母で醗酵させたものです。ツヴァイゲルトはオーストリア原産ですが、北海道でも多くつくられています。ベリー系のアロマを感じ、アスパラには最適の組み合わせのひとつかと思います。
そして今回、村井シェフがメインに持ってきたのが、ホワイトアスパラ。
ツヴァイゲルトで煮詰めた夏鹿の脳みそとタンの甘辛いコンフィが乗せられています。それに昆布のワイン煮、岩海苔です。海の香りと山のうまみが凝縮されていて、メインの風格十分な一皿です。
デザートはイチゴのパンナコッタで締めと。
飲みたらなかったので、もう少しワインをいただくことにしました。
ボトルで「ドメーヌ・タカヒコ・ナナツモリ 2017」があったので、それをみんなで分け合ってゆっくりと余韻を楽しみました。
となりがベッドなのでいくら酔っても心配ないのがこういうオーベルジュ(ロカンダ)の魅力でもあります。
ゆっくり休んで、朝は近くのワイン畑を散歩しました。朝日を浴びた畑の美しいこと。
少し足を延ばせは、積丹半島が見えます。海もすぐ近くなのです。
朝食もシーズンの始まったうにを中心にしっかりと用意されてました。
納豆やアイスクリームがすっと体に入ってくるようで、リフレッシュして新たな一日を迎えられます。
高速道路が新千歳空港までつながったので、余市はとても便利な観光地になりました。
定点観測に訪れたいところです。
小西克博/ヒトサラ編集長
北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。
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