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更新日:2023.07.26食トレンド 連載

目白【蕎麦おさめ】~ヒトサラ編集長の編集後記 第54回

目白に移転したばかりの【蕎麦おさめ】に行ってきました。陽が長くなった初夏の夕方、おいしい蕎麦で日本酒を飲むには最高の時間帯です。【蕎麦おさめ】は在来種にこだわった蕎麦を出すお店で、六本木にあったときから人気店でした。それが2023年4月末から目白で再オープンとなったわけです。

蕎麦おさめ

古民家でいただく日本酒と蕎麦の魅力

    蕎麦おさめ

目白通りを少し入ったところにある築百年になろうかという古民家をリノベーションした店舗は実に風格があり、靴を脱いで部屋にあがると小さな庭の緑が目に優しい。何人も入れる大部屋と、4人用の小部屋があります。

1階が店舗で、店主の納剣児さん夫妻は2階に住んでいるのだとか。時間をかけてじっくり探してようやく見つけた場所なんだそう。

    蕎麦おさめ

それにしてもしっとりとした気持ちのいい空間です。古い日本家屋の魅力です。庭の緑を愛でながら、日本酒と蕎麦前をいただきます。日本酒は今っぽいセレクションで、仲居さんが詳しく説明してくれます。

今回いただいたのは、

などなど。
季節によって日本酒のメニューも変わり、量も五勺から頼めます。蕎麦前に合わせて少しずついただくのもいいでしょう。ワインもオンリストされています。

    蕎麦おさめ

まずは蕎麦がきが出てきます。粗挽きの蕎麦がきは埼玉県三芳町の在来種。香りを楽しんだあと、塩と山葵を少しつけていただきます。お酒は英国人が杜氏を務めることで有名な京都は木下酒造の「玉川」、純米吟醸からスタートです。

  • 蕎麦おさめ

  • 蕎麦おさめ

ほどなく、前菜ですと用意されたのが、蕎麦前の全部盛りとでもいう一皿。

    蕎麦おさめ

含め煮にしたぜんまい、にしんの昆布煮、板わさは和歌山の南蛮焼き蒲鉾で、酒粕仕込みのわさび漬けのせ、粕味噌漬けにしたクリームチーズ、茨城の平飼い無投薬の鴨ロース、薬味が入った焼き味噌、枝豆、西京味噌に漬け込んで焼いた車エビなど、どれも定番中の定番のような一品ですが、一つ一つ時間をかけて丁寧につくられたものばかり。お酒も進みます。

  • 初亀純米吟醸

  • 田酒

車エビに合わせてと、独特な果実香が魅力の静岡酵母でつくる「初亀」の純米吟醸をいただいていたら、出汁巻き卵の登場です。これも欲しい一皿です。

それから鶏モモ肉の醤油麹焼き。在来種の一味をかけるのですが、これが予想以上の辛さでなかなかフレッシュです。

    蕎麦おさめ

蕎麦を三枚手繰って

日本酒好きの人たちのなかで雄町を愛する人をオマチストというらしいです。なかでも岡山産は雄町のルーツということで、備前雄町には一種特別な響きがあるようです。その備前雄町の「写楽」をいただきます。

    蕎麦おさめ

一枚目の蕎麦の登場です。長野の乗鞍の十割です。塩を少しつけて手繰ります。蕎麦をいただく表現は難しく、昔からいろいろ語られるところですが、汁につけて一気に……というよりは、塩をつけて手繰りたくなる顔つきの蕎麦なのです。それだけ香りが魅力的なのかもしれません。

    蕎麦おさめ

二枚目は鳥取は伯耆町の在来種の玄挽き蕎麦。こちらは少量の汁で手繰ってみました。これもいい感じです。粋がって蕎麦汁を付けない話は落語などでもよく聞くところですが、汁は少量で十分。香り高い蕎麦は余計なことをしないほうがいいということがよく分かる瞬間です。

    蕎麦おさめ

三枚目はせいろ、成田の在来種で、これは温かいあさり蕎麦として出されました。お酒で火照った体を二枚の冷たい蕎麦で落ち着かせ、最後にいただく温かいあさりの蕎麦。ほっとします。

    万寿泉

デザートはそば茶プリン。白ワインの樽で熟成させた万寿泉を合わせていただきました。

蕎麦と日本酒のフルコースでした。
満腹で外へ出ると、外はまだ明るいのです。風も気持ちいいし、このままもう一軒……といった流れになりそうです。夏の夕暮れの大好きな時間。

    蕎麦おさめ

この記事を作った人

小西克博/ヒトサラ編集長

北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。

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