人気店が2軒目を出す理由(後編)|【NK】【嘉祥 うち山】【焼肉お富】【PACK】の場合
コロナ禍をよそに、2軒目をオープンし、躍進を遂げるお店に焦点を当て、その成功の秘訣や施策、思いなどをインタビュー。前編の【デンクシフロリ】【創和堂】に続き、【NK】【嘉祥 うち山】【焼肉お富】【PACK】の場合をお届けします。
二軒目を出す傾向とメリット
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1.カジュアルに楽しく、が主流
2.新しい世界観で広がる世界
3.人材が育つ、活躍できる場に
「石かわ」 グループきっての若き天才料理人の船出【NK】
【NK】の魅力は、和をベースとしながらも、角谷氏のインスピレーションで洋や中のエッセンスを自在に組み合わせる奇想天外さにある。写真は『真薯』をイメージしてつくられた『毛蟹のムース』
2008年からミシュランの三つ星に輝き続ける東京・神楽坂の日本料理店【石かわ】の店主・石川秀樹氏は【虎白】【蓮三四七】【波濤】などを生み出してきた。そして、今度は34歳の若き料理人・角谷健人氏が抜擢され、【NK】が誕生。石川氏に「天才」と言わしめる料理は早くも訪れた人の心をがっちり掴み、すでに数カ月先まで予約で埋まっている状態だという。
薪焼きを導入したのも【NK】ならではの発想
なぜ、次々に新店を出すのか。理由を問うと、石川氏は「社会に貢献できるリーダーを育てたい」と語った。彼の考える〝2軒目〞とは弟子が活躍し、幸福の輪が広がる場。【石かわ】グループでコツコツと研鑽を積んできた料理人に店をまかせ、そこできちんとした組織をつくりあげることが、結果的に社会への貢献につながると考えている。
石川氏(左)と【NK】店主・角谷氏(右)
グループでやることにもメリットを見出している。「まとめて人材募集をかけられるし、トレーニングも行える。各店が神楽坂にあるので、困ったときには助け合える」
店内は和食店のイメージを鮮やかに裏切るシックな雰囲気
ただし、ひとつ〝ルール〞を決めている。最初に資金は用意するものの、走り出したら一切口を出さない。自分のやり方で責務をまっとうすることが店主であり「リーダー」だから。今、角谷氏は、その道を着実に走り始めている。
【NK】を出す理由
「次なるリーダーを育成する」【NK】店主・角谷氏は23歳で【石かわ】に入社。「過酷な経験を通して人間として成長するためのヒントを見つけてほしい」(石川氏)との想いから設けられた“一人海外研修”では北インドとヒマラヤへ。価値観を一新し、たくましさに磨きをかけた。
名物に特化したスタイルで確かな目利きを広く伝える【嘉祥 うち山】
2種類のごまだれで味わう『鯛茶漬け』。酵素ドリンクを添えて、体の中ら免疫力をアップさせるという提案も
茶懐石を源流とした日本料理でもてなす名店【銀座 うち山】。その姉妹店である【嘉祥 うち山】は、コロナ禍を機にコース料理の提供を止め、鯛茶漬けと焼きごま豆腐の専門店として再スタートを切った。【うち山】の二大名物で潔く勝負するという格好だが、舵取りを行った【銀座 うち山】の店主・内山英仁氏は、そこに懸ける想いを次のように語る。
【銀座 うち山】の内山英仁氏(右)と、【嘉祥 うち山】をまかされた弟子の狩野迅門氏(左)
「今まで生産者と真摯に向き合い、その苦労を理解したうえでこだわりの食材を扱ってきました。その目利きで多くの方々に喜んでいただきたい。しかし、客単価の高い店は客層を絞りがちです。そこで自慢の料理を単品として取り出し、背伸びすれば手が届くような価格で提供する、というスタイルを編み出したのです」
熊本・天草で育てられた「みやび鯛」
看板メニューの『鯛茶漬け』は1,800円。スッポンの鍋が付くと3,500円。食材の質を落とない代わりに、一斉スタートを導入するなどの工夫で人件費の削減に努め、価格の抑制に成功した。コスパの高さは評判を呼び、満席の状態が珍しくない。
座席はカウンター8席のみ。ランチは一斉スタートで3部制。価格を抑えるために仕事の効率化を重視している。
聞けば、収支はとんとん。だが、正しい仕事はたくさんの笑顔を生むと実感しているのだろう。内山氏の表情は明るく、その目は多店舗展開という未来をまっすぐ見つめている。
【嘉祥 うち山】での工夫
「上質な食材を肩肘張らずに」おいしくて高級な鯛を見つけるのはたやすいが、安価で、仕入れが安定していて、なおかつ食べて満足できる鯛を選ぶのは至難の業だ。【嘉祥 うち山】では、吟味に吟味を重ねた結果、熊本・天草で育てられた「みやび鯛」を採用。旨み豊かな味わいに目利きが光る。
街の期待に応えて新展開!【焼肉お富】
赤身ミックス(ロース、上カルビ、上ハラミ、天肉)2,480円(2人前・税込)やホルモンミックス1,280円(2人前・税込)のほか、タン塩など一品もあり
錦場内の漬物店店主で、「Meets リージョナル」など情報誌のコラムニストとしても知られるバッキー井上さんが、京都の中心地四条河原町からすぐの裏寺に焼肉店を2020年8月末にオープンした。自店の漬物を出す居酒屋【百練】、名を冠した飲み屋【バッキー食堂】とは違う業態の展開だ。
来店客には店主のバッキー井上さんファンも多い
バッキー井上さんに聞くと、単にビジネスを広げる意味合いでの開業ではないという。では、なぜこの時期、新業種に挑戦したのか。「以前この場所にあった【さんきち】という焼肉屋さんは、多くのファンをもつ店でした。ところが惜しまれつつ今年1月に閉店された。みんなが残念だと思ったでしょう。その後、その地の大家さんから、なんとかあの場所で焼肉店を再開したい。一肌脱いでくれないかと相談があったんです」と開業を決意した理由を話す。
店内はカウンターとかつての座敷を改装したテーブル席。グループなら2階席へ
肉は京都の名店【モリタ屋】から仕入れ、タレは人気焼肉店【アジェ】のオーナーにアドバイスをもらった。なんとか開業にこぎつけることができたのは、【さんきち】を愛し、「あの場所に焼肉店」をと望む街の友人たちの助けもあったからと話す。懐かしい昭和のたたずまいを残した「京漬物も食べられる焼肉店」の誕生で、街が少しでも活気づくことが、なによりの願いだという。
【焼肉お富】を出す理由
名店の想いを継ぐ焼肉店京都・裏寺通りは、かつて焼肉店のメッカだった。そんな場所から、一軒、また一軒と昭和の焼肉店が姿を消した。バッキー井上さんは、そんな一店【さんきち】の場所で焼肉店を開業した。裏通りとはいえ京都の中心地に、かつてのファンと街の活気を呼び戻したいと願ったからだ。
生麺で勝負のやきそば専門店【焼きそばとハイボール PACK】
定番の『ソース焼きそば』800円。豚バラと油カスの濃厚な旨味が麺を美味しくする
京都では今、〝焼きそば専門店〞が続々登場し、にわかに注目を集めている。そんななか、5年にわたる構想を形にして2020年7月オープンしたのが、【焼きそばとハイボール パック】だ。
おすすめは鉄板前のカウンター席
店主は、【フライドチキンとハイボール リンク】や【ツナグ】など鶏料理をメインにした飲食店を展開する北川浩次さん。5年前から「いつかは焼きそば店」をという想いがあったそうだ。【リンク】として出店したイベントで焼きそばを出したところ好評を博し、自信につながった。
(左)店主の北川浩次さん。(右)8種の焼きそばは、すべて北川さんのオリジナル。専門店にするならと、一番力を入れたのが、生麺だ。滋賀県の製麺所に何度も足を運び、焼きそばに合う中太麺と極細麺をつくりあげた。
「B級とは言わせない焼きそばをつくりたかった。ソース焼きそばだけでなく、自分らしいアレンジを加えて多種類のメニューを考案すれば、専門店として成立するのではと思いました」と開業のきっかけを話す。
『山椒かおる塩昆布焼きそば』900円には、京都「五辻」の昆布を使用。【リンク】の『ミックス唐揚げ』700円
【焼きそばとハイボール PACK】を出す理由
「もっちり生めんが味の秘訣」屋台のソース焼きそばは、老若男女に人気の味。だが、専門店なら、ワンランク上の焼きそばにする必要があった。焼きそばに合う生麺の完成が、開業の条件だった。試行錯誤の末にできあがった麺は、もっちりして風味も抜群。他にはない上質な味を目指すという。
【焼きそばとハイボール パック】
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電話:075-321-8170
住所:京都市右京区西院西三蔵町24-2
店舗詳細はこちら >
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