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更新日:2025.01.30食トレンド

ワインカーヴのような店内で楽しむアラカルトイタリアン|白金台【TACUBO白金台】

薪焼イタリアンの店として人気の代官山にある【TACUBO】。代官山のお店ではおまかせコースで料理を提供していましたが、新たに誕生した【TACUBO 白金台】では、最近再注目されているアラカルトで料理を楽しめます。また、ワインの種類も豊富で、客席横にずらりと並ぶワインも圧巻です。そんな話題のお店、【TACUBO 白金台】をご紹介します。

TACUBO白金店内

かつて、メニューを前にあれこれと悩みながら、その日に食べたいものを決めていく時間も、レストランでの楽しみの一つだった。献立にずらりと並ぶ数々の料理を前に「今日は何を食べようか。どう、攻めようか。」と、自らコースをシュミレーションする面白さは、これから始まる晩餐への期待度をよりたかめてくれたものだ。

そんなアラカルトならではの愉しさが失われて久しい昨今だが、ここ最近、アラカルト復活の兆しが少しずつ見え始めている。自由気儘に料理をオーダーできる店が、続々とオープンしているのだ。2024年11月1日に開店した【TACUBO 白金台】もその一つ。店名からもお分かりのように、薪焼きイタリアンで知られる代官山の人気店【TACUBO】の姉妹店だ。

    プラチナ通り沿いのビルの地下。エレベーターを降りると別世界に引き込まれる

    プラチナ通り沿いのビルの地下。エレベーターを降りると別世界に引き込まれる

「代官山でリスタートして9年、最近のお客様のニーズを見ていると、(コースの)量を気にする人も増えてきたかな、と感じることが度々あって。自分の腹具合に合わせて自由に食べたいものを食べられるアラカルト志向に、最近は少しずつシフトし始めているように思うんです。」と語るのは、田窪大祐シェフ。そこで、新たに手がけたのがこの店だ。

    緩やかなアーチを描く天井が印象的な店内は、ワインカーヴのよう。片側の壁面いっぱいに並ぶワインも圧巻

    緩やかなアーチを描く天井が印象的な店内は、ワインカーヴのよう。片側の壁面いっぱいに並ぶワインも圧巻

田窪シェフが続けてこう語る。「料理のクオリティとしては、コースの方が100%に近い完成度で提供できるでしょう。その点、何がオーダーされるかわからないアラカルトは、ある程度の仕込みはやっておかないといけないし、場合によっては冷凍もやむなしということもある。正直、料理の完成度は80%ぐらいかもしれません。でも、その代わりにお客様は、好きなものを好きなように食べられるメリットがある。その自由度が後の20%を埋めてくれると思っています。」なるほど、様々なシチュエーションにも対応できる懐の深さ、使い勝手の良さもアラカルトならではだろう。

店を託したのは濱本直希シェフ46歳。中目黒のイタリア料理店【フェリチェリーナ】で腕を振るってきた大ベテランといえば、思いあたる方々もきっと多いことだろう。田窪シェフとは【アロマフレスカ】時代の朋輩で、2023年9月、13年続けた店を閉め、新境地を求めて同店に。

「若いスタッフが辞め、ワンオペでやるには無理があるなぁと思っていたところ、タイミングよく田窪シェフからお声がかかって。」と笑う濱本シェフ。初めて?の薪焼きにも果敢に挑戦。代官山【TAKUBO】のスタッフと共に、新店の厨房で陣頭指揮を執っている。

    田窪大祐シェフ(右)と濱本直希シェフ(左)は、【アロマフレスカ】で共に修業、切磋琢磨した仲。「それぞれ独立してからも、時々会って飲んでましたね」

    田窪大祐シェフ(右)と濱本直希シェフ(左)は、【アロマフレスカ】で共に修業、切磋琢磨した仲。「それぞれ独立してからも、時々会って飲んでましたね」

メニューを開けば、『本日の鮮魚のカルパッチョ』や『穴子のフリット 根セロリのピューレとサラダ添えクミン風味』などの前菜から、『北海道 真鱈白子 マリナーラ』に『和牛とラディッキオタルティーボ ボロネーゼ』等々のパスタ類、そしてメインには『椎名牧場 椎名牛』、『タスマニア 仔羊ロース』など薪焼きもしっかりとラインナップ。ずらりと並ぶ精選されたメニュー構成に、食ベる前から摂食中枢が騒ぎ始めそうだ。

何にしようか散々迷った挙句、この日は、次の3点を頂くことにした。まず前菜に先の穴子のフリット。パスタは今が旬の真鱈白子を使ったマリナーラ、そしてメインにはタスマニア産仔羊のロースをピックアップ。ちなみに、いずれの料理も一皿2人前の盛り付けとなっている。

    ざっくりとした歯応えの衣は、セモリナ粉と炭酸水合わせたもの。あえてやや大きめを選んでいる穴子は身もふわふわ。クミンの香りも食欲をそそる『穴子のフリット 根セロリのピューレとサラダ添え クミン風味』

    ざっくりとした歯応えの衣は、セモリナ粉と炭酸水合わせたもの。あえてやや大きめを選んでいる穴子は身もふわふわ。クミンの香りも食欲をそそる『穴子のフリット 根セロリのピューレとサラダ添え クミン風味』

田窪シェフ曰く、「アラカルトの料理は瞬発力。つくり込んだ皿より素材感を活かして、瞬間瞬間に仕上げていく鮮度みたいなものを大切にしたい。」との言葉通り、一皿一皿のインパクトは大! 穴子のフリットにしても、皿の上には1尾を丸ごと揚げた穴子が鎮座している。ナイフを入れれば、ざくりとした衣の手応えが、早や美味を予感させる。衣の香ばしさに対して身はアツアツのふわふわ。添えてある根セロリのピューレとサクサクの衣との相性も上々だ。クミンの香りが食欲をそそる中、千切りの根セロリとマイクロハーブのサラダが適度に舌をリセットしてくれる。

    クリーミィな白子と仄かに辛味を利かせたトマトソースの取り合わせが意表を突く一皿。『北海道 真鱈白子 マリナーラ』

    クリーミィな白子と仄かに辛味を利かせたトマトソースの取り合わせが意表を突く一皿。『北海道 真鱈白子 マリナーラ』

続く白子のパスタはトマトソース仕立て。濃密な白子の旨みにトマトソースのまろやかな酸味が程よくマッチ。ところどころでピリッと来る辛味がアクセントとなり、思いの外、軽やかに完食。クリーミーさを全面に押し出しがちな白子のパスタの意外な味わいを楽しめる。【フェリチェリーナ】時代からパスタにも定評のあった濱本シェフの力量が伺えよう。

    芳ばしい薫香を纏って焼き上げられた仔羊に齧りつけば、ジューシーかつ肉厚。骨付きなればこそのダイナミックな味わいに魅了される『タスマニア産仔羊ロースの薪焼き』

    芳ばしい薫香を纏って焼き上げられた仔羊に齧りつけば、ジューシーかつ肉厚。骨付きなればこそのダイナミックな味わいに魅了される『タスマニア産仔羊ロースの薪焼き』

メインの仔羊はもちろん薪焼き。だが、肉は全て薪焼きというわけでもないようで、薪焼きは羊と牛。鶏などは炭火で、と焼き分けている。田窪シェフによれば「断面を焼く肉の場合は、優しく火の入る薪火の方が中までゆっくりじんわり焼き上げられる。一方、皮をパリッと焼きたい鶏には炭火のストレートな火の方があっていると思います。」とのこと。日々、焼きに挑んできたからこその見解だろう。こんがりと焼き上がった仔羊は骨付きで登場。

    薪の熾火でじんわりと焼き上げていく骨付き仔羊のロースは、タスマニア産。ここでは、薪のほかに炭火も用意。食材で使い分けている

    薪の熾火でじんわりと焼き上げていく骨付き仔羊のロースは、タスマニア産。ここでは、薪のほかに炭火も用意。食材で使い分けている

焼き色も芳ばしい肉にかぶりつけば、仄かに薫香が香る中、肉汁がジワリと味蕾を潤す。このジューシーさも薪火なればこそ。骨付きで焼くことで、より旨みを逃さず焼き上げられている。ちなみに仔羊はタスマニア産。世界で最も空気と水が綺麗なエリアと言われる広大な牧草地でクローバーやライスグラスなどミネラルたっぷりの牧草を食べて育った仔羊は、クセがなく穏やかな風味が特徴。肉質は柔らかく、際立つ赤身の旨みが後を引くおいしさだ。「できれば、手づかみでかぶりついてほしい。」とは濱本シェフ。フォークナイフを使うよりダイレクトに旨みを味わえるはずだ。

    壁面をずらりと埋め尽くすワインとシャンパンが圧巻。ワイン愛好家にファンが多いブルゴーニュ ワインも充実の内容。ワイン目当てに来るゲストも少なくない

    壁面をずらりと埋め尽くすワインとシャンパンが圧巻。ワイン愛好家にファンが多いブルゴーニュ ワインも充実の内容。ワイン目当てに来るゲストも少なくない

さて、店内はビルの地下ながら広々とした大人の空間。洞穴を彷沸とさせるアプローチを行き、扉を開ければ、緩いアーチを描く天井がワインカーヴを思わせ、ターブルドットのような大テーブルが存在感を放っている。そして、より圧倒されるのは片側の壁全面に設えたワインセラー。イタリアワインもあるものの、ほとんどは、ブルゴーニュワインとシャンパンというラインナップ。このワイン目当てに訪れる客も少なくないようで、遅めの時間なら、ワインバー使いとしても重宝しそう。それもまた、アラカルトの魅力の一つだろう。

この記事を作った人

撮影/佐藤顕子  取材・文/森脇慶子

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