縦横無尽な自在さでフーディーを魅了する若き鬼才、児玉智也シェフ|麻布十番【ACiD brianza】
2022年6月25日にオープンした麻布十番【ACiD brianza(アシッドブリアンツァ)】。こちらで腕を振るうのは、児玉智也氏。31歳の若さながら、フレンチとニューノルディックの双方を学んだ英才で、あらゆるフーディーを唸らせている注目のシェフです。
鯵 Horse mackerel/Fennel
羊 Corn/Lambheart
牡蠣 Oyster/Soy milk/Celey
揚げパン Oyster/Bread/Strawberry
鱧 Conger/Water melon/Dill
酵母 Veal sweet breads/Yeast/Malted rise
磯 Scallop/Seaweed/Comte cheese
鮎 Ayu/ Soba/Fermented cabbage
焦 Zucchini/Coconuts/Lime
黒豚 Pork/Carrot/Ginger
凝縮 Kombucha/Milk/Pine
胡瓜 Melon/Yogurt/Woodruff
ニセアカシア Dango/Locust
花粉 Bee pollen/Fig
ずらりと並ぶ単語の数々。これが、オープンまもない2022年7月、初めて【アシッドブリアンツァ】を訪れた時のメニューだ。
【ラ ブリアンツァ】の跡地に、2022年6月25日にオープン。店名の「ACID」は、英語で“酸”の意味を持つ。
食材を羅列するメニュー表記は、今時、さして珍しくもない。が、よく見ると食材だけではなく、“酵母“や“焦”、“凝縮”といった不可思議なタイトルもあり、俄然、好奇心がくすぐられた。しかも、英語で書かれた主要食材を熟視すれば、牡蠣と豆乳、ズッキーニにココナッツとライムといった想定外の組み合わせが目に止まった。いったいどんな一皿となって仕上がってくるのだろうか?
意表をつかれたのは3皿目。目の前に運ばれてきたのは、濃いグリーン色のソースに沈むババロワのような白い物体。上にパラパラと降りかかる天かすのようなものは、どうやら揚げたキヌアらしい。恐る恐る口にして、思わず息を呑んだ!
ババロワのような物体の正体は豆乳で、その滑らかな食感は、まさにブラマンジェ。そして下には、絶妙な火入れの牡蠣が隠されていたのだ。豆乳のミルキーさと海のみるくと言われる牡蠣の芳醇さ、その食感と旨味とが織りなすハーモニーに、知らず知らず笑みが溢れた。微かな磯の香りと共に豊かな余韻が残る中、パセリオイルを加えたセロリジュースがキリッとしたアクセントをつけている。それぞれの精妙なバランがあればこその一体感がすばらしい。料理人の感覚の新しさを感じさせる一皿だ。
また、“焦”の料理は、ズッキーニが主役。表皮を真っ黒焦げるまで焼いたズッキーニに合わせたのは、ココナッツベースに、レモングラスやコブミカンオイル、ライムジュースなどを加えた軽やかなエスニック風ソース。この縦横無尽な自在さこそ、同店の若き鬼才、児玉智也シェフの真骨頂だろう。
北海道小樽出身の児玉智也シェフ。若干31歳ながら、フランスやデンマークの星付きレストランで研鑽を積んだキャリアの持ち主だ。
そう、この次々と繰り出される予測を超えた皿の数々で、今、感度の高いフーディ達を唸らせているのが、児玉智也シェフ、その人だ。31歳の若さながら、フレンチとニューノルディックの双方を学んだ英才である。
北海道は小樽で生まれ育った彼は、小学生の頃から母親の料理を手伝うことが好きな少年だったという。高校を卒業後、自然な流れで専門学校に進み、卒業後は、札幌のフランス料理店【ジャルダン ボタニエ テラニシ】、【レストラン ミヤヴィ】等で修業。その後、26歳で渡仏。フランスの2つ星レストラン【Sa.Qua,Na】のほか、デンマークの2つ星店【Kadeau】などで研鑽を積み、3年前に帰国。 北海道を拠点に、フリーランスで【余市SAGARA】などのレストランとコラボをしたり、ポップアップイベントを開催するなど独自の活動を行なってきた。
そうした中で、知り合ったのが、ブリアンツァグループの奥野義幸シェフだ。「いい人だなぁ。というのが、奥野シェフの第一印象。」とは、児玉シェフ。料理に対する姿勢も似ていると感じたとか。
一方、奥野シェフも「児玉シェフの、頑固というか流されない一貫性のある性格に、まず惹かれました。これなら、店を任せられるな、と。また、彼の味の構成能力、料理の複雑さは、自分にとってもいい勉強になると思ったんです。北欧料理など彼から学ぶことは多いですね。」と熱く語る。
かくして、2022年の6月、新たなブリアンツァの形として、【アシッドブリアンツァ】がスタートを切ったわけだ。
木肌の温もりを生かしたシンプルな店内。気取りのない雰囲気だ。
新店への思いを、児玉シェフはこう語る。
「これまで学んできたフレンチと北欧、それぞれの料理をベースにしつつ、僕なりに咀嚼して表現していきたいと思っています。(僕にとって)北欧の発酵技術はとても興味深く、デンマークの料理も好きなのですが、コースにした場合、それだけではどこか物足りない。そこで、しっかりとしたフレンチのテイストを加味し、コース全体のバランスを計ることで、食後感は軽やかながら、しっかりと心に残るような印象的な皿を提供していこうと考えています。」
ちなみに前述のメニューは、6月のオープン当初のもの。メニューは、季節を追って月々、否、週のうちでも少しずつ変わるそうで、撮影日、児玉シェフが用意してくれたのは、当日のメニューのうち、次の4品。
“鮭卵”、“揚げパン”、“ガレット”、“発酵と松”で、いやいや、これらもかなり謎!なメニューだ。
“鮭卵”は予想通り、今が旬の新イクラがタルトとなって登場。和なイメージのあるイクラだが、そこは北欧フレンチ。薬味は、児玉シェフが最もヨーロッパの香りと感じる香草のディル。ここでは、フレッシユのみならず、ディルの香りを移したオイルも加えて風味をつけている。
コースのアミューズとして登場する“鮭卵”(左)と揚げパン。揚げパンの上には塩レモンの皮をトッピングしている。
そして、続くは“揚げパン”。児玉シェフによれば「最初のスナックの一つは、揚げ物にすると決めている。」そうで、揚げパンは、中身を変えつつ、どうやら定番化していく様子。というわけで、今回の中身は鴨のレバームース。一見、普通の揚げパンのようだが、口にすると、そのエアリーな口当たりに目を見張った。パン生地をエスプーマにかけてから揚げていると聞き、納得。ゲストに出す直前、再度、オーブンで温めて余分な油を取り除くなど、ライトな食感に仕上げている。
また、“ガレット”は、想像通りの蕎麦粉のクレープ。フランスはブルターニュ地方の郷土料理としておなじみだが、児玉シェフはこれに北欧で学んだ発酵の技術を融合させた。4種の野菜を乳酸発酵させる際に滲み出る液体にコンテチーズやバターを加えた発酵クリームソースを合わせているのだ。
“ガレット”。蕎麦粉のクレープで、カボチャのペーストや花咲かに、ラムレーズンなどを挟んでいる。プロヴァンスのロゼがよく合う。
そして、最も謎だった“発酵と松”。これは、デザートのミルクアイスクリームだった。とはいえ、ただのミルクアイスではない。下に敷いたソースはなんと松風味。児玉シェフ曰く「煮詰めたコンブチャと松の新芽のオイルで作ったソース。」だそうで、その松は、故郷北海道で摘んできたものだ。トッピングも新芽のピクルス。聞けば、デンマーク時代も、松の新芽のオイルやピクルスなど松を使うこともしばしばだったとか。冬が長く、非常に寒いデンマークの風土が生んだ智慧なのだろう。ミルキーなアイスに松の爽やかな香りが食後感をすっきりさせてくれそうだ。
“発酵と松”。ミルクのアイスクリームに、蝦夷赤松の松の新芽で作ったオイルと煮詰めたコンブチャのソースをあしらっている。冬の草原の味がする。
料理に合わせ、シャンパーニュから始まるペアリングも用意。ガレットにはプロヴァンスのロゼなどフランスワインを中心に8種8800円。ノンアルコールペアリングもある。
店内では、牛のガルムや松のシロップ、ニセアカシアのピクルスにとうもろこしのガルムなどを漬け込んでいる。
撮影/今井 裕治 取材・文/森脇 慶子
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